ダーク・ファンタジー小説

Re: 死ぬ前にすべきこと。 ( No.2 )
日時: 2012/09/16 17:33
名前: 朱雀 (ID: P/sxtNFs)
参照: 一日目

教室のドアを開ける。
一気に視線が集まっていた。その視線は好奇や同情。

「あっれぇ〜〜??もう死んだのかと思ってたよぉー美紀ちゃん」

「あははは、あんたそれ言い過ぎっ!不登校になったのかって聞かないとっきゃははははははは、あはははははははは」





・・・澤田と藤木か。



私はそいつらを冷たい目で見下ろす。
そうしていると同化してわらっていたクラスが一気に静まりかえった。


「・・・なに?その眼」



「うるせぇ」




「・・・・・・・は?」




「黙れ、屑」



唖然とする澤田をすり抜けて私は教卓の前に立った。誰もが私を見る、その眼はああ、こういうのかな奴隷を見るような目だと。


そこに分厚くなった鞄を置くと一拍遅れて、顔を真っ赤にして澤田が口を開いた。



「ちょっとあん——」


「はい、ご注目ぅー!」


アイツらがいつも言ってるみたいな間延びした声で、私はおもむろに手提げをひっくり返した。鋭い音とともに落ちていく紙の束、それはまるで今から始めるゲームのスタートを飾るふさわしいオープニングだった。

クラスの奴らが私を見下していた目が徐々に変わり始める。


「おい、これ・・・」

「嘘だろ・・・?」

「何でこんなものが・・・・・・」


ざわざわし始めるクラスに私はムカつき、五月蠅いと声を張り上げた。

一気に静まり変えるそいつらの行動に私は、まるでお姫様になったような気分になった。憧れだったんだよね、まあ、王子なんて私が殺してしまうんだろうけどね・・・あはははははははは。


私は落ちた紙を一枚拾い上げ、前に突き出した。ああ、笑いが止まらない、止まらないよ、どうしたのみんなーっ?真っ青な顔しちゃって!何が怖いのぉー?私じゃん、ねえ、いま君らの前にいるのは笑われるだけでびくびく震えていた私だよー?



「あー、これ良く撮れてますねぇ。澤田さん、ね?どう、これ!いいアングルじゃないですかぁ?私が澤田さんに雑巾を口に詰めようとしていた時の」


澤田はもう何も言わなかった。真っ青に青ざめた顔で目をひん剥いて私が差し出した写真を凝視していた。あーあ。ばれちゃうねぇ、これじゃあ。
みんな怖いんだよねぇ、嫌だよねぇ。バレちゃえば、自分は将来も信頼もぜぇーんぶ真っさら消えちゃうもんねぇ・・・。

「ねえ、これ。どれだけつらかったと思います?大きく口開けて、雑巾を喉の奥まで入れるんです。むせ返る臭さと、ものが逆流しそうになる感覚。泣きながら首を振る私に、貴方はこう言いましたよね。

これは、罰ゲームだよってね。私は。何にもしてないのに。何にもしていなかったのに!それでも笑いながら吐き出さないようにって、また雑巾入れましたよねッ?!ねえ!黙ってたら分からないじゃないですか」


二やけが止まらない。ああ、こういう気持ち!そっか、やめられないよね、こんな楽しくて仕方なかったら、やめられない、やめられないよね?!かたかた震えながらなぁーんにもできない相手に、私のようにしたくなっちゃうよねぇぇ?

私が澤田の前まで行くと、彼女は唇を噛んだまま、俯いていた。
あらあらあらあら、どうしたのー?綺麗な顔が台無しだよ、はは。

「どうなんですか?楽しかったですか?たのしかったですよねぇ?だって今私はとっても楽しいんですから!」


彼女はしゃべらない。
あーそうですか。

乱暴に私はそいつの顎を持って、こちらへ向かせた。


「見て、今の私!どう?楽しそうでしょ?!澤田さんだって、そうでしょぉ・・・?」


「ぁ・・・わ、たしは・・・た、たのしく、な、なか、なかった・・・・・・」


「・・・・・・」


あーそれね。
実はいじめだって○○がやれってったから、私は仕方なくってやつですか。なるほど。なるほど。


「嘘つかないでくださいよ」

「・・・ぅ、そ、じゃ」




「黙れッッ」





あー、許せない。そうやって逃げるの。ね、逃げるんだ。
私は教卓に落ちていた数冊のノートから一冊を奴の目の前で、音読してやる。


「4月5日。澤田が私の目の前に来ていう。ハル君に色目を使うな、お前なんか眼中にないんだよと私の前で暴言をはく。
4月6日。数人の女子と澤田に呼び出される。殴られる。殴られた場所は制服で隠れて分からないようお腹5回、背中3回。肩2回。太もも6回を踏み潰す。澤田は8回。藤木は5回。沢城3回」

彼女はそれを聞いて息をのんでいた。そのノートに書いていたのか、と。そうだね、毎日毎日書いた。


「ねえ、それでも嘘つきますか?貴方ですよ、すべての元凶」


「ゆる・・・して・・・、ごめ、ん、ごめん、すみま、せん」

彼女は涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃしながら、私に許しを請う。あーあ。それ遅いんだなぁ。すべて遅すぎるんだよね、それ!


「謝らないで」

「え?」


彼女の瞳が光る。許されると思ったのだろう。
私はすがる哀れなそいつに微笑みかける、優しく優しく。



「謝っても許されないから。だってこれは罰ゲームだもの。あなたが悪いの。このルールだってあなたが決めたんだよ?だから、これは必然なの。だって、貴方の罪は補わなければいけないの」


いいねぇ、その絶望的な顔。
私、好きだよ?ぞくぞくしちゃう。


「さあ、みなさん。多数決を取りましょう」

私はクラスのみんなに笑顔でいってみせた。

「ここで私にだまって従うか、それとも知られたくない過去をさらされて世間から非難される生活を受けるか。どっちでも構いません。さあ、多数決を取りましょ?前者か、後者か」

一周ぐるーっとしてみんなの顔を見る、どいつもこいつも金魚見たいに口をパクパクして馬鹿だねえ。

「前者のもの、手を上げて」

ゆっくりと、ゆっくりとみんなが澤田を視界に入れないように、手を上げる、ざーっと見ても・・・あ、一人だけ手を上げてない人発見。

澤田もそいつを見ていた。私に仲良し子よしでいじめてきた藤木だ。

私は再度問う。


「藤木さんは?どちらですか?」





みんなが藤木に視線を集める。彼女はスカートを握り締めて、震えた後、顔を上げた。



「ふじ——」


「ごめんね、さわちゃん」


あははははははははははははは、これは面白い!
みた?今の澤田の顔。
信じてたのにって顔ッ!ばっか、そんなもんなんだよ!



「じゃあ、私が王としてここに宣言します」



静まり返る教室の中私の声が響く。



「ターゲットは澤田。罰ゲームを開始してください」


宣言した後、あの時私が感じていた視線が一気に澤田に向くのを感じた。