ダーク・ファンタジー小説
- Re: 死ぬ前にすべきこと。 【キャラデザ完成と参照400突破】 ( No.54 )
- 日時: 2012/12/06 16:46
- 名前: 朱雀 (ID: P/sxtNFs)
- 参照: 変わり身編
ははははは、でも安心して?
私の大切な大切な友達は、絶対に傷つけさせない。
「ねぇ……静乃ちゃん?」
「……と……」
微かに私の名前が聞こえた。
ああ、何か月ぶり? ううん、何年ぶりだろ? 静乃ちゃんが私の名前を呼んでくれたよね、呼んでくれたッ!
嬉しい、嬉しいッ。
そうだよね、そうだよね、だって静乃ちゃんは私をいじめるのを見るのが耐えられなくて、私からいつも目をそらしてたんだよね、そうだよね。
急に私の名前を呼ばなくなって、私と話さなくなって、私のメアドを消去して、私を遠巻きするようになって、私のことを視界にいれなくなったのも。
全部、全部、アイツらのせいなんだもんね?
アイツらが、私に近づくなって、私と話すなって、アイツらが言ったから、アイツらのせいでアイツらさえいなければ、こんなのことにはならなかったもんね?
知ってるよ、知ってるよ。だってだって静乃ちゃん、私は特別なんだもんねッ? 私がいないとだめなんだもんねッ?
自分の保身のために離れただなんて、もとから嫌だったからちょうどいいなんて、そんなのアイツらの醜い汚い口から出た、嘘だよね?
そうだ、そうだよ!!
アイツらは私たちの中を裂こうとしたんだ!
許せない、許せない、許せない!
静乃ちゃんは何も悪くないよ、私がちゃぁーんとアイツらに罰を与えてあげる。
だって、許せないでしょ? 許せない、許せないよね?
「……こ、これから……どう、す、するの」
ああ……。
これって、なんていえばいいのかな。
嬉しいなんて言葉じゃ、言いきれないよ。静乃ちゃんが、私に話しかけてきてくれた、私の目をみて! 私に!
「静乃ちゃん、もっとこっちに来て? もっとこっちに」
来てくれる、来てくれるよ?!
足が震えるのも、目が潤むのも、口を噛むのも、全部私とこんなに久しぶりに喋ったからだよね。
私も一緒なの、嬉しいよ。嬉しくて、嬉しくて、嬉しくて!!
あ、この香り。そうだ、みかんの香り。
そっか静乃ちゃん、みかんすきだって。いつもお弁当に持ってきてたんだもんね。今も好きなんだ、変わらない、変わらないんだよね。
薄らガラスの向こう側で、ぽつぽつと灯す光が静乃ちゃんを私に見せてくれる。
そうだ。
静乃ちゃんの髪はちょっとだけ毛先がはねる、薄い茶色のような髪で。
静乃ちゃんの頬は白玉のように繊細できれいな肌で。
静乃ちゃんの目は何も知らない無垢な赤ん坊のような瞳で。
静乃ちゃんの唇はつやつやした桜色の柔らかそうな唇で。
静乃ちゃんの体はすらっとしてて、モデルのようにきれいで。
ああ……いる、ここに、いる。
私のそばに。手を伸ばせば届く位置に。
「…しず…のちゃん……?」
髪に触れる。柔らくて、ふっと吹いてきた風からシャンプーのにおいがして。
鼻の奥がジーンとなって、しゃべりたいのに、話したいのに、喉から息が出なくて。
ここに。
私の、隣に。
ああ……ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、まってた。
ようやく手に入れた。ようやく取り戻すことができた。
私の大切な、大切な、大切な、静乃ちゃんを。
「……わ、わたしっ、は……どうすれば、いいの」
え?
静乃ちゃんの絡ませていた指を止めて、私は首をかしげる。
「わたし、わた、し…どうすれ…ばっ、いい?」
何を、とは聞き返さない。
わかってるの。だって、私静乃ちゃんのこはぜぇーんぶぜぇーんぶわかるんだもん。
そっか。そうだよね。
可哀そうに、可哀そうに。ごめんね、私何にも言ってなかったもんね、静乃ちゃん不安だったんだよね? じゃあ、ちゃんと私が安心させてあげる。静乃ちゃんの不安を解いてあげる。
「なぁーんにも、しなくて、いいの」
「…え?」
私が全部静乃ちゃんの不安を解いてあげるね。だから、私はゆっくりゆっくり微笑んでみせる。
「静乃ちゃんはただ、私のそばにいてくれればいいの。それだけ」
静乃ちゃんは目を見開いて、私でも聞き取れないほどの声でえ?とつぶやいたのが聞こえた。
何度だって、何千回だって、静乃ちゃんが安心するまで言ってあげる。
「静乃ちゃんの目は私が汚させない。汚いものも、醜いものも、鮮血も、すべて、全部、私が目隠ししてあげる。守ってあげる。誰にも疑わせない、誰も疑わないようにしてあげる」
「……」
「だから…ね? 安心して? 大丈夫、私が守ってあげる」
じっとふちの濡れた瞳が私を見てくる。
それを見た瞬間、体が動いてしまった。
震える、ウサギのような体に腕を回す。やさしく、やさしく、壊れてしまわぬように。
大丈夫だよ、静乃ちゃん。
私に任せて。
私があなたを守ってあげる。
だって、お友達、だから。
「これから、ずっとずっと一緒だよ。
——しぃ」