ダーク・ファンタジー小説

何でも屋 ( No.1 )
日時: 2023/12/30 15:06
名前: monmon (ID: Jolbfk2/)

老鶯ろうおう町のとある事務所では、若い男は何でも屋を営んでいた。その男は、この世界では生きにくい無能力者だったが、2年前に開業して、今に至る。
男「…暇だな……」
一人で何でも屋を営んでいる彼にとって、一人だけの事務所は寂しさを覚えた。
この日は事務所をやっているというのに、依頼主が来ない。だから暇でやることがなく、ぼーっとして過ごしているのである。

そんな無駄な時間を過ごしていると、ピーンポーンっという電子音がなった。依頼主がやってきたのである。

男「はい、入っていいですよー」

そういうと、長髪の女性が入ってきた。表情は心なしか、怯えているようにも見える。

男「このソファーに座ってください。」
長髪の女性「…はい…」

元気がなさそうにその女性は返事をし、ソファーに座った。男は元気がないことに疑問を覚えつつ、いつも通りに対応をする。

男「どんな依頼ですか?何でもやりますよ」
長髪の女性「はい…実は私の友人は、2か月前からある宗教に入信していまして…」
男「宗教??」
長髪の女性「はい…友人は、『世界の光教』という宗教にはまっていて、やめようと言っても、聞かなくて…」
男「…なるほど、どうしてそのいかにもやばそうな宗教に入ったか、分かりますか?」
長髪の女性「詳しくは分かりませんが、その友人は『近藤恵子』って言いますが、3か月前にその当時の彼氏さんが亡くなっていて、それで入ったと思います」

男はなんとなく察した。近藤恵子は彼氏を失った悲しみを埋めるために宗教に入ったという事だろうと思った。

男「…それで、本題の依頼は…」
長髪の女性「…そうですね」

長髪の女性は一泊を置いて、こういった。

長髪の女性「恵子をやめさせるのを協力してくれませんか!?世界の光教って、調べてみたらとんでもない宗教ってわかりました。あんな宗教にはまっている恵子を救ってほしいんです!どうかお願いします!!」

長髪の女性は、頭を深く下げて言った。数秒おいて、男はこう言った。

男「…分かりました。その依頼を受けましょう」

長髪の女性は嬉しいのか笑顔になったが、「ただし、」と、男は付け加えた。

男「このような依頼は正直初めてです。失敗するかもしれない、ということは覚えていてください」
長髪の女性「大丈夫です。手伝ってくれるだけでもありがたいです。本当にありがとうございますそれで…」
男「…?…」
長髪の女性「貴方の名前はなんでしょうか?」

彼女は質問したので、男はこう答える。

男「俺の名前は、神谷悠です」

こうして、神谷は依頼を受け、達成をするために動き始めた。

近藤恵子の真実 ( No.2 )
日時: 2023/12/30 17:15
名前: monmon (ID: Jolbfk2/)

長髪の女性が事務所から退出して、神谷は世界の光教について調べ始めた。二日かけて施設の近くの近隣住民に聞き込みをしたところ、分かったことがある。

神谷「…そこまで規模はでかくない感じか?テレビでもやっていたが、少し前から問題がある組織なのは分かっていたが、ここまでとは…」

神谷が聞き込みで分かったことは、”その行動 ”についてである。場所は問題ないが、信者の行動がおかしかった。夜な夜な”施設に集まる ”ことだった。依頼主いわく、近藤恵子は入ってから、やつれていったという。
神谷は、近藤恵子をどうやって戻そうか考え、一つの結論にたどり着く。

聞き込みの二日後、神谷は依頼主に連絡を取った。

神谷「作戦は一通り考えました」
依頼主『どんな作戦ですか?』
神谷「強行突破です」
依頼主『えっ?えっええっ!?』
神谷「だって、色々考えましたが、強行突破で教祖を殴り飛ばした後、近藤恵子を連れ戻すのが、一番早いと思って」
依頼主『いや…そうですけど…失礼ですが、貴方は無能力者ですよ?世界の光教の教祖は、能力者ですよ?』
神谷(失礼だな…)「…頑張ればいけます!」
依頼主『……』

こうして、神谷は強行突破で近藤恵子を連れ戻す事になった。


神谷「本当にいいんですか?仮に死んでも俺は責任は取りませんよ?」
依頼主「大丈夫です。どうしてもしたかったんですから」
神谷「…分かりました。絶対服従ですからね」

依頼主は、なんと神谷のカチコミについてきたのである。神谷は反対したが、責任を取らないという条件で付いてきた。
今は、拠点の前である。神谷と依頼主は進むと、入り口に受け付けはいなかった。今は深夜、信者たちは”集まっている ”のである。壁に貼られた地図を頼りに地下に進むと、お経のような野太い声が聞こえ、扉の前についた。
神谷は、依頼主に問う。

神谷「今からでも間に合います。それでも行きますか?」
依頼主「もう決めた事です。迷いはありません」

依頼主はそう返すと、神谷は扉を蹴破った。部屋にはローブを羽織った信者らしき姿と、中央の台の上にいる教祖らしきおっさんが見えた。
蹴破った音で、神谷に注目がいく。

信者「なっ…なんだお前!教祖様の経の最中だぞ!!」
神谷「はいはい、その胡散臭い教祖のいう事聞いて、何の意味があるんだ?」
信者「なっ…お前!!」
?「静まりなさいっ!」

信者がそう叫ぶと、お経を読んでいた声が聞こえる。信者たちは、その声の方向に向いて、神谷と依頼主もその方向に向く。教祖らしき男は、こういった。

教祖「貴方は何者ですか?」
神谷「俺か?俺は神谷悠。何でも屋だ。隣のは依頼主だ」
教祖「なるほど…どうしてここに?入信したいなら、また明日来てください」
神谷「違う、そういう事じゃない。俺は依頼主に、近藤恵子を連れ戻すようにと依頼された」

神谷はそういうと、教祖はこういった。

教祖「ああ…あの悪魔ですか」
神谷「…?」

そうして、教祖は言う。依頼主にとって、重たすぎる真実を。

教祖「あの悪魔…近藤恵子は、神の教えで、殺しました」

進歩 ( No.3 )
日時: 2023/12/31 22:11
名前: monmon (ID: Jolbfk2/)

神谷「なっ…」
依頼主「…ぇ…」

神谷と依頼主は絶句した。殺されていたとは夢にも思わなかった。

依頼主「…嘘…」
教祖「嘘じゃありません。悪魔は殺しましたので、大丈夫ですよ」

教祖はそう笑顔で言った。周りの信者たちは教祖を尊敬の眼差しで見ていて、本気で信じているらしい。
だが、この事実は依頼主にとって到底受け入れられるものではなく…。

依頼主「なんで…なんで殺したの!!!」

依頼主の悲痛な叫びが、部屋全体に響き渡る。

依頼主「殺す理由が無いでしょ!!なんで…なんで!!」
教祖「教えを信じなかった罰ですよ。教えを信じなくなった…これでは、邪教徒と同じです。神は邪教徒は決して許しません」
依頼主「そんなの、貴方の都合でしょ!自分の都合で人を殺すなんて…最っ低!」

依頼主がそういうと、信者は依頼主を一斉に非難し始めた。「こいつこそ邪教徒だ!」や、「神の冒涜だ!」と、散々罵倒してきた。すると、教祖はこういってきた。

教祖「貴方は、世界の光教に入りませんか?」
神谷「…俺?」

なんと教祖は、神谷に入信を進めてきた。が、神谷は、

神谷「そんな誘いに乗るとでも?俺はこんな所に入りに来たわけじゃない。どうせ依頼主はこの後殺す気だろ」
教祖「…そうですか…」

神谷はそういうと、教祖は突然こんな事を言い始めた。

教祖「皆の者!あの二人は悪魔です!殺してしまわないと、殺されてしまいますよ!」

教祖が言い終えた瞬間、信者たちはいっせいに襲い掛かってきた。隠し持っていたのか、拳銃やナイフを持つものもおり、中には能力者が炎を飛ばしてきた。神谷は依頼主を掴んで、驚異的な身体能力でジャンプし、信者がいない壁際まで飛んだ。

依頼主「あっ…ありがとうございます」
神谷「例はいい。後は任せろ」

神谷は言い終えた瞬間、強力な踏み込みで瞬く間に信者にたどり着いた。瞬時で三人の手刀を首にあて、気絶させた。

信者「悪魔め!」

二人の信者が拳銃を撃ったが、神谷は放たれた弾丸を両手でキャッチし、二人を殴り気絶させた。神谷には、信者を殺すつもりはなく、あくまで気絶させている。
能力者も混じっている信者を無傷で全員気絶させた後、教祖に顔を向けた。
すると、教祖の目はピンクに染まった。

教祖「kaudioanddnhajwhdisdnjehfoniudfsni」

お経を読んでいるのである。教祖の等級はAであり、等級が下の者や無能力者は彼の能力にはまる。だが…

教祖「きっ効かない!?催眠が!?」
神谷「…なるほど…」

神谷は信者の能力は”催眠 ”と分かった。

神谷(能力で催眠し、入信料を取っていたわけか)
教祖「こっこんなことをして、列強が黙ってないぞ!!」

聞いてもないのに教祖は突然こう言い、命乞いをしてきた。この発言に呆れ、手刀で気絶させた。
そして、依頼主に顔を向け、歩み寄った。

神谷「大丈夫ですか?」
依頼主「…大丈夫なわけないでしょ!!大切な友人を失ったんだよ!?」
神谷「…確かに、そうですね…ただ」

神谷は一泊を置いて、こう言う。

神谷「それでも…人は進まなくちゃ、いけないんです。貴方の友人は、進んでほしいと望んでいるはずです」

神谷はこう言うと、依頼主は泣いた。子供のように泣きじゃくった。

そして…神谷たちは教祖を刑務所に送った後、帰った。