ダーク・ファンタジー小説
- Re: ラストシャンバラ〔B〕 最後の楽園 4/17 更新! ( No.34 )
- 日時: 2013/05/01 19:09
- 名前: 風死 ◆Z1iQc90X/A (ID: 68i0zNNK)
- 参照: 今回から1レスの文字数を減らしました
ラストシャンバラ〔B〕 ——最後の楽園—— 第1章 楽園への鍵
第1話「ヴォルト・ジルという男に出会う」 Part7
「どうしますか我が主?」
「どうしますって、どうしますもこうしますもないだろう?」
想定外の事態に戸惑うアルテミス。
そんな彼女に私は告げる。
想定害だろうがなんだろうが、結局私等海賊だぜ。
やるこたぁ同じだろうがってな。
アルテミスは溜息を1つつく。
そして、愚痴をこぼす。
「貴女に聞いた私が馬鹿でした」
「そういうことさ。では、私から行こう」
私はアルテミスの言を無視し走りだした。
そして、目標をすぐ補足する。
なぜアルテミス達を制止して、自分から行ったのかは明白だ。
アッサーマン氏の息子に興味があったから。
ただそれだけ。
時間的には存分にあるし、遊ぶことくらい許されるだろう。
「見付けた」
視界にノヴァとアッサーマン氏の息子そっくりな青年が映る。
青年の目は彼と同じ青で、髪の色はブロンズ。
中肉中背で物憂げな表情がアッサーマン氏とそっくりだ。
服装のセンスはヘヴィーメタル系で、彼と比べると落ち着きが足りないがそもそも半分も年を取っていないはずで、沈着さが足りずとも当然と言えるだろう。
一方、その青年に寄り添う少女は相当の美人だ。
横にまかれたツインテールと、夜の帳にも似た漆黒の髪が特徴的な活発な少女。
だが機械の間違いでなければ、間違えなく彼女はノヴァ。
生物ではない。
では、始めようか。
相当青年はノヴァにご執心だが、どういう行動をするかな。
私はアイドル候補を探すスカウトマンのように、青年達に歩み寄る。 ちなみに私の服は自分の意のままに、姿かたちを変えることが可能だ。
すぐさま王手アイドルグループスカウトマンの正装をよそおう。
ちなみに相当高くて、わりと故障しやすいのは難だ。
「そこの君! そこのツインテールの君だよ!」
「ほぇっ?」
ツインテールの少女は、突然の声に驚いて可愛い声で鳴く。
私は間髪いれずに続ける。
「そうそう、君だよ君! いやぁ、溌剌(はつらつ)とした笑顔、綺麗な肌に可愛らしい声! 私はまさに君のような存在を求めていたんだ。どうかな?」
「どっどうかな、とは?」
どうやら意外なことに、余りスカウトとか受けたことが無いのだろう。
少女の姿をしたノヴァは戸惑い、頬を赤らめた。
そこに青年が割ってはいる。
「ちょっと待てよ。あんた何者だ? ノヴァをどうする気だよ、しらばっくれるんなら1つ教えてやるぜ! この区にココルギネアのスカウトマンが来るとかありえないってな」
「へぇ、意外と警戒心が強いんだな。フレイム居住区の連中はかなり警戒心が緩いって、ある人から聞いたんだけどなぁ」
へぇ、そういうことか。
てっきり、女を取られたくないとかそんな感情で止めに入ったのかと。
成程。
この区は勧誘誘拐対策に有名会社の参入を、なるべくできないように制限しているんだな。
そしてこの青年はすぐにココルギネアの制服を見破った。
このフレイム居住区じゃ珍しいはずの、ともすればただのスーツにも見えるこの服装を。
さて君が食らいつくべきフレーズを私は出したが、青年よどういう反応をするかな。
見物だ。
「なぁ、あんたある人から聞いたって言ったな? 誰だ!?」
よし、正解だ。
戸惑うノヴァを心配させないように、抱き寄せているところも高得点だぞ。
「おい、答えろよ!」
青年が沈黙に耐えかね声を張り上げる。
フレイム居住区、ここには1つの宇宙記録があるのだ。
それは年間で他の星に移動する人間が最も少ないということ。
私は含み笑いをしながら唯一言。
「アッサーマン」
「親父……だと!?」
青年の目が大きく開かれる。
動揺がありありと伝わる驚きよう。
そして、こぼれる無意識の言葉。
「やっぱりか、君はヴォルト・ジルだな?」
End
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