ダーク・ファンタジー小説

Re: ユリカント・セカイ ( No.5 )
日時: 2024/02/10 08:27
名前: みぃみぃ。 (ID: t7GemDmG)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

【第五話 初恋】
「流華ちゃん!?大丈夫!?」
「雪、ちゃ…ん…」
「流華ちゃんっ…!心配したんだよ!?全然帰ってこないんだから…」
「ごめん、雪ちゃん…」
…さっきの、人…カッコよかった、な…
イケメン、だった。
私のタイプだったし…
バスケ見に来てるってことは、バスケに興味があるとか?
もしかしたら、好きな人が出てるとか…?
いやいや、そんなわけないか…
「流華ちゃん…やっぱりおかしいよ!?ずっと上の空だし…」
「えっ…」
私は気付いたら、体育館に戻っていた。
いつの間に…?
「流華ちゃん…やっぱり寝不足!?」
私は頷くしかなかった。
「ほらっ…。次の試合まであと30分あるから、仮眠とりな」
「う、ん…分かっ、た…」
そう言い切る前に、私は椅子に倒れ込んでいた。
「流華ちゃん、もう…。全く…」
そう雪ちゃんが言っていたのがうっすら聞こえた。


「流華ちゃん、良い加減起きないと!!」
「うっ…」
さっきよりはずいぶん体調もよくなった。
「流華ちゃん、さっきより顔色よくなったね、よかった!」
「白石さん、橘さん、もうすぐ試合です、準備してください!」
篠崎部長が言った。
「「はいっ!」」
「雪ちゃん…頑張ろうね!!」
「うん…!」
絶対、勝ってやる。
流愛を、見返してやる…!



「パス!」
「はいっ!」
いよいよもうすぐ試合。
今は最終練習中だ。
「大久保さん、パス!」
「はい!」
「流華ちゃん、シュートお願い!!」
「OK!」
私はシュートを入れる。
「OK!じゃあいよいよ試合だよ!集合!」
「「「はいっ!!」」」
みんなが円陣を作り出したから、私もその中に入った。
「絶対勝つぞー!!」
「しゃぁぁあ!!」
「じゃあ、次のベンチは高塚と白河。他の人は体育館の待機室に!」
「「「はい!」」」


私と雪ちゃんは、体育館の待機室で準備をしていた。
待機室とか、あったんだ…。
「流華、ちゃん…」
「…雪、ちゃん!?」
雪ちゃんの顔色が悪い。
「私、無理、もうっ…無理っ…!!」
「…え!?」
「私が、失敗して、チームが負けたら?もし、もし、そうなったら…っ…」
「…雪ちゃんなら、絶対大丈夫。」
「無理、絶対、無理っ…」
「絶対絶対、大丈夫。信じてやろうよ」
「やだ、もう、無理…。私、篠崎部長にお願いしてくる…」
「雪ちゃん…!?」
すると、雪ちゃんは早々とどこかに行ってしまった。
雪ちゃん、私を…置いてくの…?
そんなことを思ってしまったが、ブンブンと首を横に振る。
そんなわけない。
雪ちゃんには、雪ちゃんなりの考えがある…はず。
でもでも、雪ちゃんがいないとか…私、無理…
流愛にまたバカにされるかもしれない…
そんなことを考えていたら、森下先生が私のところにやってきた。
「橘さん、ちょっと残念なお知らせ。白石さんは…ね、ベンチになった。」
予想通りの言葉だった。
悔しかったけど。
「でもね、白石さんの代わりに高塚が入ることになって…。高塚には、橘さんの役に立て、って言っておいたから…。あとね、高塚は与那野東中の中では篠崎部長の次に強いから、頼りな。頑張れよ、橘さん!」
「…はいっ!」
これは予想外の言葉だった。
でも…。
高塚先輩、よろしくお願いします!
そう心の中で呟いた。
良かった。
そう心の底から思った。


「与那野東中、女バスケ部入場!」
私達は体育館に入っているところだ。
手汗が吹き出している。
緊張しまくっている。
「流華ちゃーん!!がんばれー!!」
そんな声をかけられたからびっくりしてみてみると…雪ちゃんだった。
「うん!雪ちゃんの分までがんばるね!」
そう答えた。
篠崎部長に「静かに」と注意されてしまったけど。

「与那野中、女バスケ部入場!」
与那野中ってことは、近くの学校か…。
今からは、準決勝だ。
絶対、勝つぞっ!
ふと観客席を見た。
お母さん、来てるかな…?
その時、私の頬がぽっと赤くなった。
あの、さっきの、人だ…。
さっきのイケメンの人が、観客席にいる。
なぜかどんどん顔が赤くなるのを感じる。
「橘さん…緊張してるでしょ?表情が緊張してるもん。でも、精一杯頑張ろうね!」
篠崎部長が言う。
「はいっ!」
それどころじゃない。
うわああああああああああんっ!!
「橘。いざというときは私を頼れよ」
高塚先輩が言ってくれる。
「はいっ!」
だ、だめだめ。
今から準決勝なんだから…!
「今から公式戦の準決勝を始めます。礼っ!」
「お願いしますっ!!」
「じゃあ、コイントスから…。各先生方、メンバー決めをお願いします。」
「はい!」

「じゃあ…コイントスは、3年から出そうかしら。篠崎、高塚、深月、折原、山下、堂上。準備を!」
「「「はい!!」」」
「…ったく、意味分かんない」
突然、大久保先輩が呟いた。
「なんで折原がコイントスに出れるのに私は出れないんだよ…」
「白河が出れないのは分かるけどさ、ベンチだし。…なんであんなに弱い折原が出れて私が出れないんだよ!?」
私は呆然としていた。
いつもは熱心な大久保先輩がそんなこと言うなんて…。
もしかしたら熱心な分そうなっちゃったのかな?
「…大久保。」
「なんですか、森下」
怒りのあまりにか、森下先生のことを呼び捨てで呼んでいる。
「大久保を出さなかったのは、大久保に期待してるからだよ」
「は?」
「大久保に、体力温存しておいて活躍して欲しかったんだよ」
「…ッ!折原とかのせいで先攻取れなかったらどうするんですか…!」
「それでも大久保たちに勝ってほしいんだ。橘さんもいるんだよ。だから…自信を持て!」
「…分かりました」
大久保先輩は、あまり納得していないようだった。
でも、私は大久保先輩を信じてる。
アドバイスをくれたのも、教えてくれたのも、先輩達の中では大久保先輩が一番多かった。
大久保先輩は、強い。
それは確かだ。
でも少し、こんな大久保先輩を見て動揺している。
すると、大久保先輩が口を開いた。
「私…昨日一睡もできてなくて…」
まさかの私と同じ状況だ。
「おかしいのかもしれない。」
大久保先輩には悪いけど、私もそう思う。
そうやって私、大久保先輩、森下先生と話していると、コイントスが終わり、与那野東中は先攻になった。
今は篠崎部長がボールを持っている。
「絶対勝つ、絶対勝つ、絶対勝つ、絶対勝つ、絶対勝つ」
大久保先輩は少し壊れたかの様に呟いている。
「用意…スタートッ!!」
始まった。
先輩達がボールを繋いでいる。
いいかんじ…
すると、相手チームにボールが取られた。
私達は一斉に奪いに行く。
高塚先輩が指を軽く鳴らした。
これは私にシュートしてもらうから来い、という意味。
私は全力疾走してもらいに行く。
「橘、ゴールお願いな!」
「はいっ!」
私はボールをもらった。
よし、私の出番!!
ゴールの近くまで行き、シュート。
えっと…3点シュート。
「橘、ナイス!」
「橘さんナイスー!!いいよー!!その調子!」
「流華ちゃーん!!頑張れー!」
与那野東中の作戦は、ゴールするのは基本私。あと篠崎部長、高塚先輩。他の人は私、篠崎部長、高塚先輩にボールを繋いだり、相手チームからボールを奪う係。
そんなふうにしているのだ。
「ふっwそんなんで褒めてもらえるなんて、甘っw」
私が今一番聞きたくない声が聞こえた。
そう…。流愛だ。
来てたんだ。
なんで来たんだろう?と思いながらも試合に集中する。
はあ、流愛に会うなんて…
運が悪いな…
「橘、ぼーっとすんな!」
「あ、はいっ!」
鼻で笑ったような声が聞こえたのは無視をし、どんどん与那野東中は得点を入れていく。
ただ、残り2分現在、相手チームに3点の差がついていた。
「与那野東中!やばいぞ!気合い入れていけ!」
森下先生が言った途端、指が軽く鳴った。
私の出番!
私はボールをもらうとシュートに入れる。
結構遠かったから5点。
その時。
「終了ー!」
「うっしゃぁぁあ!!」
与那野東中は、勝ったんだ。
「橘ナイス!橘がいなかったら勝てなかった!ありがとう!」
先輩達に次々とそう言われる。
私はそれが嬉しかった。
「くっそ!!」
ん?と思って観客席を見ると、くそ、と言っていたのは、イケメンなあの人だった。
もしかして与那野中の人だったのかな?
少しだけ申し訳なさを感じながら待機室に戻った。


「…さっきのプレーは素晴らしかった。ただ、次は恐らく春野中との戦い。決勝だ。このままじゃいけない。春野中は強いんだ。だから…頑張れ!!」
「「「はいっ!!!」」」
待機室に行くと、こう森下先生から話があった。
「じゃあ、次のベンチは…折原、山下。」
「「分かりました」」
二人とも少し不機嫌そうだった。
「じゃあ…白石さん。」
「は、はいっ…?」
「次は橘さんの役に立つんだよ。」
「わ、分かりました!!」


いつのまにか決勝の舞台に立っていた。
相手は森下先生の推測通り、春野中。
先攻後攻も決め、惜しくも後攻になってしまった。
実に不利。
それでも与那野東中は頑張ったと思う。
残り5分の時には15点負けていた。
もう確実に無理。
誰もが感じていた。
でもどうしても勝ちたい!!
篠崎部長、高塚先輩がシュートを入れた。
そして7点差まで縮まった。
でも…
「終了ー!!」
そう。
与那野東中は、負けてしまった。
「与那野東中。負けたのはしょうがないんだ。これを生かしていけ!」
「「「はい!」」」
でも先輩達はとてつもなく悔しがっていた。
それが私のせいな気がして、苦しかった。
雪ちゃんはというと、過呼吸状態だった。
それがどうしても気になってしまうのだった。
そしてこの試合は、あっという間だったけど忘れられない試合だった。



「今回の公式戦では負けてしまいましたが、準優勝です。これは本当にすごいことなんです。流愛さん。あなたは流華さんをからかっていた…それは私は絶対に許しませんから。流華さんはしっかり活躍してくれたのですから…」
公式戦の後の部活で、森下先生はこう言った。
流愛は不機嫌そうだった。
「そして、またいきなりで申し訳ないんだけど…。来週から夏休みですが、その来週の水曜日から金曜日まで、合宿があります。参加は任意ですが、夏で引退する3年生にとっては最後の合宿ですので…。申込書を渡しておきます。詳しいことは申込書を見てください。」
そう言って、私達全員に申込書を渡した。
水曜日から金曜日なら、何もない。
行きたい!
「じゃあ、練習再開!」
「「「はい!」」」
「流華ちゃん!合宿、行くよね!?」
ワクワクしているのが丸わかりな雪ちゃんが聞いてきた。
「うん、もちろん!…流愛が、行かなければ…」
最後はすごく小さな声になっていた。
「あー、やっぱりか…」
雪ちゃんががっかりした様に言った。
ちょっと、申し訳なかった。



家に帰ると、珍しく流愛がいなかった。
早速お母さんに合宿の申込書を見せた。
「あら、合宿?行きたいなら行っていいわよ。」
「じゃ、じゃあ、行きたい!」
「そう、分かったわ。じゃあ申し込んでおくわね。」
「う、うん」
流愛が行くって言ったらやめようかな…と思いながらも私は自分の部屋に入って宿題を始めた。
「ねー、合宿があるらしいけどさー、流華行くの?」
流愛が帰ってきて、お母さんに合宿の話をしていた。
「ええ、行くわよ」
「うげー。じゃあ行かない!」
本当ならここで嫌になるべきなのかもしれないけど、少しホッとした。


「えーっと、折原と山下と橘 流愛と唯野ゆいのは合宿欠席。他はいるかー?」
合宿当日。
森下先生はそう言って出席をとっていた。
折原先輩と山下先輩は、公式戦の決勝でベンチだったのがショックだったのか、合宿の案内があってからずっと部活に来ていない。
ちょっと心配だった。
「じゃあ、出発する。バスで誰の横に乗るかすぐに決めて、バスに乗ってください」
「「「はい!」」」
「流華ちゃん、私と乗ろー!」
「うん、もちろん!」
バスに乗ってからは、雪ちゃんとトランプをしたりみんなで人狼をしたりカラオケ大会をしたりして過ごした。
とても楽しい時間だった。


「はい、着きました。荷物を持って、バスから降りてください」
森下先生はそう言うと、みんなが一斉に降り出した。
私と雪ちゃんも降り、体育館に行った。
「広い…」
いつの間にかそう言っていた。
「なにこれ広い!すごい!!」
雪ちゃんは大はしゃぎしている。
「じゃあ各自部屋に行ってください。」
私は雪ちゃんと遥さんと瑠美さんと同じ部屋だ。
「ここじゃない?」
私達はその部屋に入った。
「ごめん、ちょっとお手洗い行ってくるね」
なぜか最近、調子が悪いのだ。
フラフラした足取りでお手洗いに向かう。
すると急に頭痛がくる。
「うっ…」
私は思わず倒れてしまった。
痛みを我慢しようとした。
でも、いつまで経っても痛みが走らない。
もしかしてこの前の…?
いやいや、そんな偶然…
「大丈夫ですか」
聞き覚えのある声。
「え…」
あの人だった。
「あの、あの時の…」
「僕は小鳥遊たかなし 留姫亜るきあと言います。与那野中です。」
「あわわ、私は、橘 流華、です…与那野東中、です」
やっぱりカッコいい。
「…好き、かもしれない」
私の口からいつの間にかそんな声が出ていた。
「…ごめんなさい。僕には好きな人がいるので…」
そう言って、さっとその場を去っていった。
私はちょっと悲しかった。
初告白がこんなんで。
初フラれがこんなにあっさりだったから…

※私もしのこもち。さんと同じくバスケ無知で軽く調べた程度で書いてます。おかしいところがあってもスルーしてもらえるとありがたいです泣