ダーク・ファンタジー小説
- Re: 私が聞いたようで見ていない、ちょっぴり怖い話(怪談集) ( No.48 )
- 日時: 2013/05/01 16:45
- 名前: あるま ◆p4Tyoe2BOE (ID: Ba9T.ag9)
第10話「スカイツリー」
「39度を超えてるじゃないの。今日の遠足は無理ね、おとなしく寝てなさい」
「イヤだよお母さん! クラスのみんなでスカイツリーへ行くって、わたし今日をずっと楽しみにしてたんだから!」
「ダメダメ。こんな高熱で学校へ行かせるわけにいかないわ。薬を飲んで寝てなさい」
どれだけ残念なことか。
もはや言葉にもならない。
ああ、みんなと行きたかったな……スカイツリー。
おかゆを食べて薬を飲み、わたしは眠ることにした。
「どうしても行きたい。学校行きたい。遠足行きたい。クラスのみんなとスカイツリーに登ってみたいよー!」
熱にうなされ、わたしは、うわごとを繰り返した。
そんな思いが通じたのか、わたしはスカイツリーへ来ていた。
世界でいちばん高い塔から眺めた東京の景色に感動した。
すぐそばでは、ちょうど、仲のいい友達が、記念写真を撮ろうとしていた。
「なになに、写真撮るならわたしも入れてよ」
わたしは思い切りカメラに近づき、この瞬間だけの最高の笑顔で写真におさまった。
土日を挟んで、すっかり元気になったわたしは、月曜になると学校へ行った。
「はいこれ。スカイツリーで買ったんだよ」
友達がキーホルダーをくれた。なんでわざわざ、わたしにプレゼントしてくれるの?
「この前撮った写真、プリントアウトして持ってきたよー」
カメラ好きの友達がそう言うと、みんなが集まってきて、写真を見せっこした。
残念ながらわたしが映っていたのは、たった一枚だけだった。
スカイツリーの展望台で友達と映った写真だ。
でもそのたった一枚の写真で、わたしはいちばん目立って映っていた。
「みんなとここまで来られて、わたし本当にうれしかったんだ。われながら最高の笑顔で映ってる」
わたしが満足気にその写真を見せると、友達みんなの顔が、急に青ざめた。
みんな、気味が悪そうに、おしだまったまま、わたしを見ている。
「どうしたの? どうしてそんな目でわたしを見るの?」
友達の一人が悲鳴をあげた。
___【解説】___
主人公は実際にはスカイツリーに行っていない。
だからお土産として友達がキーホルダーをくれた。
スカイツリーへ行ったのは、幽体離脱した主人公の霊だけ。
主人公は熱にうなされ、意識が飛んでいる間、生霊となってスカイツリーに来ていた。