ダーク・ファンタジー小説

Re: ラストシャンバラ〔B〕最後の楽園 執筆中 ( No.25 )
日時: 2013/03/07 22:29
名前: 風死(元:風猫  ◆Z1iQc90X/A (ID: Exk/SR5W)

 ラストシャンバラ〔B〕 ——最後の楽園—— 第1章 楽園への鍵
 第1話「ヴォルト・ジルという男に出会う」 Part3
 
 戦闘を終えた私とクロノスは艦内へと戻り、服を着替えると本船正面部分に設置された操縦室へと向った。
 ハル達の調査結果を受け取り、フレイム居住区に侵入するメンバーを選抜するためだ。 
 お預けを食らったクロノスはうな垂れ、自分の席で何かをぶつぶつと唱えている。
 私はリーダーとして行くことが決定しているので、次に備えて鋭気を養う。

 「クリミア姉さーん、解析終了しましたっすぅ!」

 ハルの声が響く。
 調査結果が出たらしい。
 私はハルに結果を問う。

 「で、どの船が大丈夫そうだ?」
 「そっすねぇ。船として機能しそうなのは、1隻。お偉いさんが乗ってたっぽい奴だけですわ。さすがに、少しはましな奴らが乗ってたってことっすかねぇ?」

 ハルは鍵盤を叩きながら、飄々(ひょうひょう)とした口調で答える。
 結構慎重に狙いをつけたつもりなのだが、使い物になりそうなのは1機だけらしい。
 まぁ、1つの大丈夫なだけでも良しとすべきかな。
 どうせ、使うのは1隻なのだし。
 
 さてと、次は人選だ。
 この船のシステム管理者であるハルとオデッサを、簡単に船から離れさせるわけにもいかん。
 ジギンドは前の傷がまだ感知していない。
 クロノスに至っては、初めての星だとはしゃぎ過ぎて論外だし。
 そろそろ、アルテミス達も目を覚ますころだろから。
 待とう。
 そう、結論付けたときだった。
 クロノスが喚きだしたのは……

 「ねぇねぇ、クリミア様あぁー、10分経ったよぉ? デェザートゥ、デ」

 あぁ、こういう時ばかりは細かい奴なんだよ。
 うざくてゴメンよ、とか誰に謝ってんだ私は。
 げんなりして来たな。
 殴って気絶させちまおうか。
 そう思い、私が席を立ったときだった。
 操縦室の自動扉が小さなの音を立て開く。
 どうやら、アルテミス達が来たようだ。

 「あぁ、起きたと思ったらこれか。相変わらず鬱陶しいんだよクロノスお前は。我が主を戸惑わせるな!」

 クロノスの駄々を聞いたらしいアルテミスは、げんなりとした口調でぼやき、小さな氷塊(ひょうかい)をクロノスに叩きつける。
 
 「ぎゃぅっ?」
 
 クロノスは悲鳴を1つ上げると、自席の机に倒れこむ。
 気絶したのか、一言も放たない。
 クロノスとアルテミスは性格上火に油で、クロノスが少し気に入らないことをすると、アルテミスはいつも制裁をくだすのだ。
 まぁ、クロノスは並の人間などはるかに超えた頑丈な体の持主なので、あまりアルテミスを指摘する気はない。
 実際、私自身もうざくて時々殴るし。
 
 頭から少量の血を流したらしく、フードが赤く染まっているクロノスは無視し、私は挨拶しようとアルテミス達の居るほうへと振り返る。
 私から見て右側に立つ、エナメルみたいな光沢を放つ青色の無造作な短髪をした、長身痩躯の怜悧な雰囲気を持つ女性がアルテミス。
 そして左側のほうにいる、腰までとどきそうな黒髪ロングストレートをの小柄な女性が、カロリーナだ。
 私が声を出す前に、アルテミスが頭を下げ挨拶をする。
  
 「我が主、おはようございます」

 私が正対して目が合ったときに、挨拶をするのは彼女なりの礼儀なのだろうか。
 あるいは彼女の故郷である、ヴァルファット星の流儀なのかもしれん。
 ジギンドに次いでクルーとして一緒に居る時間が少ないゆえか、意外と彼女については分からないことが多い。
 ただ、我がクルー内でもトップクラスに、私を敬愛していることだけは確かだがな。
 
 「あっ、あぁ、おはよう? ときにアルテミス。髪の毛少し乱れてるぞ。はねてる」

 さてと、髪の毛の乱れを指摘された彼女だが、普通に取り乱してくれるのが面白い。
 冷静なたたずまいでなうえに、口元を常にマフラーで隠していて本音の読めない彼女だからこそか。
 からかって楽しいというのは、余計に親しみがわく。
 あたふたするアルテミスに、軽い口調で冗談だよと告げてやる。 

 「わっ我が主、そういう冗談は……」
 「おいおい、たいした冗談でもないだろう? まぁ、あれだ。本題に入ろう、2人とも立ち話する内容じゃないし、席につけ」

 赤面して、普段の抑え目なクールボイスを維持できなくなるアルテミス。
 そんな彼女を横目に私は咳払いし、アルテミス達に本旨を伝えた。
 今回の目的地がフレイム居住区であること。
 そして、フレイムへの潜入方法も伝える。

 「なるほど、外に見える残骸はそういうことでしたのね? では、わたくしが同行なさいますわ」
 「我が主、ならば私が随伴しましょう!」

 状況を把握したらしい2人は、数秒間思案するとほぼ同時に、承諾だという旨の言葉を口にした。
 おしとやかな口調ながら、強い意志を感じさせるカロリーヌ。
 絶対に一緒に行きたいという本音丸出しのアルテミス。
 私は本当に良い仲間をもったなぁ。
 そう思う。

 「いやいや、そういがみ合うなよ。何も1人だけしか連れて行かないなんて言ってないだろう?」

 急ぐほどのことでもないが、ノヴァが早く欲しい私は2人をなだめる。
 私の言葉を2人は聞き入れくれたようだ。
 もともと仲が悪いわけでもないアルテミスとカロリーナは、それ以上口喧嘩をすることもなく、席を立つと各々の準備をしに自室へと向かう。

 「さて、と。ハル、ジギンド、オデッサ……」
 「へぃ、クリミア姉さん!」

 方針は固まった。
 私も準備をしないとな。
 まぁ、私の場合はある程度準備はしてるので、武器を取りにいった彼女らほど時間はかからないが。
 立ち上がり際、部下達声をかける。
 唯一反応を見せたのはハルだが、他も聞こえているだろう。
 難聴をわずらっているわけでもなし。

 「帰還するまで、任せた——」

 そう言うって私は操縦室を出る。
 ここからは、すぐに終わるさ。
 もう、ゴールは見えた。
 待っていろノヴァ、私は今からお前に会える幸せで舞い上がっているぞっ。
 
 
 End

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