ダーク・ファンタジー小説

列強会議 1 ( No.45 )
日時: 2024/04/09 23:14
名前: monmon (ID: Jolbfk2/)

空は晴れ、空気は暑すぎず、寒すぎない。ロンドン・ヒースロー空港は、今日も飛行機が飛び立つ。
マスコミは新しい列強を写真や映像に収めようと集まっていた。

「新しい列強、どんな姿なんだろうなぁ」
「イケメンだったりして!」
「ナユタに続き、また無能力者なのか」

市民も、各々の感想を抱き、滑走路を見守る。


神谷「…ようやく着いたか」
那由多「だね。いつ来ても綺麗なところだなぁ」

朝、神谷と那由多はロンドン・ヒースロー空港に着いた。理由は勿論、ロンドンで開催される列強会議に参加するためだ。
ドアが開き外に出る。案内され、空港内に入るとカメラのシャッター音とフラッシュが耳と目に入る。フラッシュが激しく、二人は思わず目を細めてしまう。

「神谷さん!列強会議に呼ばれた時の心境は!?」
「列強会議に対して一言!」
「夜神伊吹さんはどう思ているのですか!?」

マスコミの質問攻めを華麗にスルーし、二人は外の車に向かって歩いていた。事前に車が入置いていたのである。
そして護衛もいた。アメリカ大統領並みのガチ警護である。沿道には完全武装の兵士は立ってるし、建物内や屋上にはスナイパー。もし何かあれば、イギリス軍の部隊が即駆け付ける事になっている。

「指揮官車より各車。指揮官車より各車。列強2名搭乗確認。これより、バッキンガム宮殿に向かう」
『先導、準備良し』
『後続よし』
『こちら、受け入れ体制、並びに警備体制用意良し。いつでもお迎え可能』
「了解。これより出発する。全車、前へ」

車列はバッキンガム宮殿に目指して出発する。道中何の問題もなくバッキンガム宮殿へ。


イギリス名物衛兵交代式を見た後、神谷たちは宮殿に入る。
約1万坪の敷地を誇り、舞踏会場、音楽堂、美術館、接見室や図書館等が設置されている。部屋数は、スイート19、来客用寝室52、スタッフ用寝室188、事務室92、浴室78、部屋総数775である。宮殿に勤務する人は約450名、年間の招待客は4万人にもなるという。王族たちを補助する侍従50人は同じ宮に住み込み、その他の侍従達は王室厩舎であるロイヤル・ミューズに寄居する。内装は非常に美しい装飾が施されており、あらゆる人間を魅了する。
その美しさに魅了されつつ、神谷達は侍従に案内され、その部屋にたどり着いた。

侍従「ここです。楽しい会議を」

侍従が扉を開けると、目に入ったのは綺麗な絨毯に使われていない暖炉、テーブルとそれを囲うように装飾が施された椅子が5つほどある。そこに座っていた二人は見覚えがあった。

一人は列強3位の滕 梓涵(トン ズハン)。投資家であり、世界有数の資産家でもある。
もう一人はイギリス王室王女アグネス。説明不要の世界最強のイギリス王室女王である。

神谷「すみません。少し遅れました」
那由多「僕もです。すみません」
アグネス「時間通りよ…日本人は時間を守るのね…あら?」

アグネスは神谷を見るや否や何かを思い出した顔になった。因みにだが神谷と那由多は英語を喋っている。

アグネス「貴方…昔会ったわよね?」
神谷「?会ってませんが?」
アグネス「別に貴方列強だし敬語はいいわ。椅子に座って」

神谷と那由多は椅子に座り、敬語はいいと言われたため、神谷は普通に話し出す。

神谷「…それで?俺はあんたにあった事は無いが、何処かであったか?」
アグネス「ええ、あったわ。覚えてる?あの時の事を…」

アグネスは、少し昔話を語りだす。

列強会議 2 ( No.46 )
日時: 2024/04/10 22:31
名前: monmon (ID: Jolbfk2/)

皆さんこんにちは!monmonです!閲覧数1000超えました!この作品を見てくださりありがとうございます!
今後とも、この作品をよろしくお願いします!!


アグネスの話によると、神谷とは9歳の頃に出会った(この時はまだ両親は存命している。また神谷も9歳)。日本に来たアグネス含むイギリス王室は日本に訪問していた。が、お転婆なアグネスは持ち前の身体能力で護衛を振り切りはぐれてしまう。アグネスははぐれ、泣いてしまうが偶然神谷家と会い、何とか王室と合流する。

神谷「……そんなこと、あったなぁ~」
アグネス「思い出したかしら?あの時はありがとうね」
那由多「そうなんだ、知らなかったな~」

3人は会話に盛り上がる。すると、滕梓涵に声をかけられた。

梓涵「…俺を忘れるなアル」
アグネス「あら、それは悪いわね」
神谷「あ〜い、とぅいまてぇ〜ん!」
梓涵「古くないアルか?」
アグネス「古いわね」
那由多「古いね」
神谷「いつの間に標的にされたんだけど」

などと、茶番を交えつつ、話していたが梓涵がこう言った。

梓涵「夜神伊吹、遅くないアルか?」
神谷「確かに、もう始まってから15分だ」

伊吹について話していると、扉が開いた。全員の視線がそこに集まる。仮面の男が入ってきた。

仮面の男「ここがそうなのか?随分派手な部屋だな」
アグネス「…貴方が夜神伊吹かしら?」
伊吹「ああそうだ。少し怒ってんのか?しわが出来るぞ?」
アグネス「…日本人って時間を守るのに、貴方は守らないのね」

アグネスは若干機嫌が悪くなる。怒りを抑えるために紅茶を飲む。伊吹は椅子に座る。

梓涵「先日、うちの会社が世界の未来を見たアル。この情報は未確定要素が多く、またその日がいつか分からないアル。その上で聞いてほしいアル」
神谷「それは?」

全員が梓涵を見る。

梓涵「”ハルマゲドン”が復活する」
アグネス「!?!?!?!?」

アグネスに衝撃が走る。

梓涵が言う”ハルマゲドン”とは、おおよそ700年前、世界を破滅寸前まで追い詰めた災厄を指す。ある日突然現れ、世界を僅か半年足らずで破滅寸前まで追い詰めた。
だがある日突然消えた。比喩でも何でもない。”消えた”のである。

梓涵「少なくとも今じゃないアル。この情報はここに居る列強のみでお願いアル。他言無用アル」
伊吹「はーっはっはっは!!!あーっはっはっは!!!!」

急に笑い出す伊吹に、アグネスと那由多、神谷は避難的な目で伊吹をみる。

伊吹「わりぃわりぃ。ハルマゲドンだか何だか知らないが、伝説にビビるなんて、そんなレベルに驚いた!そもそも、伝説なんて物ををこんな場で喋る神経が俺には理解が出来ないな。しかも、列強がこの発言。
俺にあっさりと殺された中東のアクシオンも弱かったが、列強と言われていたな。列強会議か。レベルの低さがしれるな」
アグネス「…貴方は伝説と思っているかもしれないけど、実際にあった事なの。それに、梓涵の会社の能力者は、未来を見ることが出来るの。このおかげで、災害とかを事前に防いだ事もあったんだから」

伊吹とアグネス、梓涵は言い合いになってしまった。

那由多「なんだか、凄いことになったね…」
神谷「そうだな。しょうがない。」

神谷は3人を落ち着かせるために、行動を開始した。

列強会議…? 3 ( No.47 )
日時: 2024/04/13 13:55
名前: monmon (ID: Jolbfk2/)

神谷「おいお前ら、一旦落ち着け。少しはクールになれ」
伊吹「ああっ!?」
アグネス「なに?この男に言われたままでいろって言うの?」
梓涵「そうアル!言われたままは悔しいアル!」
神谷「落ち着け、一人ずつ喋ろ。俺は聖徳太子じゃねぇんだ」

何とか神谷は3人を落ち着かせる。が、3人ともかなり機嫌が悪い。

神谷「別に喧嘩するのは好きにするがいいさ。俺からすればクソどうでもいい。だがな、今は列強会議。列強同士の交流を目的とした、言わば交流会だ。そんな場で、こんな喧嘩をするな。お前らはガキか?」
伊吹「…ちっ」
アグネス「…」
梓涵「…」

3人は納得はしていないが、理解はしたようである。すると、伊吹が話し始めた。

伊吹「一つ、最初に伝えておく。俺は今回、列強会議に参加し、くだらない戯れをしに来たんじゃあない。列強が全員が会うこの機会に、宣言をしに来た。今一度聞こう。俺に従うか?喋らないのは反逆と見なす。まずは尋る。今、ここで俺に忠誠を誓う列強はいるか?」

一瞬の沈黙。ここに居る列強は、伊吹の言葉に唖然とする。

那由多「貴方は何を言っているのでしょうか?」
アグネス「意味が分からないわ」
梓涵「何を言ってるアル?」
神谷「お前は何を言ってるんだ?」

あまりにも突然の、あまりにも非常識な発言に、列強は呆れる。

伊吹「まぁいいさ。忠誠を誓うのは俺の力を知った後でもいい」
「「「「…!」」」」

突然、伊吹を除く4人は、伊吹の殺気を感じ取った。感じたこともない殺気に、4人は驚愕する。

伊吹「簡単にぶっ壊れるなよ!!」

左腕を差し出し、拳を握る。その瞬間、部屋は轟音と共に猛烈な爆発で包まれた。


神谷「っあっぶねぇ!?」

4人は部屋の窓から宮殿正面広場に行き、爆発を避けていた。窓からは黒煙が立ち上っている。アグネスは3人の安否を確認する。

アグネス「皆怪我は!?」
神谷「モーマンタイ!」
那由多「アグネスさん、大丈夫です!」
梓涵「同じくアル!」

全員無事なのにアグネスは安堵する。が、その感情はすぐに吹き飛ぶ。伊吹は窓から宮殿正面広場に飛び降りる。

伊吹「流石列強だな!他の奴よりは殺りごたえがありそうだ!!」
アグネス「…少し、痛い目にあったh」

その時、ロンドンの街から爆発音が響いた。4人は街の方に首を向ける。

アグネス「何が!?」
伊吹「おっ、”あいつら”も動き出したか」
アグネス「貴方!何をしたの!?」
伊吹「何もしてないさ。それより、忠誠を誓うか?」
アグネス「誓うわけないじゃない!?」
伊吹「残念だな、じゃ、死ぬか」

更に強力な殺気を4人に対して伊吹は向ける。

アグネス「ねぇ神谷君!」
神谷「何だ?」
アグネス「ロンドンの方をお願い!那由多君と梓涵はこの男を!」
梓涵「正気アル?あいつは何かやばいアル。戦力が少なくなるアルが?」
アグネス「いいの。さぁ早く!!」
神谷「…分かった」

神谷は地を蹴り、広場からロンドンの街に走って行くのだった…。

絶望の破壊者 ( No.48 )
日時: 2024/04/15 19:15
名前: monmon (ID: Jolbfk2/)

能力を発動した梓涵の体は、頭部からは2本の角が生え、皮膚は青い鱗が皮膚の表面を覆っている。背中からは服を破り小さい羽が生えていた。その姿は龍人とも言うべき姿だった。

梓涵「がぁぁぁぁあ!!」

超音速で伊吹に対し突進する。踏み込んだ地面は大きな亀裂が入っていた。伊吹に近づき、伸びた爪で引き裂く態勢をとる。

アグネス「待って梓涵!」
梓涵「貰ったあぁぁぁ!」
伊吹「…はっ」

伊吹は梓涵を鼻で笑い飛ばす。爪は伊吹に当たる事は無かった。梓涵があっけに取られるその瞬間、伊吹は梓涵の後頭部を右手で掴み、地面に顔をぶつける。その時生じた地面の亀裂は梓涵が踏み込んだ時より大きい。

梓涵「ぐっ!?」
伊吹「おいおいその程度かぁ?さっきの威勢はどうしたぁ!!」
那由多「梓涵さん!」

那由多は援護するために伊吹に急接近する。後頭部に蹴りを入れようとしたが、左手で那由多の足を掴み、バッキンガム宮殿の壁に投げつけ、那由多はぶつかり、壁には亀裂が生じる。

那由多「ぐっ…」
伊吹「あははははは!!!爆発してみようぜぇ!!」

左手を差し出し、握ろうとする。能力の発動の態勢に入る。だが、それをアグネスは許さない。

アグネス「させないわ!」

握ろうとしたが、アグネスは能力を発動。伊吹の手に重力を発生させ、手は地面に打ち付けられる。同時に膝をついてしまう。

伊吹(!!これは、重力かぁ?)
梓涵「どけぇぇぇぇぇ!!!」
伊吹「あぁ?」

梓涵は伊吹の右腕から脱出。そのまま振り向き、炎をまとった爪で引き裂こうとするが、伊吹は後ろに飛んで避ける。

伊吹「!」

その攻撃を感知した伊吹は咄嗟に左に避ける。その直後、伊吹の頬に”何か”がかすり、そのまま後ろの木を切断してしまった。木は倒れ、木の葉は鳴る。

伊吹「あははははは!!面白れぇ!何をしたんだぁ?」
アグネス「企業秘密よ」
    (嘘…さっきの攻撃を察知したの!?)

攻撃が避けられ、アグネスは焦る。が、すぐに冷静さを取り戻す。その時、周りが影に覆われた。3人は空を見上げると、巨大な龍がいた。大きさは500メートル。その姿は、まるで中華の龍のようだった。

アグネス「…!?梓涵!?何やってるの貴方!?」
梓涵「…」

梓涵は反応せず、口を開ける。光弾が口の前に出現し、光輝き雷と炎が弾を包む。光弾のエネルギーは付近の空気を振るわせ、甲高い音が鳴り響く。
超高熱の巨大な光弾。雷と炎によって閉じ込められた光弾はさらに圧縮された。
亜神龍の攻撃は開始された。光弾はようやく解放されたかのごとく、伊吹に対して極超音速で進んでいく。

伊吹「やるなぁ…おそらく喰らったらひとたまりもないだろうなぁ…けどなぁ!」

伊吹は左手を差し出す。

伊吹「てめぇごときじゃあ、俺を殺せないんだよ!!」

伊吹は手を握る。その瞬間、轟音と共に猛烈な炎が出現。光弾より何倍と大きい。
余りの轟音と衝撃に、バッキンガム宮殿内にいた人間は耐えられず、肺がつぶれた。逆に、列強は難なく耐えた。

伊吹の能力は『大抵の物はぶっ壊す能力』。この能力は伊吹が破壊できると思った物体、物質を破壊する。爆発範囲や爆発時の音、爆発時の衝撃は自由自在(尚、爆発範囲や音が変わっても、破壊には影響しない)である。余談だが、宮殿内の人間が死亡したのは、伊吹が”わざと”轟音と衝撃を出したためだ。
また、伊吹が破壊できないと思った物(例えばガブリエル以降の列強や概念上の物は破壊不可)は破壊不可能。この能力で、アクシオンを殺害した。

アグネス、那由多、梓涵は絶句した。梓涵の最強の攻撃ですら、伊吹に傷一つ、つけられなかった。

伊吹「デカいのは単なる的だぁ!!」

瞬間、伊吹は龍になった梓涵の背中にジャンプで到達。背中にめがけて全力で拳を振り下ろした。空中に浮遊していた梓涵は耐えきれず、血を吐き失神し、地面に自由落下。

ズガァァァン!!!

地面に衝突した瞬間、思わず耳を塞ぎたくなるような轟音が鳴り、埃がまき散らされた。周りを見ると、宮殿には当たっていないものの、木々や噴水が破壊され、綺麗な庭園が荒れ果てていた。巨体故の被害だろう。十秒後、梓涵は元の人間の姿に戻ったが、内臓が数か所傷ついており、口からは血を吐いている。

アグネス「梓涵!!」
那由多「梓涵さん!!」

二人は梓涵に近づく。確認すると、息はあるものの、もう戦えない状態なのは明白だった。

アグネス「…私の能力で確認したけど、内臓が傷ついているわ。もう戦えない状態よ」
那由多「そんな…」

伊吹はうまく着地。2人まで10メートルの所まで接近した。

アグネス「…那由多君、梓涵を遠くに。その内イギリス軍が助けに来るわ」
那由多「正気ですか!?殺されますよ!?」
アグネス「…大丈夫、切り札はあるわ」
那由多「けど!」
アグネス「大丈夫。私は死なないわ」
那由多「…分かりました。死なないで!」

那由多は梓涵を連れて遠くに行った。

伊吹「いいのかぁ?お仲間がいなくなったぞぉ?」
アグネス「ご心配どうも。けど、切り札があるの」

アグネスは着けていた槍のアクセサリーに触れ、槍を取る。槍は既に酸化しており、黒くなっていた。

伊吹「そのちんけな槍で戦うのかぁ?こりゃ傑作だ!」

伊吹はアグネスの行動を嘲笑う。突然、槍は淡く光りだす。

伊吹「うおっ!?」
アグネス「これは、イギリス王室に代々受け継がれ、最強の私だけが持つことが許された物…」

槍は巨大化し、装飾の施された西洋式の槍になった。アグネスはそれを構える。

アグネス「ロンギヌスの槍…日本人の貴方でも聞いたことはあるでしょ?」

奇跡の聖なる槍 ( No.49 )
日時: 2024/04/16 18:39
名前: monmon (ID: Jolbfk2/)

伊吹「ロンギヌスの槍…確か、持ち主は世界を制する槍の事かぁ?」
アグネス「そうよ、違うのは、世界を制するのではなく、”持ち主を勝利させる”事かしら」
伊吹「変わらねぇよ」
  (…あの槍、何なんだぁ?よくわからない感じだぁ…)

アグネスは聖槍の石突を地面に二回ぶつける。石と石がぶつかり合う音が鳴る。不思議なことにぶつかった地面は波紋が広がったように見えた。

伊吹「…?」

伊吹は何とも言えないような感覚に襲われた。その感覚に困惑した。今まで感じたこともない感覚に、一歩も動けなかった。

アグネス「えいやっ!!」
伊吹「がっ!?」

困惑している間にアグネスは近づき、聖槍を打ち込む。伊吹は9メートル飛ばされ、倒れてしまった。

伊吹「クソがぁ…どうなってんだぁ…」
アグネス「どう?聖槍の強さは。聖なる槍に、貴方じゃ勝てないわ」

そう言いアグネスはドヤ顔をする。伊吹は立ち上がる。

伊吹「確かに…その槍は強いなぁ…流石伝説の武器だぁ。だがな…」

伊吹は左手を差し出す。

伊吹「使う奴がゴミじゃあ意味はないんだよ!!」

そう言い手を握る。いくら伝説の聖槍でも破壊できる。そう思い握ったが…。

伊吹「ああっ!?くそがっ!何でぶっ壊せねぇんだ!?」

伝説の槍は…健在だった。イエス・キリストが磔刑となった際、その死を確認する為にキリストの体を突いたと言われる槍。「ロンギヌス」というのは、その槍を持っていた兵士の名前という説がある。
曰く、その兵士は白内障で目が見えなかったが、滴ったキリストの血が目に当たると視力を回復したという。
以後ロンギヌスは聖者とされた。
もっともこのロンギヌスのくだりは新約聖書には書かれておらず(兵士が刺したとだけ)、後世に作られた伝承と思われる。
キリストの血を受けた聖遺物、聖槍は、聖者の血を受けている。聖者の槍は、破壊者の力ごときだと通用しない。

アグネス「怒り狂ってるところ悪いけど、まだ終わりじゃないわ」

聖槍の槍の石突を3回地面に突く。その直後、伊吹の上部20メートルからは直径10メートルの超巨大な槍が、その刃が、伊吹の目の前に落ちてきた。そして槍はすぐに光の粒子となって消えた。

伊吹「ぶはぁ!!?」

突然胸部から想像を絶する痛みが襲ったかと思えば、それは食道を一気に昇り、大量の血を吐き出す。

伊吹「う…あ…」

吐血は止まったが、さっきよりは軽いとはいえ継続して痛みが胸部を襲う。下を見れば、赤い血の池が広がっている。が、アグネスはそれを許さない。

アグネス「やあぁぁぁぁぁぁ!!」

一気に加速し伊吹に飛び込み、止めを刺そうとする。槍を突き立てようとした。

ガシッ!!

なんと伊吹は、槍の刃の部分を指の力で掴んでしまった。まさかの事態にアグネスは焦る。

アグネス「っこの!」

アグネスは引き抜こうとしたが、力が強すぎて引き抜けない。伊吹はコンクリートの地面を砕き破片がアグネスの目の前に飛ぶ。そして、左手は握られる。

ドオォォォォン!!!

絶大な爆発。二人が閃光と爆炎に包まれる。

アグネス「きゃあぁぁぁぁぁ!?!?」

アグネスは20メートルの地点で吹き飛ばされ、倒れてしまう。美しい顔と、スタイルのいい体には、Ⅱ度、Ⅲ度の火傷が出来ていた。アグネスは意識を朦朧とさせ、やがて目を瞑り意識を失った。


伊吹「…やれやれ、手ひどくやられたものだな」

伊吹は自分の胸部に右手を添え、痛みがないか確認する。

伊吹「…痛みは、流石にないか。だがもう戦えねぇな。くそ、あと少しだったのに…」

思わず顔をしかめる。当初の予定(忠誠を誓うなら仲間に入れる。誓わないなら列強を全員抹殺する)が、アグネスのロンギヌスの槍で戦闘不能に陥った。そこに一人の男が駆け付ける。

神谷「…まったく、”あいつ”にてこずって、戻ってみたらこれかよ…」

少し怪我をを負っている神谷の登場に、伊吹は笑う。

伊吹「お前が来たって事は…もうあいつは死んだか」
神谷「あぁ、きっちりあの世に送った」
伊吹「そうか、なら殺り合おう。と、言いたいところだが…」

伊吹は腕につけていた腕時計のようなものに、右手を添える。

伊吹「じゃあな。だがさよならとは言わせねぇよ?近いうちにまた会うかもな」

そう言って伊吹は腕時計のボタンを押す。その瞬間、伊吹は突然消え去ってしなった。神谷はあっけに取られてしまう。神谷は倒れているアグネスに駆け込み、その惨状を見て、こう言った。

神谷「まじかよ…何があったんだ…あの2人はいないし…」

最強にここまでのダメージを負わせた伊吹に、神谷は戦慄した。

キャラが濃いおかま医師 ( No.50 )
日時: 2024/05/09 17:44
名前: monmon (ID: Jolbfk2/)

アグネス「ん…うぅん…」

宮殿前の戦いから二日後、目を覚ますと、白い天井が最初に目に入った。そして布団に入っている感覚もある。ここはロンドン・クリニックの病室。

那由多「悠君、目を覚ましたよ」
神谷「ほんとだ。おはよう、体の調子はどうだ?」

そこにいた神谷は質問をする。

アグネス「最悪よ。体中ヒリヒリしてるし」
那由多「まぁ、僕も悠君も傷を負ってるから」

そう言い那由多は苦笑いする。二人を見ると、アグネスや梓涵は重症だ。確かに神谷も那由多も傷ついているが、そこまでじゃなかった。

那由多「所で悠君、何で怪我をしちゃったの?」
アグネス「私も気になるわ。何があったのかしら?」
神谷「そうだな…ロンドンの街にたどり着くと、伊吹と同じように仮面をつけた謎の集団がいたんだ。人数は6人程度で、俺を見ると襲い掛かってきたんだ」
アグネス「どうなったのかしら?」
神谷「勝った。だが少し苦戦したな。で、だ。この後はどうする?新参者の伊吹に最強が負けたと報じられたんだ。おかげでネット掲示板では伊吹が最強、って言われてる」
アグネス「そうなのね…」
神谷「だから、あいつをぶっ飛ばして、俺らの評価を戻すしかない」

神谷の言う通り、アグネスが伊吹に敗北した事件『列強会議事件』が報じられた後、すぐにネット掲示板では「伊吹が最強なんじゃね?」「もう伊吹以外の列強とか時代遅れww」「最強が列強最弱に負けたのか…」と、伊吹最強論が展開されていた。神谷がスマホで画面を見せるとアグネスは「うわぁ…」という顔をしていた。

そんな時、扉が勢いよく開かれた。3人が一斉に扉を見ると、そこにはハイヒールを履き、白衣を着た…おかまがいた。

おかま「あらあら、王女様重症じゃない。もお折角の美人顔が台無しじゃない」
神谷「ア…アグネス…?」
那由多「えぇと…アグネスさん、あの人は…?」

神谷と那由多は恐る恐る聞く。当然だ、突然おかまが現れたら少し怖くなる。

アグネス「彼はラディー。おかまよ」
神谷「んな事は分かってる」
アグネス「優秀な医者よ。おそらくこの国で一番」
ラディー「よろしくね~神谷ちゃん、那由多ちゃん」

ラディーが投げキッスとウインクをすると神谷と那由多は背筋が凍った(ギャグ的な意味で)。
ラディー「3人とも、悪いけどついてきてくれる?」

そう言われると3人はラディーに意味も分からずついていった。途中梓涵と合流し、ある部屋に入った。
4人はラディーに言われ右から梓涵、アグネス、神谷、那由多の順番だ。

ラディー「いくわよぉ~」

ラディーの体に緑色のオーラが溢れ出していく。そして構える。

ラディー「はあぁァァァ!!!!」

男声で叫んだ瞬間、四人の包帯なり絆創膏が消え、アグネスと梓涵に至っては普段の服に戻った。傷が全て消えて。

神谷「What!?」
那由多「え?えぇぇ!?」
梓涵「うそぉアル!?」

3人が驚いた。

アグネス「どう?ラディーの能力は?彼の能力は『医療をする能力』。医療系なら世界でもトップレベルなの」
神谷「…すげぇ…」
那由多「凄い…」
梓涵「ちょっと見直したアル」
ラディー「聞こえてるわよ梓涵ちゃん」
梓涵「あ…」

全員が笑った。当の本人は赤面した。すると、部屋に近衛兵らしき男がやってきた。彼は息を切らしていた。

近衛兵「殿下!大変です!次女様のアイラ様が何者かに誘拐されてしまいました!」
アグネス「えっ!アイラは無事なの!?」
近衛兵「現在、全力で捜索していますが、分かりません…なお、犯人は仮面をつけていました」
アグネス「仮面!?本当なのね!?」
近衛兵「落ち着いてください、仮面の男です」

仮面の男と言えば、もうあの男しかいない。

アグネス「3人とも!アイラを助けたいの!お願い、協力して!」

そう言い頭を下げる。

神谷「分かった。俺らは列強同士だ。最強のお願いなんて無にできないしな」
那由多「出来る限りですが、協力させてください!」
梓涵「まぁ…少しは…」
アグネス「ありがとう…みんな…」

アグネスの顔は、安堵しながらも泣きそうだった。

ワンチャン伊吹を倒せる技 ( No.51 )
日時: 2024/05/11 16:12
名前: monmon (ID: Jolbfk2/)

近衛兵が横を見る。驚いた顔をし、何者かに吹っ飛ばされた。正体はタキオンだった。

タキオン「はぁ…はぁ…で…殿下…こ…これを…」
アグネス「え?えぇ…」

アグネスが息を切らしているタキオンからスマホを受け取る。動画サイトだ、配信されている。問題は内容だった。手を拘束されているアイラが、数人のローブを着た男に囲まれている。

伊吹『列強!俺は今、アイラを拘束している。数時間後、アイラを処刑する!殺されたくなければ、コーズウェー海岸に来るんだな!』

そう言い、配信を切る。

「「「「「「……」」」」」」

絶句する。来なければアイラは殺される。だからといって行ったら、最悪全員殺される。神谷を除く5人は、絶望した。

神谷「…一応、あの技を試してみるか」
那由多「あの技?」
神谷「使ったことは無いが…ワンチャン伊吹を倒せる」
アグネス「なっ!?」
梓涵「はぁ!?」
ラディー「うそぉ!?」
タキオン「!?」

その場にいる全員が、驚いた。梓涵に至っては語尾が消えている。

梓涵「…寝言は寝てから言えアル」
アグネス「そんな技があれば、苦労なんてしないわよ」
神谷「あくまでも、ワンチャンの話だ。成功するかは分からん」
那由多「そっ、それって、どんな技なの?」

全員が興味津々で聞いてくる。だが神谷は「見てからのお楽しみ」と言って、教えてくれなかった。


…数時間後。

伊吹「さぁて、いよいよお前の処刑タイムだ」
アイラ「んー!んー!」

口を布で塞がれているため、喋ることが出来ず、声を出すのが精いっぱいだった。
配信の準備をしようとしたその時、ローブの男が4人、あの世に旅立った。

伊吹「おっ、来たか」

そう言い崖を見る。列強4人が集結していた。

神谷「やっと見つけたわ!今すぐアイラちゃんを解放しなさんせ!お母さんが悲しんでいるザマスよ!」
アグネス「神谷悠?」

伊吹に向けて指を向けている神谷に、アグネスは肩に手を添える。無茶苦茶な殺気が神谷に対し向けられている。

神谷「…怒ですか?」
アグネス「ええ、それはそれは」

電気を流す。神谷は断末魔を上げる。ギャグ漫画だったら、黒焦げになっているだろう。

震電 ( No.52 )
日時: 2024/05/11 22:43
名前: monmon (ID: Jolbfk2/)

「くそっ、死ねぇ!」

ローブの男たちが杖を出したかと思えば、魔法陣のようなものが展開されていた。

「ファイオ!」
「アイシング!」
「サンダー!」

一斉に4人に向けて炎と氷と雷が飛んでいく。4人は避けつつ崖を降りるが、神谷を除く3人は非常に驚いていた。

アグネス(何あれ!?まるで魔法みたい…)
那由多(魔法みたいだ…ローブや杖もあるし、魔法使いなのかな…)
梓涵(なにあいつら。魔法使いなのかアル)

また神谷も冷静だが多少驚いていた。

神谷(何だ今のは?異世界に来た時の魔法みたいだ…)

疑問に思うが、その思いを振り払い、アイラを救出することに集中する。
伊吹は動かない。ローブの男たちは伊吹の態度にイラつきつつ魔法?を飛ばすが中々当たらない。

梓涵「がああぁぁぁぁ!!!」

梓涵が竜人に変身し、ローブの男に爪を使い攻撃する。

「くっ…!」
梓涵「まだまだぁ!」

男は避けたが梓涵は追撃。よけきれず杖もろとも破壊され、胸に傷を負って倒れた。

那由多「ふっ!」
「がっ!?」

那由多は杖を破壊し、アッパーで気絶させる。

アグネス「悪いけど、アイラを助けるためなの。ごめんあそばせ」
「があぁぁぁぁ!?!?」

アグネスは電撃を死なない程度に食らわせる。

神谷「そらよ」
「くそっ!くそっ!がっ!?」

男は魔法?で攻撃したが速度で翻弄され、最終的には後ろの首をチョップで気絶させられた。
そうこうしているうちに、ローブの男達は全滅。残る敵は伊吹一人となった。

伊吹「ほう…流石だな。強い強い」
神谷「本当にそう思っているのかよ」
伊吹「思ってる思ってる。さぁ殺ろう!」

伊吹は一気に殺気をを出し、列強たちを圧倒する。

神谷「なぁ、俺がやっていいか?」
アグネス「…冗談でしょ?」
神谷「まっ、さっき言ったろ?”技”を見せるって」

そう言い不敵な笑みを浮かべ、赤眼を発動した。気配の変化っぷりに、伊吹を含む3人は驚愕していた。

梓涵(なんだこの気配はアル!?)
アグネス(何この気配!?)
那由多(えっ!?いきなり雰囲気が変わった…)
伊吹(何だぁ?急に気配がガラリと変わった)

神谷は構える。少し引いた右手を左手で包むように触れる。右手が赤くなり、力を蓄えているように見える。数秒後、4人の視界から神谷の姿が消え去った。

伊吹「どこ行きやg」

神谷は伊吹の間合いの中に現れた。もう伊吹は攻撃を避けられない。

神谷「震電」

神谷の拳が伊吹の腹を殴った瞬間、赤い雷が迸り、衝撃波で空気が揺れた。果てしない威力の攻撃を喰らい、伊吹は吹き飛ばされた。
…今この瞬間、伊吹の体力は7割以上が文字通り消し飛び、伊吹の能力は、文字通り「破壊された」。

決着と、魔法国家への疑心 ( No.53 )
日時: 2024/06/03 11:50
名前: monmon (ID: Jolbfk2/)

伊吹(今まで…アクシオンも、アグネスも、俺には勝てなかった…。俺が強いからだ…だが)

吹き飛ばされた伊吹は血を吐きながら神谷をにらみつける。

伊吹(こいつはやばい…!今までのどんな奴よりもだ!)

伊吹は負けたことがない。破壊の力を持っているからだ。だが周りの人間は伊吹の力を恐れ、遠ざけた。それ故、友と呼べる人間がいなかった。幼い伊吹にとって、心にストレスを抱え、凶暴になっていった。
列強は、赤眼の力に驚愕する。

那由多(あんなに強いなんて…凄い…)
アグネス(…あの実力、ガブリエルが負けたのも納得するわ…)
梓涵(あれじゃ、ガブリエルが勝てるはずもないかアル)
伊吹「…てめぇ…」
神谷「どうした?随分としんどそうじゃないか」

煽っているように言われてにらみつけるが、神谷には全く効果がない。
すると、伊吹はポケットから小さな瓶を取り出し、地面に落として割る。ガラスの割れる音が鳴り響いたと同時に、三つ目のゴリラのような怪物が現れる。

怪物「ぐるあぁぁぁぁ!!!」

常人じゃまず捕らえられない速度で神谷に突進してきた。

神谷「焼」
怪物「がぁぁぁぁ!?!?」

まずはナイフで右腕を切断し、

神谷「肉」
怪物「ぐォォぉぉ!?!?」

左腕を蹴りで骨折させ、

神谷「定食」
怪物「が、がが…」

最後は喉を刺し絶命させる。が、周りをよく見ると12体出現した。

アグネス「私たちが倒すから、神谷君は夜神伊吹を!」

そう言い3人は怪物に攻撃をし始める。神谷は伊吹の方に首を戻す。

神谷「早くお縄についたほうが楽だぞ?それにいい加減俺も面倒になってきたからな」
伊吹「…はっ!いいやまだだね!俺は戦えるんだよ!」

そう言い近接戦闘をする。攻撃を捌くことが続いた。

神谷「伊吹…お前は強い。戦闘センスも、能力も、何もかもが列強クラスだ。…けどな」
伊吹「…がっ…」

伊吹の腹に神谷の拳が当たる。伊吹は崩れる。

神谷「…俺の、勝ちだ」

その時、アグネスたちも怪物を倒し終えた。ただ、伊吹が弱かったわけではない。伊吹は、間違いなく列強クラス、しかもアグネスを超える。赤眼を使わない限り、伊吹は倒せなかった。
だが、ひとまずはこの騒動は終結した。だが一点、神谷は引っかかっていた。

神谷(そういや、あの魔法使いみたいなやつ、そしてあの怪物、そして、アンストロース大魔法帝国、あの国は魔法っていう言葉が入っていたな。まさかアンストロース大魔法帝国が関わっている…?いや、妄想のしすぎか)

だが神谷の疑心は間違っていない。約数か月後、科学国家は震撼する。

終わった会議と新たな面倒事 ( No.54 )
日時: 2024/06/06 17:18
名前: monmon (ID: Jolbfk2/)

夜神伊吹が拘束され、アグネスの妹のアイラを救出し、2日が経過した。伊吹の事件もあったが、列強会議は行われていた。

アグネス「夜神伊吹、その仲間が使っていた腕時計は、我が国の技術者たちが作った転移装置だったわ」
神谷「あー、最近ニュースになっていたあれか」
アグネス「そうそう、そして、夜神伊吹は今は牢屋に入っているのだけど…」
那由多「だけど?」
アグネス「尋問している途中、突然痙攣し始めて泡を吹いて倒れちゃったの」
梓涵「は?どういう事アルか?」

3人は理解できなかった。そもそも伊吹が倒れたのは、神谷の「震電」が原因じゃない。

アグネス「能力の形跡もなかったし、体は健康で異常は無かっただったから、本当に分からないわ」
神谷「そうか…」
梓涵「その資料、うちの会社に出来たら回してほしいアル」
アグネス「分かったわ。後で言ってみるわ」

因みに今は食事しているのだが、神谷のフードファイター並みの食べっぷりに3人は少し引いていた。

アグネス「それにしてもあなた食べすぎでしょ…」
神谷「震電を使うと、数日間フードファイター並みの胃袋になっちまうんだ」
那由多「それにしても、『震電』って言った所、かっこよかったなぁ」
神谷「おいやめろ!あれ俺の中では黒歴史になっているんだぞ!!」
梓涵「自業自得アル。震でn」
神谷「おい梓涵やめろぉぉ!!!」

赤面しながら必死に止める神谷の姿に、アグネスと那由多は面白おかしく笑った。


列強会議が終わり、神谷と那由多は報道陣の飽和攻撃を受けながらも、那由多と厘は大学に、神谷は何でも屋を再開していた。知名度が上がった弊害なのか、依頼主の目的がサインや握手が多かった。更に神谷特集の番組を作ろうとテレビの人間がやってきたりと、儲けていたが大変だった。

神谷「…ったく、しょうもない依頼ばっかしてきやがって…儲かってはいるが何かなぁ…」

プルルルル プルルルル

机に置かれている電話が鳴る。神谷は「またテレビか」と少しうんざりしながら電話を手に取った。

アグネス『久しぶり、神谷君』

神谷は面食らった。相手が知り合いとはいえイギリスの王家の血を引く人間だからだ。神谷は英語で話し始める。

神谷「…なんだよ、イギリスでの神谷特集か?」
アグネス『そんなわけないじゃない。ある依頼をしたいの』
神谷「依頼?」

神谷は少し驚いた。イギリス王女が直々に依頼をするなんて聞いたことがない。

アグネス『アクシオンが死んだことは知っているわよね?』
神谷「もちろん。それがなんだ?」
アグネス『…アクシオンがいた中東では、戦争が起きているの』
神谷「戦争?」
アグネス『ええ。アクシオンという強大な実力者がいなくなった途端、中東では戦争が勃発したの。梓涵は会社で忙しいし、那由多君は大学なの。私も多忙になりそうだから、神谷君に頼もうと思って』

神谷は困惑しっぱなしだが、アグネスはお構いなしに話を続ける。

アグネス『率直に言うわ。中東に行って、黄金郷について調べてほしいの。イメニア解放軍という、イメニアの反乱軍の所に行って。彼らは至って過激じゃないから安心してね。彼らとイギリスの考古学者と一緒に調べて』
神谷「それなら準列強が言った方がいいんじゃないか?」
アグネス『それが、準列強の人を中東に送ったら、すぐに遺体になって帰ってきたの』
神谷「うへぇ。しかし、黄金郷ってなんだ?エルドラドって訳じゃないんだろ?」
アグネス『分からないわ』

神谷は怪訝な顔をした。

アグネス『黄金郷は、どんなところか、どんな施設があるのか、一切の情報がない上に、最初の考古学者団がいったら、音信不通になったの』
神谷「はぁ?全滅とか?」
アグネス『確認を取ろうとしたけど、人工衛星が黄金郷の部分だけノイズで映らないし、能力者が調べようとしたけど、全く分からなかったし、軍用機が調べようとしたけど、何故か撃墜されたの』
神谷「つまり俺は考古学者の護衛兼、最初に来た学者団の安否を確認しろって事か?」
アグネス『そういうことね』

神谷は思わずため息を出してしまった。

神谷「分かった、その依頼を受けよう。報酬は?」
アグネス『2億円でどう?』
神谷「分かった」

こうしてアグネスは諸々の事(飛行機の便や期間)を言った後、電話を切った。

神谷「…さて、準備するか」

神谷は中東に行くために準備する。だが、そのころ、黄金郷では、不敵な笑みを浮かべる美少女とも言うべき女性の姿が、そこにいた…。