ダーク・ファンタジー小説

Re: コンステラシオン ( No.2 )
日時: 2023/08/11 22:55
名前: 流郷 泉 (ID: JU/PNwY3)

「ここは?」

ルリア・ハートフィールドがサリヴァン・アーツェルンに導かれたのは
森の奥地。色とりどりの花々が咲く場所に墓石が幾つも並んでいる。

「私の母の墓です。といっても骨すらここには埋められていませんが。
精霊は死ぬとマナに還るんです。そして百年の時を経て、再び
精霊になる」
「サリヴァンの母親は火属性の精霊なんだね」
「はい。ですので、私も火属性の魔術は得意なのです」

肉体的特徴は巨人族の父親に酷似しているらしい。人間と他の種族の
混血は度々見かけるが、それ以外の混血は非常に珍しい。全く人間の
血が流れていない彼が人間が多く住んでいるヴィヒレア王国で騎士
として働いているとは。

「団長が色々手を回してくださったのですよ。国でも異種族を
平等に扱うべく動き出しています。騎士団も過去には入団規則に
色々ルールがあったようですが、現在の団長がその地位に就いてから
見直しがされたんです」
「今の団長は歴代最年少で今の地位を獲得したって言われているよね。
そんな優秀なのか…」

墓石を離れ、二人は森の出口を目指す。だが、小さな精霊が彼女たちの
もとへやって来た。二人が目指す出口で爆発音が聞こえた。森の木々で
羽を休めていた鳥たちが慌てて飛び出した。
森に侵入者、その対処に精霊女王ティターニアは追われている。だが
彼女に直接の戦闘能力は無いらしく、結界で相手を阻むのが精一杯。
ただ一つの出入り口から強行突破しようとしている魔物が迫っている。
敵の姿が見えた直後、サリヴァンは炎を纏わせた三叉槍を振るう。
その魔物と戦っている最中、彼は違和感を覚えた。そんじょそこらに
いる魔獣では無い。

「アマルティア…!」

数は少ないが、特に強力な魔獣はアマルティアと呼ばれる。
研究が進んでおらず、まだまだ情報が足りないがこのように群れを成し
一カ所を襲うなど聞いたことが無かった。背後から援護射撃。
発砲によって煙を出す銃口。銃を構えていたのはルリアだった。
言葉は発することなく、ただ自信あり気な顔を彼に見せる。初対面だが
二人には確かな繋がりが出来ていた。顔を見て、今の状況を理解
していれば彼女が発する言葉は声になっていなくても分かる。

「それでは、申し訳ありませんが援護は任せます」

群れの中に突っ込み、敵を穿つ。赤い炎が勢いを増す。そのマナから
遠方で結界維持に集中していた精霊女王は火属性の精霊の力を
感じ取っていた。同時に自分たちと縁があるような、不思議な人間の
存在に気付いたのだ。彼女は懐かしさを感じていた。

「この時代に、私の力を手にするに相応しい者が…」

精霊女王は年々己の力の衰えを感じていた。精霊の寿命も永遠では
無いのだ。普通の人間よりも長く生きているが、彼女の力が…寿命が
大きく削がれた出来事が過去にあったのだ。
ティターニアは最後を託せる人間のもとへ急ぐ。
精霊とルリア、サリヴァンたちの他に二人が動き出した。片や
精霊女王の力を狙う者、片や異変を解決するべく動いた猛者。
彼らが一カ所に集まったのだ。