ダーク・ファンタジー小説

Re: 死ぬ前にすべきこと。 変わり身編  ( No.90 )
日時: 2012/12/09 15:30
名前: 朱雀 (ID: P/sxtNFs)








「もうやめてぇええええええええええええ!!」




 あの叫び声と、ともに私の手は止まった。


 一斉に誰もが声の主に振り返った。……前田が、俯いたまま、こちらからでもわかるほど、ぐっと拳を握って……、そして、顔を上げる。



「もう、こんなのはたくさんッッ! みんながどうしてこんなことに従ってるのか、もう私は分かんないよッ! ねえ!」

 目の前に起こっていることが、私は信じられなかった。隣にすわっていたアイツが、すっと立ち上がる。
 
 私は、はっと我にかえって周りに気づかれないようにともう一度それをポッケにしまった。

 
「——ねえ、どういうこと? ねえ、ねえ、前田?」


 狂気にはらんだような声で、アイツが、前田にゆっくりゆっくりふらふらとした足取りで、ははははははははははははと体をよじらせながら、頭をがりがり掻き毟りながら、ただ、ただ嗤って、嗤って、嗤って…………その笑い声がやんだ。










「——裏切ったの?」






 背中しか見えない、アイツのはざまで前田の背中がびくんと揺れるのが分かった。

 
「ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、ねえ?
裏切ったの、私を? この私を? ねえ、そうなの? はは、そうなの、そうなんだ、あっはははははははははははははははははははははははははははははっはははははははっはあはははっはあはははっははっはははははっははははははっはははははははははははははっははははははははっはあっはははははははははははははははははははははははははははははっはははははははっはあはははっはあはははっははっはははははっははははははっはははははははははははははっははははははははっはあっはははははははははははははははははははははははははははははっはははははははっはあはははっはあはははっははっはははははっははははははっはははははははははははははっははははははははっはあっはははははははははははははははははははははははははははははっはははははははっはあはははっはあはははっははっはははははっははははははっはははははははははははははっははははははははっはあっはははははははははははははははははははははははははははははっはははははははっはあはははっはあはははっははっはははははっははははははっはははははははははははははっははははははははっはあっはははははははははははははははははははははははははははははっはははははははっはあはははっはあはははっははっはははははっははははははっはははははははははははははっははははははははっはあっはははははははははははははははははははははははははははははっはははははははっはあはははっはあはははっははっはははははっははははははっはははははははははははははっははははははははっはあっはははははははははははははははははははははははははははははっはははははははっはあはははっはあはははっははっはははははっははははははっはははははははははははははっははははははははっはあっはははははははははははははははははははははははははははははっはははははははっはあはははっはあはははっははっはははははっははははははっはははははははははははははっははははははははっはあっはははははははははははははははははははははははははははははっはははははははっはあはははっはあはははっははっはははははっははははははっはははははははははははははっははははははははっはあっはははははははははははははははははははははははははははははっはははははははっはあはははっはあはははっははっはははははっははははははっはははははははははははははっははははははははっはあっはははははははははははははははははははははははははははははっはははははははっはあはははっはあはははっははっはははははっははははははっはははははははははははははっははははははははっはあっはははははははははははははははははははははははははははははっはははははははっはあはははっはあはははっははっはははははっははははははっはははははははははははははっははははははははっはあっはははははははははははははははははははははははははははははっはははははははっはあはははっはあはははっははっはははははっははははははっはははははははははははははっははははははははっはあっはははははははははははははははははははははははははははははっはははははははっはあはははっはあはははっははっはははははっははははははっはははははははははははははっははははははははっはあっはははははははははははははははははははははははははははははっはははははははっはあはははっはあはははっははっはははははっははははははっはははははははははははははっははははははははっはあっはははははははははははははははははははははははははははははっはははははははっはあはははっはあはははっははっはははははっははははははっはははははははははははははっははははははははっはあっはははははははははははははははははははははははははははははっはははははははっはあはははっはあはははっははっはははははっははははははっはははははははははははははっははははははははっはあっはははははははははははははははははははははははははははははっはははははははっはあはははっはあはははっははっはははははっははははははっはははははははははははははっははははははははっはあっはははははははははははははははははははははははははははははっはははははははっはあはははっはあはははっははっはははははっははははははっはははははははははははははっははははははははっはあっはははははははははははははははははははははははははははははっはははははははっはあはははっはあはははっははっはははははっははははははっはははははははははははははっははははははははっはあっはははははははははははははははははははははははははははははっはははははははっはあはははっはあはははっははっはははははっははははははっはははははははははははははっははははははははっはあっはははははははははははははははははははははははははははははっはははははははっはあはははっはあはははっははっはははははっははははははっはははははははははははははっははははははははっはあっはははははははははははははははははははははははははははははっはははははははっはあはははっはあはははっははっはははははっははははははっはははははははははははははっははははははははっはあっはははははははははははははははははははははははははははははっはははははははっはあはははっはあはははっははっはははははっははははははっはははははははははははははっははははははははっはあっはははははははははははははははははははははははははははははっはははははははっはあはははっはあはははっははっはははははっははははははっはははははははははははははっははははははははっはあっはははははははははははははははははははははははははははははっはははははははっはあはははっはあはははっははっはははははっははははははっはははははははははははははっははははははははっはあっはははははははははははははははははははははははははははははっはははははははっはあはははっはあはははっははっはははははっははははははっはははははははははははははっははははははははっはあっはははははははははははははははははははははははははははははっはははははははっはあはははっはあはははっははっはははははっははははははっはははははははははははははっははははははははっはあっはははははははははははははははははははははははははははははっはははははははっはあはははっはあはははっははっはははははっははははははっはははははははははははははっははははははははっは…………はあ」


 アイツは、狂ったように体をねじらせ、顔を掻き毟り、がりがりっがりがりッ! 耳に響くほど鋭い爪を肌に突き立てながらその奇怪な行動をして、それはぴたりとやんだ。


 教室内は、もう誰も息をひそめて嗤ってすらいなかった。その沈黙が、私の頭を執拗に殴りつけるような痛みを伴わせる。


「——いいよ。そいつら、引き連れて逃げてみてよ」


「……ぇ?」


 アイツの目の前に立つ、前田の顔が一瞬歪んだように見える。

ふふっふふっと不気味に口をゆがめて、アイツは——言った。













「ただし、見つかったら殺してあげる。ぐちゃぐちゃにして、ね?」