ダーク・ファンタジー小説

Re: コンステラシオン ( No.3 )
日時: 2023/08/11 23:56
名前: 流郷 泉 (ID: JU/PNwY3)

猛者とされる者が幾人か存在する。彼らが得意とする術などから
二つ名が付けられ、名前が広がった。精霊の森に雪崩れ込む
アマルティアの数を抑えられていたのは彼の尽力があってこそ。
彼もまた炎を操る力を持っていた。

「これだけ集まるのは珍しいな。やはり人為的な原因があるのか」

群れを一人で片付けた青年は剣を鞘に納める。イヤホン型
通信デバイスからは安全圏から彼をサポートしている人物が彼の
言葉に応えた。

『多分そうよ。アマルティアの群れを一人でどうにかしちゃうなんて
流石エース!化け物だよ~』
「別のものに気が散っていたからな。そうでなければ、俺だって
苦戦しているさ。この先で良いんだな」
『うん』

エースと呼ばれた青年は走り出す。彼らが探しているのは人。
その人物がいるかもしれないと考えた。遠方で自分の炎と負けず劣らず
強い炎が見えた。鋭い彼はその炎は精霊の力に近いと気付く。
火属性の精霊が戦っているのだろうか。
駆け付けた時、奥に一人の少女の姿が見えた。宝石のような美しい
藍色の髪。白磁器のような白い手には銃が握られている。腰には
剣も携えている。髪を見れば目的の人間であることはすぐ分かる。炎を
操っていた男が最後の一体を倒したところだった。

「貴方は」
「エース・アルナイルだ。色々あってお前を探していてね」

エースはサリヴァンの横に立つルリアに目を向けた。

「私を?」
「お前の親が俺の命の恩人でさ。恩を返そうと思っていたんだが
聞けばもう死んだって。お前、多分面倒な奴らに狙われているぜ」

朗らかな笑みを浮かべていたが突然彼は真剣な目を向ける。だがすぐ
表情を綻ばせる。近くにいて感じるのは高い魔力。魔力が多いこと、
それが強さにイコールでは無いが繋がりは強い。

「面倒な奴ら…ヨクト、ですか?」
「知ってるのか。あぁ、騎士団か。なら知っていても可笑しくないか」

かつては秘密結社とされており、存在があやふやだったが18年前に
存在が確認された。大地から去った神の再降臨を目標として動く
犯罪者たち。彼らは各地にいるとされる。国の権力者に取り入り、
影から国を操ったり、時には表立って争いを起こす。

「お前も強い魔力を持っている。それだけでは無いかもしれない。
不自由な思いはさせない。俺が答えられることならば、何でも
答える」

困惑するルリアを見て、エースは申し訳なさそうな顔をする。

「悪い。一度に沢山言っても、追いつかねえよな」
「ううん、気にしないで。エースさん」
「エースで良いよ。アマルティアがこうして群れで動く時は恐らく
もっと不穏な事が起こる。森を離れた方が良い―」

エースが先導しようと一歩踏み出したが、その足元に弾丸が飛んで
来た。ルリアの銃では無い。銃弾は掠らない。一人の女性が姿を
現した。長い桃色の髪を揺らす妖艶な女性。

「これはビックリ。爆炎のエース、いたのね?そちらの騎士は
精霊と巨人の混血。とっても珍しいわ」
「私もビックリですよ。よく、私がその二つの種族の混血だと
分かりましたね」

穏やかな口調だが、全く笑っていない。サリヴァンは両の目を
開いた。見つめられている女は飄々とした笑みを見せる。

「私も色々調べているのよ。貴方のその目は敵意を見抜く。貴方に
どうやら嘘は通用しないみたい。これでも演技が得意だったのだけど。
私はティファレト、よろしくね?御嬢さん」

彼女はルリアに目を向けた。得体の知れない空気を纏うティファレトに
ルリアは悪寒が走る。彼女の操る糸が辺りに張り巡らされた。
恐れるべきは銃だけではない。だがその糸をエースが簡単に断ち切る。

「切れるんだな、この糸。それとも小手調べのつもりか」

エースの剣には紅蓮の炎が燃えていた。
臨戦態勢なのは彼だけではない。ティファレトは自分は戦わない
つもりでいる。その代わり、彼女は厄介なものを連れ込んでいた。

「私の目的の為よ。正義感の強い貴方は見過ごせないでしょう」
「こんなものまで連れて来るのか…!?」

エースは驚愕していた。ルリアの隣に立つサリヴァンも顔をしかめる。

「魔神。そう、魔神なの。命を代償に従える存在」

巨大な魔神を前にエース、サリヴァン、ルリアは戦闘を余儀なく
される。魔神、神に分類される存在だ。彼らは古代より封印されており
復活することは難しい。術式を解除し、他者の命を代償にして
ティファレトは魔神を従えたらしい。