ダーク・ファンタジー小説
- Re: 私が聞いたようで見ていない、ちょっぴり怖い話(怪談集) ( No.72 )
- 日時: 2013/05/22 17:11
- 名前: あるま ◆p4Tyoe2BOE (ID: Ba9T.ag9)
第17話「サンタが家にやってきた?」
「お姉ちゃん、サンタさんがくるから、今夜は早く寝ようよ!」
「まだ早過ぎるわよ。大丈夫。お父さんより早く寝ればいいんだって」
クリスマスの夜、はしゃぐ妹を前に、姉のわたしはクールに言った。
サンタさんを信じてる年頃って、本当にあったのだ。
昔は自分もこうだったのだろうか。
わたしは知ってるんだ。サンタさんはお父さんだってことも。妹のプレゼントがきれいな包装紙に包まれて、お父さんお母さんの寝室にひっそり置いてあったことも。
わたしは妹のために、いつもより少し早く寝てあげることにした。
お風呂に入って、布団の敷かれた子供部屋へ行く。
「やだ、さむッ! ちょっとあなた、なにやってんの!」
部屋の中を冷たい風が吹き、みぶるいした。
妹が窓を開けて、星空を見つめている。
「窓が開いてないと、サンタさんも入ってこられないでしょ。だから開けて待ってるの」
「寒くて風邪ひくし、窓が開いてたら危ないわよ。ここ一階なんだから。閉めて閉めて!」
「嫌だよ! じゃーせめてカギだけは開けておこ? 窓を壊したらサンタさん器物破損でつかまっちゃうから。3年以下の懲役または30万円以下の罰金だよ?」
わたしは「勝手にすれば!」と言って布団をかぶった。
今日で二学期が終わったという解放感もあって、すぐ眠ってしまった。
どれくらい寝ただろうか。
わたしが目を開けると、真っ暗な部屋の中に、うごめく人影が見えた。
のし、のしと、そのひとが歩く度に床がきしんだ。
サンタさん? いや、お父さん?
わたしは目をぱっちりさせて、その大きなシルエットを見ていた。
すると、お父さんもくるっとこっちを向いた。
わたしはとっさに目を閉じる。
すぐそばで、じーっと見られているのが分かった。
やだお父さん、顔近いってば。
それにしつこい。
わたしはなにも見てないからね。なにも見てないんだから!
寝たふりしなきゃ。
わたしはぎゅっと目を閉じ、肩をこわばらせた。
なんとかやり過ごして、翌朝、目が覚めると、隣に住んでいるおばあちゃんがいた。
「あなたたちは無事だったのね。よかった! ほんとによかった!」
おばあちゃんは泣きながら、わたしと妹を、きつく抱きしめた。
部屋は異常なほど寒かった。
窓が開いて、カーテンが揺れている。
外には警察らしきひとたちが集まっていた。いや、家の中にまでいる。
妹が「お父さんは? お母さんはどこ?」とおばあちゃんに聞いていた。
___【解説】___
朝になると両親は殺されていた。
暗闇の中でお父さんと思って見ていたのは、実は変な人だった。
寝たふりが成功しなかったら、どうなっていただろう。