ダーク・ファンタジー小説

Re: コンステラシオン ( No.4 )
日時: 2023/08/12 11:57
名前: 流郷 泉 (ID: JU/PNwY3)

魔神オセ、降臨。
鎧の巨人は森全体を覆い隠しているのではないかと思うほどの
巨大な掌を大地に向けている。

「逃げるって言ったって、どこに!?」

一撃に溜めを必要としている。それだけ大きな攻撃が迫っている。
エースは剣を抜いて、斬撃を放つ。だが敵はビクともしない。
それどころかもう片方の手でエースたちを薙ぎ払おうとしていた。
彼の横に入り、サリヴァンは槍を突く。母親譲りの力。彼の刃は
魔神の手を貫いた。
だがその一撃しか与えられなかった。

「エースさん!」

放たれた攻撃の衝撃波。エースの体が浮き、そして吹き飛ぶ。
ルリアは彼に向けて手を伸ばすも届かない。だがサリヴァンが
手を伸ばし、引き寄せる。

『小さき者よ、消えよ』

オセの言葉。だが運はこちらに向いている。魔神降臨の次は
精霊女王降臨。変わり果てた森の姿に彼女は悲し気な顔をしていた。

「魔神オセ、我らの聖域を破壊したことは許しません」
『精霊女王ティターニア。貴様に何が出来る。私が簡単に破壊できる
程度の結界しか作れぬ老いたお前に、何が出来るというのだ』

力の衰え。彼女がずっと森に隠居し続けて、人を拒絶していたのは
衰えた力の露呈を隠すため。その話は誰も知らなかった。二人の会話は
過去に対峙したことがあるような口調。もっと古い時代。精霊が神と
同類として考えられていた神話の時代。神と魔の神の間に起こった
戦争。もしかしたらその時に二人は対峙していたのかもしれない。
精霊女王ティターニアはその美しい黄金の瞳でルリアを捉える。

「確かに私の力は刻一刻と消滅へ向かっています。でも大丈夫。
私は死にません。もう新たな精霊女王がいる」

別の場所で生きているらしい。

「双子の妹です。そして私は、最後に人に力を託します。この、
“共鳴者”に」

ルリアの事を精霊女王は「共鳴者」と呼んだ。その言葉の意味を
ルリアは分からない。だがオセには理解できたようで、彼は動揺
していた。その言葉が真実だとしても、それを振り払うように
攻撃に動いた。

「勝手に色々決めてごめんなさい。お願い。私の全部、貴方に託す」
「私なんかで、良いんですか?」
「良いの。その代わり、大切に使ってね」

精霊女王の体が光の粒子、マナそのものになり、ルリアの体に。
精霊の加護を受ける者は存在する。水の精霊、ウンディーネの加護や
風の精霊、シルフィードの加護など…。語られる英雄たちと精霊の
繋がりは非常に強い。特に有名な原初の勇者は精霊女王の加護を受けて
そして戦ったのだ。それがティターニアが人間に手を貸した最初の事。
最後は自分の残りの全てを託した。
未来永劫、消えない封印。

「―聖剣結界:アヴァロン!」

魔神を取り囲むように四方に赤、青、緑、黄の剣が地面に突き刺さる。
結界が発動した。それぞれ四属性の大精霊たちの力を持っている。
凄まじい魔力量だが、心の底から安心できる優しい光だ。魔の神を
完全に封印してしまった。これが精霊女王の加護、精霊女王の力。
彼女の力で事なきを得たが、この事件は瞬く間に世界へ広まった。
魔神事件、そう名付けられた。
精霊女王が支配する不可侵の聖域に突如現れた魔神。再封印したのは
精霊女王ティターニアであるが…彼女の消滅とその力の譲渡については
誰も語っていない。
事件を終えて、エースと共にルリアは行動することにした。
別れ際にサリヴァンはルリアに忠告をする。

「国の上層部、権力者たちに動きがあります。一介の騎士である私には
分からない事が多いのですが、どうかお気を付けて。また縁があれば
会いましょう」
「うん。ありがとう、サリヴァン」

さて、序章は終わった。謎と言う謎はまだほとんど出ていない。
しかし共鳴者とは何者だろうか。それは称号なのだろうか。
その謎の答えはまだ出すことは出来ない。