ダーク・ファンタジー小説
- Re: 神人ーカミビトー ( No.5 )
- 日時: 2024/03/24 10:10
- 名前: Nal (ID: JU/PNwY3)
王都から離れ、ニュクステラを目指して歩き出したカノンとテレサ。
そこまで幾つかの町村を通り抜ける。白夜皇国の皇族は白髪に赤色のメッシュがある。
カノンは黒髪に青色のインナーカラー。髪色など人によって異なるのだから変では無い。
遺伝もあるが、突然変異なのだろう。
「勿体ないわ。こんなに綺麗な青色の髪がインナーカラーだなんて」
「そう?」
テレサは柔らかいウェーブのある青緑色の髪だ。深海の髪。
「あぁ~…!誰か、助けてくれー!」
ゴロゴロと転がって来るのは何だ。林檎や玉ねぎ、蜜柑が転がる。慌てて、拾い集めた。
カノンたちがいたのは坂のすぐ下だ。拾い損ねることは無かった。全て拾ってから坂の
上で立ち往生している老人が持つ籠に敷き詰めた。
「お嬢さんたち、ありがとう」
「気にしないでください、おじいさん」
長い口髭と隻眼。その目は若い頃に怪我をしてしまったらしい。
「ほほぅ、ニュクステラへ向かうのかい。大変じゃなぁ、遠いじゃろ」
「そうですね。幾つも街を抜ける必要があります。一日では辿り着けないのは
明白ですので、途中で何度か宿を取りながら進むことになるでしょう」
老人は自分の髭を撫でながら、何かを深く考え込む。彼は二人を近くに呼び寄せ、地図を
広げる。今いる場所を指さして、そしてスライドさせる。
「この道を真っ直ぐ進んだ後、分かれ道がある。左に進むともっと近くなるんじゃよ。
人も多い場所じゃ」
「初めて知った。知ってた?」
「いいえ、私も知らなかった」
カノンとテレサのやり取りを聞いて、老人は笑った。
「この辺りに住んでおらんならば知らなくても当然じゃよ。じゃが、一つ
条件がある」
老人は指を立てる。
「最近、盗賊がいて困っておるんじゃ。彼らがその道を違法に塞いでおってな」
「その盗賊をどうにかしろ、と?」
テレサが確認した。盗賊団で困っているなら、騎士団に頼めば良いのではないかと聞くが
騎士団を動かすには政治家たちを納得させなければならない。果ては王が許諾する必要がある。
その王が今は不在、自分の地位のみに興味を持つ貴族たちには有象無象の困りごとは
興味無いらしい。
「実は儂も大事なものを盗まれちまったんじゃ…金色のペンダントを見つけたら、持ってきてくれ」
「分かりました」
二人の背中をジッと老人は見つめる。彼に接触して来た人間がいる。
「その姿の時はビレイグ、でしたっけ。相変わらず知略に長けていますね」
「ふぉっふぉっふぉっ、本当に困っておっただけじゃよ」
「僕としては心が痛むのですが…」
「刺激を与えてやらなきゃ、才能は花開くことは無い。良い機会だろ?遠慮はいらねえ」
老人らしからぬ口調で青年と話す老人ビレイグ。ビレイグに対して青年は敬語を使う。