ダーク・ファンタジー小説
- Re: 私が聞いたようで見ていない、ちょっぴり怖い話(怪談集) ( No.65 )
- 日時: 2013/05/06 15:22
- 名前: あるま ◆p4Tyoe2BOE (ID: Ba9T.ag9)
第15話「花子さんの指」
給食を食べ終わった後、ぼくはクラスメイトのHと、校庭のすみっこを探検していた。
背の低い木々をかき分け、進んでいくと、草も何も生えてない、まーるい地面があった。
Hはその地面を指さして、得意げに、ぼくにこう言った。
「ほら、見えるだろ。花子さんの指が土から生えてるよ」
Hはそう言うけれど、ぼくには見えなかった。
そばで確認しようにも、木々が邪魔して、枝がちくちく刺さって痛いし、これ以上は近寄れない。
Hのただひとりの友達であるTも同じ場所で花子さんの指を見たと言い出した。
こうしてぼくのクラスには「花子さんの指」の噂が広まった。
クラスには、「見たことある」って子も居れば、「ない」と言う子も居た。
「お前、見えないのか?」と言われると、どうしても「見えるさ」と言ってやりたくなる。
でも見えないんだから、仕方ない。
ぼくは「見えない」と言うしかなかった。
HとTったら、発売前のゲームソフトを「もう持ってるよ。面白いぜ」なんて言ってくる、すごいヤツらだった。
ぼくはそのゲームをやらせてと言ったけど、発売日が過ぎるまでやらせてくれないし、現物を見せてもくれなかった。
仲間にならないはずのモンスターを、HとTが「俺ら、仲間にしたぜ」と言ってきたこともあった。
ぼくは「見せてよ、お願い!」と頼んだが、「ダメだ」と断わられてしまった。
うちのお兄ちゃんはぼくが仲間外れにされていると思ったらしく、TとHをつかまえては、「弟が頼んでんだろ。見せてやれよ」と、おどしをかけた。
TとHは、「見せたくても、データが消えちゃったんです」と泣きそうな声で言った。
それからしばらく経って、どういうわけか、ぼくにも花子さんの指が見える日が来た。
夏休み中だったけど、ぼくは飼育小屋のウサギの面倒を見るため、学校へ来ていた。
その時は、指どころか、手首くらいまで出ていた。
カラスがぎゃーぎゃー鳴きながら、真っ白な手にむらがっていた。
ぼくは花子さんがかわいそうになり、カラスを追い払って、手には土をかぶせておいた。
ぼくは学校でTとHに会うと、「花子さんの指がぼくにも見えたよ」と言った。
これでやっとぼくも仲間に入れてもらえると思った。
すると二人は、いっせいに笑い出し、ぼくを見てこう言った。
「嘘つけバカ」
クラスのみんなも噂に飽きて、もう誰もその場所には行かなくなった。
___【解説】___
TとHは嘘つきだった。
花子さんの指なんて最初からなかった。
噂はHが初めに言い出し、Tが口裏を合わせた、でっちあげ。
指を「見たことある」と言っているクラスの子も嘘をついている。
見えないより、見えた方がカッコいいと思って嘘をついただけ。
「校庭のどこどこに花子さんの指が見える」っていう噂は、作者の小学校で本当にあったけれど、知ってるひと居ないかな?
気になるところです笑