ダーク・ファンタジー小説

Re: ユリカント・セカイ ( No.4 )
日時: 2024/01/20 17:41
名前: しのこもち。 (ID: tE6MXhnX)


 【 第四話 情けと出会い 】


 次の日、私は学校に行った。

 流愛とだけは顔を合わせたくなかったので、今日は流愛が家を出た後に登校した。いつもは流愛より私の方が先に登校するのだが、この日はどうしてもそんなことはできなかった。

 きっと向こうも私なんかと会いたくもないだろうから、朝は極力音一つさえ出さないように部屋を出た。



『お姉ちゃんなんて、いなくなればいいのに』

 私は昨日、流愛がそう何回も呟いているのを見てしまった。

 辛かった。なんで私がこんなに言われないといけないのかって。確かに名前通り堂々と生きられないのは私のせいだ。

 それでも、私の存在だけは否定してほしくなかった。昨晩そのことについてたくさん考えていたが、やっぱり嫌なことを言われるのは本当に悲しいし、私だって人間だ。

 クラスのみんなだって、手紙では謝ってくれたけれど、実際に会ってみればまた嫌な顔をされてしまうかもしれない。

 もし学校に行ったら、またあの日みたいなことや流愛みたいなひどい言葉をみんなに言われるのではないかと、私はすごく怯えていた。

 本当は学校になんて、死んでも行きたくない。
 また明日も学校を休んで、あわよくばこのままずっと家にいようかと、そう思っていたその時。

 私は雪ちゃんからの………大切な人からの手紙を目にした。

『流華ちゃんと部活を一緒にできるのが、すごく嬉しいです』

 クラスの人から何を言われるのか、どんな顔をされるのか、今でもすごく怖い。

 あの日のことを思い出そうとするだけで、すごく苦しくなる。

 それでも私は勇気を出して学校に行くことを決めた。

 雪ちゃんと、大切な友達ともう一度、会って話したい。同じ部活で、一緒に笑っていたい。

 だから私は、どんなに重い足取りでも自分に負けないように学校へ行く。

 どんなに辛くても逃げない。大切な友達のためにも、自分を変えたい。大好きな雪ちゃんが、私にそう思わせてくれたから。

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 重い足を引きずりながら、ようやく教室の前までたどり着く。扉の取っ手を握る手はとてつもなく震えていて、今すぐにでもここから逃げ出したい気分だった。

 怖い。
 でも、今の私ならきっと大丈夫。
 そう自分に何度も言い聞かせて、深呼吸をした後、私は教室に入った。


 -ガラガラッ。

 いつもより遅い時間に来たので、教室にはすでにほとんどのクラスメイトが登校していた。教室にいるみんなの視線が、扉の音に反応して私の方に集まる。

 私はみんなの顔が見えないように、下を向きながら自分の席に着いた。

 みんなの視線がものすごく怖い。背中から冷や汗が伝ってくるのが、すぐに分かった。

「………流華ちゃん、おはよう!」

 かばんを机の横にかけ、両手を膝の上に置いて席に座っていると、隣から声をかけられた。

「雪ちゃん……」

 ゆっくりと声のした方に顔を向けると、今一番会いたかった人の笑顔がそこにあった。

「流華ちゃん、大丈夫だった?」

 周りの視線なんて気にせずに、いつも通りに話しかけてくれる雪ちゃんの優しさに、思わず涙が出てしまいそうになった。

「……うん。心配かけてごめんね」
「全然!流華ちゃんが学校来てくれて、私すごく嬉しいよ」

 いつもとおかしい私の様子を察したのか、雪ちゃんはその場の空気を変えるように明るい声で話し始めた。

「そうそう!そういえばね、部活動今日から始まるみたいだよ」
「そうなんだ…」
「うん!私バスケとかやったことないから緊張するけど、一緒にバスケ頑張ろうねっ!」
「……うんっ…!一緒に頑張ろう」

 雪ちゃんといるだけで、さっきまで一人で怯えていた時間が馬鹿らしく思えるほど心の中にあった不安が一気に吹き飛んだ気がした。

 やっぱり、勇気を出して学校に来てよかった。
 みんなからの視線や声はまだ怖いけど、雪ちゃんがいるから乗り越えられる。友達の存在ってこんなにも重要だったんだなと、私は心の中で改めて実感した。

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 帰りのホームルームが終わり、部活に入部した人たちは早速それぞれの部活動の場所へ向かい始めた。私も支度をした後、雪ちゃんと一緒に体育館へ急ぐ。


 体育館にはすでに多くの人が集まっていて、特に一年生なんかはみんなそわそわしながら友達と話したりきょろきょろと周りの様子をうかがう人もいた。

 先生らしき人はまだ見当たらないから、まだ来ていないのかと私も周りを確認していると………私は今一番会いたくない人の姿を見つけてしまった。

「え、もしかしてあの子もバスケ部なの?」

 ちょうど同じタイミングで雪ちゃんも流愛の姿を発見したのか、嫌そうな目で流愛を指さしながら私に話しかけてきた。

「うん、そうみたいだね…」

 これは神様の仕打ちかなにかだろうか。それとも私が学校に行かず、流愛から顔を合わせようともせずにずっと逃げていたから、ちゃんと向き合いなさいとでも言われているんだろうか。

 私が呆然とその場に立ち尽くしていると、その時ちょうどジャージを着た顧問の先生らしき人が入ってきたので、私たちは慌てて整列した。

「気をつけ、礼」
「「「「お願いします」」」」

 部長らしき人が声をかけた後、周りの人が礼をしたので、慌てて私もそれに合わせて挨拶した。

「新入部員のみなさん、はじめまして。女バスの顧問をさせてもらってます、三年生保健体育科担当の森下です。これからよろしくお願いします」

 見た目からして、恐らく三十代くらいだろうか。ショートカットの髪型で声もはきはきとしているため、いかにも体育教師という感じの元気そうな女の先生だった。

「早速メニューに入りたいとこだけど…せっかく一年生も入ったばっかだし、最初は軽く自己紹介でもしようか」

 そう言って先生は私たちに座るよううながした。

 すごく、嫌な予感がする。
 例え部活であれど大人数の前で話すことには変わりないので、私が自己紹介なんてしたらどうなるか大体は想像がつくし、なによりそんな醜態を流愛に見られたら……私がここにいることがばれてしまう。

 サァッ、と全身の血の気がひいていくのが分かる。どうしよう、とそれしか私の頭にはなかった。

「じゃあ順番に自己紹介してー」

 先生がそう言うと、さきほど一番前で挨拶をしていた部長らしき人から次々に自己紹介をし始めた。

「女バスの部長をやらせていただいています、三年の篠崎しのざき 成海なるみです。一年間よろしくお願いします」

 部長さんが話し終えると同時にパチパチパチ、とその場にいたみんなの拍手が体育館に響いた。

 そうだ。体育館はこんなにも広いのだから、当然声も響いてしまう。流愛に気付かれるのも確実だ。

 私の頭の中はそんなことばかりで、気付いたらすでに私の番が来ていた。

 私は恐る恐るゆっくりと立ち上がると、少し俯きながらもなんとか言葉を発した。

「……い、一年の橘 流華、です。こ、これから…よろしくお願い、します……っ…」

 自己紹介を終えると、拍手が鳴る前に私はいち早くその場に座った。幸い下を向いていたこともあってか流愛と目があったりはしなかったが、それでも流愛が私の方を見ていたのはすぐに分かった。

 ちらっと横目で流愛の方を確認すると、そこには射るような冷たい視線があって、私は思わずゾッとした。

 私の自己紹介が終わった後もその間は流愛がずっとこちらを見ていたので、私は体育座りをしている体を抱きしめるようにしてこの時間が終わるのをひたすら待った。

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「流華ちゃん見て、できた!」

 地獄のようなさきほどの時間がようやく終わり、ついに練習が始まった。

 まずは手始めにボールを使った簡単なアップからしようという先生の指示を聞いて、私たちは早速それに取り掛かった、はずなのだが。

「雪ちゃん、なんでそんなに上手なの!?もしかして昔バスケやってた…?」

 雪ちゃんが嬉しそうにボールをいとも簡単に扱っているのを見て、私は目を丸くした。

「やってないよ!超ド初心者」
 そう否定する雪ちゃんの言葉とは反対に、ボールを動かす手はまるで私と同じ初心者の動きには見えない。

 一方で運動が大の苦手な私は、ボールを扱う以前に自分の手よりも大きいボールを片手で持つことすらできない。

「雪ちゃん、これどうやってやるの…」

 今私たちがやっている練習は、エイトという足を広げてその間を手で八の字を描くようにしてボールをドリブルするものだ。

 けれどこれが私にとってはかなり難しく、ようやくボールを足の間でドリブルできたと思っても、そのままボールが後ろに転がっていってしまう。

「えっとね、どうしてもキャッチしたいからってなるべく後ろにボールをドリブルしようとしてもあんまりボールが跳ねずに転がっていっちゃうだけだから、自分の真下にドリブルする感じでやるとやりやすいよ」

 ペラペラとまるで先生のように話す雪ちゃんのアドバイスを意識しようとしても、中々体が覚えてくれず、後ろに転がっていくボールを私は何度も走って拾いにいくのを繰り返すだけだった。

 よく考えてみたら、運動が苦手なくせになんでバスケ部なんて入ったんだろう。いっそのこと部活になんて入らなければよかったのかもしれない。

 そんなことを考えながら、またキャッチし損ねたボールをとぼとぼと歩いて追いかけていると、転がっていたボールが誰かの足に当たってしまった。

「あっ、ごめんなさ────────」

 急いでその人のもとへ駆け寄り、ボールを拾いながら謝ろうと顔を上げると、私は思わず言葉が出なくなってしまった。

 ────なんと、そこにいたのは流愛だったからだ。


 -バチッ。

 流愛が振り返り、私たちは数秒間目が合った。

 最悪だ。せめて部活では一切流愛と関わろうとしたくなかったのに、やっぱりこれは神様の仕打ちなんだろうか。

「………何。邪魔なんだけど」
「ご、ごめん……」

 冷たい目で流愛に睨まれたので、私はすぐにボールを拾ってその場から離れようとした。

 するとさっきまで怖い顔をしていた流愛が、急に馬鹿にしたように笑い始めた。

「てかお姉ちゃん、こんな所までボール転がってくるなんてどんだけ下手くそなの?運動もできないのかよ、可哀想に」
「……」

 キャハハ、と笑いながらからかってくる流愛を振り返らずに無視して、私は元の場所へ戻った。

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 その後の練習も基礎的なものばかりが続き、私もようやくボールに慣れてきたのか、ドリブルやシュートの練習も自分が思った通りに上手くプレーできるようになっていた。

「え、流華ちゃん七回連続でシュート入ったの!?もう絶対才能開花したじゃん!!!」
「橘さん、実は運動もできるんだ!すごいね」

 周りの人からも褒められるようになって、私は少し恥ずかしい気持ちになっていた。

 でもその分嬉しい気持ちももちろんあって、人から称賛されるのってこんなにも素敵なことだったんだなということを改めて実感していた。



 本当は心の内で流愛にからかわれたことがすごく悔しかった。けれど同時に流愛のおかげで私は自分の弱さに甘えていたことに気が付いた。

 運動が苦手なのに部活なんてやらなければよかったとか逃げたいと思うばかりで、やっぱり私は自分を変えようとしていなかったんだなと。



 だから私はこの数日間、熱心に部活に取り組んだ。
 すごく辛い練習もたくさんあったけれど、それでも私は逃げずに自分なりに頑張った。私が何かをできるようになる度に色々な人からも褒めてもらえて嬉しかったし、同じ部活の先輩とも仲良くなることができた。

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 そんなある日、珍しく先生が練習中に収集をかけたので、私たちは不思議に思いながらも先生のところへ集まった。

「えー、突然なんですがこれから再来週に行われる春季大会の試合メンバーを発表したいと思います。今回の大会は夏で引退する三年生にとっては最後の公式試合なんですが……三年生の人数が今八人しかいなくて」

 すると先生がとんでもないことを言い始めた。

「二年生には悪いんだけど……あとの二人は、一年生から出すことにしました」

 先生がそう言った瞬間、その場がざわめき始めた。

「では今からメンバーを発表します」

 ゴクリ。
 全員がそう息を飲んだのが分かる。

「三年 篠崎、高塚、深月みつき、折原、山下、堂上どうじょう白河しらかわ、大久保」

 今のところ、三年生の名前は全員呼ばれた。
 あとは一年生の名前だけ─────。

「一年 白石、そして……橘 流華」
「………え?」

 私は思わず声を出してしまった。聞き間違いだろうか。今、なんて言った…?

「以上の十名です。大会出場メンバーは特に気を抜かずに、他の人たちも彼女たちを精一杯サポートしてください。じゃあ、練習再開!」

 パチン、と先生が手を叩くと、みんなは魔法が解かれたかのように一斉に動き出した。

「流華ちゃん、すごいよ!私たち先輩たちと一緒に大会出れるんだよ?すごくない!?」

 雪ちゃんは隣で呆然と立ち尽くしている私なんて構わずに、一人で飛び上がって喜んでいる。

「え、これ夢、だよね………?」
「もうっ、なに寝ぼけたこと言ってるの。ちゃんと現実だよ」

 一向に信じきれない私の頬を、雪ちゃんは思い切りつねった。

「ちょっと雪ちゃん、痛いよっ」
「ほら、夢じゃないでしょ?」

 そう意地悪く微笑んだ後、雪ちゃんは練習の方に走っていった。置いてきぼりにされた私はしばらくその場で固まっていると、森下先生がそんな私に気付いたのか私に話しかけてきた。

「橘さん。今はまだ大会に出ることが信じられないかもしれないけど、ここ最近ずっと頑張ってきたでしょ?私も橘さんの思いを信じたいから。頑張ってね!」
 ガッツポーズをしながらそう言い残すと、先生も練習の方へ戻って行った。

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「ただいま─────」
「ねぇ、なんでお姉ちゃんみたいなやつが大会なんて出れるわけ?こんな運動もろくにできないようなやつが……!」

 練習を終えて家に帰るなり、先に帰っていた流愛が唐突にそう怒鳴り散らかした。

「お姉ちゃんなんかが大会行けて、なんで流愛は選ばれないの!?ほんと先生も頭おかしい!!」

 玄関で大暴れしている流愛を私はなぐさめようともせず、そのまま自分の部屋へ向かった。


「はぁ……」
 ほんと、私が聞きたいよ。なんで二年生の先輩じゃなくて私を選んだのか。もちろん雪ちゃんは元々バスケが上手だったし納得できるけれど、こんなド素人の私を大会に出すなんて、確かに先生もどうかしてる。

 …………でも、落ち込んでては駄目だ。
 それに、私には雪ちゃんという心強い味方がいるではないか。
 そう勇気を出したのも束の間、疲れていた私はいつの間にかそのまま眠ってしまっていた。

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 そして大会当日。

 緊張しすぎた私は夜に一睡もできず、結局大会当日を迎えてしまった。

 そわそわしながら集合の駅に着き、雪ちゃんと話しながら歩いていると、あっという間に大会会場に着いてしまった。

 大きな体育館の中にはもうすでにほとんどの人が集まっていて、今更ながらに緊張がどっと増してきた。

「みんな身長高い……」
 恐らくほとんどの学校は三年生の引退が近いこともあって上級生しかいない。私たち一年生みたいな人は全然見当たらなかった。

 体育館の外でみんなでアップをして開会式を終えた後、先生が集合をかけた。

「今日は三年生の今までの努力がかかっている大事な試合。いいか?全力でぶつけてこい!」
「はい!」

 返事をすると先輩たちは隣の人の肩を組んで、円陣を作り始めた。戸惑いながら私たちもその円の中に入る。

「いい?今日は私たちが主役。今まで頑張ってきたあの日々が詰まってるの。だから……」
  篠崎部長が大きく息を吸った瞬間。

「絶対勝つぞー!」
「しゃぁぁあ!!!」

 余りの勢いに会場の空気が全て私たちの声で支配されたような錯覚でさえ覚えてしまうほど、私はその迫力に圧倒された。

 同時に、まるでその声は私の不安なんて全部吹き飛ばしてくれたように感じた。

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 私たちの学校は一回戦目から早速試合を控えている。私と雪ちゃんは最初はベンチなので、先輩の試合を一緒に見て盛り上がっていた。

「うわぁ、見て流華ちゃん。先輩たちかっこよすぎ!」
「う、うん……」

 なぜか少し体調が悪くなってきた。昨日寝れなかったことが原因だろうか。雪ちゃんの声も、心なしか少し遠く聞こえる。

「………ごめん、雪ちゃん。私ちょっとお手洗い行ってくるね」

 雪ちゃんにそれだけ伝えると、私はよろけながら体育館をあとにした。

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 トイレを済ませた後、まだ体調は回復していないのか、歩いているだけでもしんどくなってきた。
 そりゃあそうだ。昨日一睡もできていなかったのだから。

 おぼつかない足取りでよろけながら歩いていると、急に足元がふらついた。そのまま前に体重がのしかかり、気付いたら私は前に倒れていた。

 なぜかスローモーションのようにゆっくりと体が傾いていくのが分かり、私は思わず目を瞑って地面にぶつかる衝撃に耐えようとした。

「……………あれ?」
 しかし待ち構えていた痛みはいつになっても走ってこず、私は恐る恐る目を開けた。

「大丈夫ですか」
 すると目の前にはびっくりするくらい綺麗な顔立ちをした男の子がいて、思わずそのまま固まったままその人をガン見してしまった。

「………あ、えっ、と……大丈夫、です」
 見るとどうやら、その男の子が倒れそうになった私をぎりぎりで支えてくれたらしい。

「あのっ……ありが、とうございました」
 私がそう言い切る前に、その人は何も言わずそそくさとその場を去っていってしまった。

 綺麗な人だったなぁ…。
 ジャージに付いたほこりを払いながら、私は彼のことばかりを考えていた。






 ────この時の私は気付いてもみなかった。

 まさかこの瞬間に、彼のことが好きになっていただなんて。









 ※バスケのことは全然詳しくないので軽く調べた程度で書いています。色々異なる点があっても気にせず読んでくれるとありがたいです(泣)