ダーク・ファンタジー小説
- Re: 私が聞いたようで見ていない、ちょっぴり怖い話(怪談集) ( No.49 )
- 日時: 2013/04/14 17:37
- 名前: あるま ◆p4Tyoe2BOE (ID: Ba9T.ag9)
第11話「帰省」
就職と同時に仕事の都合で遠くへ引っ越してから、親戚ともあまり会わなくなっていた。
それが今度のお盆休みに、親戚の家へ久しぶりに集まることになった。
予定どおりに、その日、俺は昼食をすませると車に乗って親戚の住むX県X市を目指した。
ペーパードライバーだった俺も、最近は仕事の必要で運転を始めていた。
とはいえ、長距離運転は初めてだから、不安だ。
高速道路に乗って、俺はハンドルをにぎりしめながら、青色の案内標識どおりに、左の道を行ったり、右の道を行ったりした。
ところが、案内標識もないのに、二つに分かれた道が見えてきた。
「え? これどっち行けばいいんだ? 分かんねえや。仕方ない!」
とっさの判断で左の道を行くと、古びたトンネルが見えてきた。
「なんでこんなところに?」と思ったが、俺はそのままトンネルを抜けた。
あっという間にトンネルを抜けると、その先は、なんの変わりばえもない、高速道路のつまらない景色。
気づくとX県内に入っていたので、俺は高速を降りた。
親戚の家へ着いた。
俺だけ早く着いてしまったみたいで、時間を持て余した。
親戚の子と一緒に犬の散歩に出かけたり、キャッチボールの相手をしたりした。
おばさんが酒の買い出しへ行くと言うので、それに付き合った。
そうして夕飯の時間にはみんながそろった。
楽しいお盆休みになった。
年が明けて、正月になると、また同じように親戚の家へ集まることになった。
一月一日、約束どおりに俺は昼食を済ませると家を出た。
仕事で毎日のように運転しているから、もう長距離運転も怖くない。
俺は冷静に、青色の案内標識にしたがって、左へ行ったり、右へ行ったりした。
だまって運転していると、空が暗くなってきた。
冬だから、そりゃ昼も短いわけだ。
「あれ? こんなところにサービスエリアが?
前にこんなところ通ったっけかな。ちょうど腹も空いてたし、ちょっと休憩しよう」
サービスエリアには、高速道路地図がある。
俺は二つ目のハンバーガーを食べながら、自分の走ってきた道を確認した。
「よかった。ちゃんと地図のとおりに来てるみたいだ。えっと、もう半分は過ぎてるみたいだな。まだ残り半分もあるのか……」
___【解説】___
お盆の時と同じく、昼食の後で家を出た主人公だが、夕飯の時間になってもまだ高速道路のパーキングエリアに居た。
本来はそれくらいかかるのだ。
お盆の時が早く着き過ぎていただけ。
あの古びたトンネルはなんだったのだろう。