ダーク・ファンタジー小説
- 1日目 村 ( No.3 )
- 日時: 2023/10/22 22:04
- 名前: オコボ ◆TVCSPRoRFE (ID: jo2UR50i)
最悪だ。
穴に落ちた。
足元の注意が疎かになっていた。
月は地平線より登ったばかりで
穴の中まで照らしはしないため。
縦穴の中は非常に暗い。
汚水が溜まって、臭いがきつい。
冷たさで
体力が刻一刻と奪われていく。
直径は1m弱なので
足を踏ん張れば上がれそうだ。
へとへとになりながらも
無事脱出。
暫くその場で座り込む。
なんとなく、このまま
村へ向かうのはためらわれたため
村を中心に回り込んで
様子をうかがうことにしたのだが
小柄な男が
村の方向からこちらへやってくる
ズタボロの身なりで
探るような様子で話しかけてきた
「*********」
まったく
しゃべっている言葉がわからない
一切理解できない。
まったくリアクションを返さない様子に辟易したのか
男はそのまま踵を返して
村へ去っていった。
なんとなく、嫌な予感がして
村の入り口の建物から見えない位置まで垂直に走った
そして、
身を隠しつつ様子をうかがうために穴に飛び込んだのだが
あいにく先客がいたようだ。
暗くてわからないが、
甲高い鳴き声とともに
動物が右腕にかみついてきた
勘だけで、動物をつかむ
どうやら首をつかんだようだ
大きさは腕で抱えられるサイズ
大きさの割に力が強く
引きはがせない
壁に押し付けて
喉と思われる部分を圧迫すると
やがて力を失い、動かなくなった
息を整える。
確認よりも村の様子を観察する。
村に変化はなさそうだ
しかし、私のいた位置に数人の
人影があることに気づいた。
3人の男だろうか
周りの穴を確認しているようだ
明らかに、私を探している
30分ほどうろついた後
村へ引き返していった
息を落ち着かせて考える。
回り込んで村を観察するか
それとも、村から離れるか
私は村から距離をとることにした
移動は夜が明けてからがいいか?
いくら満月が明るくとも
叢の穴を見過ごす危険がある
しかし
闇に紛れられるという利点もある
それに、先ほどから
空腹を感じ始めている
早く行動を
起こしたほうがいいだろう
私はこのまま移動することにした
と、その前に
動物を確認しなくては
穴の上部は、斜面にあって
村から見えずらい場所を選び
動物を月光にかざす1kgはあるか
はたして、動物は蝙蝠であった
巨大な蝙蝠だ。
羽を広げれば2m以上はあるだろう
私は、血まみれの体を
難儀しながら淵まで引き上げると
蝙蝠を抱えながら
身を低くして村から離れた。
しばらく歩き
丘の陰で村が見えなくなると
ふと、疑問が芽生えた
蝙蝠は縦穴にいるのだろうかと。
私は、コウモリをしげしげと
眺めた
別に蝙蝠に造形が深いわけもなく
観察したところで
何もわからなかった
そもそも、蝙蝠自体目にしたことなど一度として無い
区別などつきようも無いのだ
蝙蝠と思い込んでいるだけで
実際は、蝙蝠によく似た別物なのかもしれない。
いや、そもそも。私が倒したのは本当にこのコウモリなのか?
別の存在を殺めたあと、たまたま
穴の底で死んでいたコウモリを
担いできただけなのかもしれない
まぁ、今更確認しに戻るつもりもないのだが…。
私は、コウモリ[仮]を再び
担ぎなおして
歩みを進めるとこにした。
町の北1kmほどで 水場を見つける
泉が湧き出ているようだ。
私は、コウモリを食べるため火おこしを試みることにした。
泉のそばの枯れ枝を拾った
適当な木の板が無いので
木の皮で試してみるが無論失敗。
早々にあきらめて
生で食べてみることにした。
コウモリのモモにかじりつく。
生臭い。
えずきながら咀嚼する。
口直しに、
泉のそばの灌木の葉をつまむ。
ニガイ。
枝先の比較的新しい葉を試す
苦さは少ないものの、量が少なく
また口の中に細かい繊維が残って
不快だ
とりあえず、
泉の水を飲めるだけ飲んで出発。
月がだいぶ高くなってきた。
そろそろ、深夜か
不思議と眠気はそれほど感じない
が。先ほどから
胃に違和感を感じている。
泉の水が原因だろうか、
比較的源泉に近い位置で
飲んだのだが
大した違いはなかったらしい。
便意は感じるが、出そうにない。
村の北西あたりだろうか
だいぶ離れられたと思う
この辺一帯は
さらに凹凸の激しい岩場で
傾き始めた月の影になって
気を付けないと
足を滑らせてしまいそうだ
足裏の痛みに気を取られていると
案の定、足を滑らせてしまう
腰と太腿左の二の腕と腕の外側を
すりむく
落ち着ける場所を見つけて休もう
そう考えて辺りをうかがいながら
岩場を進む。
まったく学習しない男で
またもや、転ぶ
いや、今度はそんな生易しいものではなかった
暗がりにあったと思った足場が
無かったのだ。
視界が180度反転する。