ダーク・ファンタジー小説

Re: やよいの過去屋 ( No.4 )
日時: 2024/02/10 09:04
名前: とーりょ (ID: J0KoWDkF)

「残念だけど、君はクビってわけだ。」
空気が冷たく、外からはカラスの鳴き声がカァカァと聞こえた。

「あたし、『過去』が見えたんやで…?なんでクビなん!!」
そう言うと、ノアールは少しビックリした顔であたしの顔を見てきた。
「君は、…続けたいのか?」

その質問にあたしはすぐに返事を返した。
「続けたい!…せめて山田さんの件を片付けてクビにしてください!」
あたしはノアールに土下座して頼んだ。

あたしはずっと頭を床にくっつけて土下座していると、ノアールの小さな手があたしの頭に
軽く乗っかった。
「……花倉はなくらは、僕のこと気持ち悪いって思わないのか?」
そのノアールの弱々しい声に、あたしは頭を上げた。
すると目の前にはノアールが座っていて、じーっとあたしの目を見つめていた。

ノアールは手をパーカーのポケットに突っ込んで、少し照れた顔で下を向いた。
「前も言ったけど、僕『幽霊』だからさ。」

あたしはなんとなく察した。
ノアールは何回かあたしのような人に声をかけては『気持ち悪い』と言われ続けたこと。
そう考えると、少しかわいそうに思えてきた。

「…じゃあ、なんであたしはノアールのこと見えるん?」

「僕が花倉はなくらには見えるように魔法のようなものを使っているだけ。」
あたしは自分の事を『花倉』と呼び捨てされていることが気にはなったが、
あたしは呼び捨てなどされたことがなかったので少し嬉しかった。

「けど、この人間の子供の姿になれば他の人間からも自動的に僕のことが見えるようになる。」
あたしはノアールの説明でちょっとだけ理解した。


そして、その時にはもう夕日が見えなくなっており、周りも真っ暗になっていることに気がついた。
あたしが夜になっていることに気付き外を見ていると、ノアールも後ろを向いて外を見た。
「…ほな、あたしそろそろ帰るからっ!」

リュックサックを背負って、帰る用意をしていると…
「待って。」
…ノアールに引き止められてしまった。