ダーク・ファンタジー小説

帰宅 ( No.5 )
日時: 2023/11/08 21:11
名前: オコボ ◆TVCSPRoRFE (ID: GDWSGe53)

 高校の新聞部の帰りで、締め切りが迫る中、部員がストライキ(さぼりともいう)を起こし記事を適当に代筆だいひつして、いつもより下校が遅れた。
 駅前の駐輪場ちゅうりんじょうに自転車を置いている。
 駅まで往復で45分近くかかる。
 初秋で18時を回ると暗くなり始める。駅に着いたのは既に暗くなり始めた18:30頃であった。
 自宅に向かう道は川のわきを走る車の往来が激しい県道と川を渡った山沿いの暗い道の二通りといったところだ。
 もちろん遠回りすればいくらでも道はあるが、そこまでする意味を見いだせない。
 
 その時、私は気分を変えるためいつもと違う山沿いの暗い道を選んで帰ることにした。
 左手に山、右手に川を見ながら蛇行だこうする路を走る。
 
 進行方向の左側の、街頭の下の自動販売機がある理髪店を通り過ぎると急な左カーブとなっており、カーブミラーが街頭を写していた。
 その向こうは川で、台風シーズンでもあり、大雨の影響でやや増水気味だ。川幅は20〜30mはあるだろうか、最短で土手の幅は50m〜60mだ。
 草刈りをしたのだろう、草のにおいが強く、視界が開けて川がよく見渡せる。
 街頭は無く。対岸の工場の入口から漏れる明かりが目につく。
 その向こうは県道で街頭があるはずだが、工場との間に鬱蒼うっそうとした森があるため見えない。
 
 
 左カーブの内側の家は見上げるほど高い生垣があり、見通しが悪く対向車を意識させる。
 左折すると今度は右カーブだ。右側には平屋の家があり、背の低い街頭がある。
 カーブミラーを通り過ぎて右に曲がると街頭のない長い一本道が続いている。
 右手は果樹園や、民家があるが生垣が薄暗い印象を与えており、その家の物であろう道の反対側の山を背負う杉林の中にある墓石群の表面に自転車のライトが反射し人魂を連想させた。
 今夜は曇っており、かなり暗い。
 
 
 車輪を動力とするライトの音を意識した。
 光源はこれだけだ。
 
 
 やがて右手にごみ山が現れた。杉林の中に不法投棄された粗大ごみが積みあがっている。その向こうに川が見える。
 
 そこを過ぎると200m以上続いた直線も終わり、右カーブの左側にカーブミラーと暖色の街頭が枝葉に隠れてオレンジからグリーンのグラデーションを描いている。
 
 右へ曲がるとすぐに左へ曲がる。右側のガードレールが不自然に歪んでいる。上から何か重いものを押し付けて曲げたかのように変形している。いったいどうやったらこんなひしゃげ方になるのだろうか。
 
 15m位で今度は街頭のない左カーブ、そして右カーブとなるのだが、右カーブの外側。左手側は谷状となっておりその谷は10mほどで左へ折れており、茂みと暗さで何も見えない。
 見えないのであるが、その時何者かの視線を感じたのだ。その茂みの奥から。
 
 
 
 私は好奇心から自転車を止めて、闇の奥をじっと観察した。
 
 
 
 
 
 
 何者だろうか、動物だろうか。しかし、もっとも怖いのは人間ともいう。私は人間が茂みの闇の中からこちらをじっと伺う様を想像して身震いした。
 
 
 
 
 いつまでもこうしていても仕方ないので自転車をこぎ始めたその瞬間であった
 
 
 カサガサカサガサ
 
 茂みから何者かがこちらへ猛然もうぜんと向かってくる
 
 
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