ダーク・ファンタジー小説
- Re: 私が聞いたようで見ていない、ちょっぴり怖い話(怪談集) ( No.37 )
- 日時: 2013/04/13 18:47
- 名前: あるま ◆p4Tyoe2BOE (ID: Ba9T.ag9)
第7話「ヤンデレな彼女」
つい三日ほど前、見知らぬ女性に、いきなり告白された。
「急な告白で、変に思われるかもしれないですけど、
あなたがずっと好きでした!」
そのひとは毎朝、俺と同じ時間の同じ電車に乗っていたらしい。
通勤途中に俺の顔を覚えて、好きになったのかもしれない。
俺はちょうど彼女が欲しいと思っていた。
毎日つまらないと思っていた。
だから、その告白を受け入れることにした。
というわけで、彼女が今日、俺のアパートへ来ることになった。
「近くにコンビニがあるんだけどさ、そこから先は分かりづらいから、コンビニで待っててくれよ。迎えに行くから」
と俺は電話ごしに言った。
しかしそれは余計な心配だった。
彼女はもう家の前まで来ていた。
彼女は持参したエプロンをかけ、台所へ向かう。
俺のために夕飯を作ってくれるのだった。
「なにか飲む? 冷蔵庫のビール、きらしてるわね。
わたしコンビニで買ってきたよ」
「ありがとう。そういや昨晩、最後の一本を飲んだんだった」
俺はOラベルのビールしか飲まないんだけどな。
でも彼女が買ってきてくれたのなら、それを飲もう。
と思ったら、彼女が出してきたのもOラベルのビールだった。
「美味しいね」
彼女の料理は、お世辞なんかじゃなく、本当にうまかった。
ポテトサラダにソースをかけることまで、彼女には俺の好みがよく分かっていた。
食後はソファに座って、ゆっくりコーヒーを飲むことにした。
「俺、コーヒーにブランデー入れるの好きでさ」
「ああ、そうだったわ。ちょっと待っててね」
彼女は立ち上がると台所に行き、頭上に備え付けられた棚の、右から二番目からブランデーを出した。
「今夜は泊まっていっていい?」
「ああ、いいよ。泊まっていきな」
彼女は俺の肩に寄り添い、甘えるように言った。
「うれしい……。わたし、あなたの子供が欲しいわ」
___【解説】___
彼女が主人公のことを知り過ぎている。
家の場所や、味の好み、ブランデーのしまってある場所など。
それから「ビールを切らしてる」という言い方はおかしい。初めて来た家なのに、なぜ前日まで冷蔵庫にビールがあったことを知っていたのか。
彼女は付き合って間もないのに「あなたの子供が欲しい」なんて言ってくるようなひと。
別れ話でも切り出そうものなら、怒り狂って何をしでかすか分からない。
ちなみに、作者はこのあたりから「自分には怪談は向いてないかも」と気づき始めた。
「ホラー」ではない「ライトホラー」のきっかけ。