ダーク・ファンタジー小説
- Re: ラストシャンバラ〔B〕 最後の楽園 4/28 更新 ( No.37 )
- 日時: 2013/08/14 21:35
- 名前: 風死 ◆Z1iQc90X/A (ID: 68i0zNNK)
ラストシャンバラ〔B〕 ——最後の楽園—— 第1章 楽園への鍵
第1話「ヴォルト・ジルという男に出会う」 Part8
「どういうことだ、何であんた俺の名前をっ!?」
瞳孔を全力で見開いて少年は怒声をあげる。
どうやら冷静を失ったようだな。
答えはすでに言っているはずだが。
「その発言は可笑しいだろう? 私は君の父親と仲が良いんだよ」
「あんなっ、あんな奴は父親じゃない!」
何の感情も伴(ともな)わない声で私は質問の答えを提示した。
どうやら随分息子さんには嫌われているみたいだよアッサーマン氏。
はぁ、正直、血統なんてのは否定するだけ空しいだけだと思うんだけどな。
分かりはするよ。
大量殺人鬼や社会のクズが親だって言ったら、そりゃぁ否定したくもなるさ。
面白そうに笑ってみせると、ついに彼女気取りのノヴァが口を開いた。
結局のところ1人の青年をからかっているだけにしか見えんからなぁ、今の私。
「ヴォルト!? なっ、何なんですか貴女!? いったい、私達に何のようなんですか!」
「あぁ、実際に用があるのはあんたの方なんだがな?」
「何で!?」
私に恐怖があるのだろうか。
随分と声は震えているが。
全く何と出来の良いアンドロイドだよ。
しかし、どうやら自分を普通の人間と認識しているコイツは、自らがどれほど重要な存在か気付いていないらしい。
1歩足を進める。
危険を悟ったのかヴォルト・ジルが喚くノヴァの手を強引に握って走り出す。
「ノヴァ、逃げるぞ!」
「ちょっ、ヴォルト!?」
戸惑うノヴァを無視し阿修羅のような形相を浮かべて、一目散に黄色い燐光を放つ円形の何かへと吸い込まれるように。
「ほぉ、テレポートマシン。まぁ、君達がどこに行こうが逃げ切ることなんてできないと思うがな」
どうやらその円形の正体はテレポートマシンだったらしい。
改めてこの居住区の技術は凄まじいなと感動を覚える。
やけに飛行車両やバイクといった車両類が少ないと思っていたが、交通事故を起こさないほどにテレポートマシンが設置されているからってことか。
最も。
私にはテレポートのアドンを保有しているし、この探索機が有る限りノヴァを逃すこともなく。
すでに積んでいるなど、考えたくも無いんだろうな。
それで良いんだよ。
人は認めたくない現実から目を背ける生き物なのだから。
アッサーマン氏の息子ということで期待していたが、実際こんなもんだよ。
むしろ上出来だったといえる。
さて、縁もたけなわ。
遅れてきたアルテミス達も到着したようだし。
次の接触で最後の試験と行こうか。
「我が主、ガルガアースに入ってから10分が経過しています。そろそろ遊ぶのも止めた方が良いでしょう!」
やれやれ、こちらの思惑に少しは合わせてくれよ。
いきなり説教ですか。
「我が主、ガルガアースに入ってから10分が経過しています。そろそろ遊ぶのも止めた方が良いでしょう!」
「分かってるさアルテミス、だがもう少し粘っても良いじゃないか?」
はぁ、ボスの駄々は聞くものだぞぉアルテミスぅ。
ほらさ、リーダーの気紛れを得ることができるのは、そういう空気読む奴だ。
私の我侭にちっとも分かっていないと不満げな表情を浮かべるアルテミス。
「そういうの分かってるって言いませんわよクリミア?」
当然のようにカロリーナからも突込みが入り。
もう私完全アウェーだが。
やっぱり、気になったことを無視するのは性に合わない。
「ははは、そうだな。訂正しよう、全然分かってない」
「…………」
「さてと、次の接触で終わりにするぞ」
2人とも、どうやら女ってのは何歳になっても恋する乙女らしいぞ。
こんなリーダーを持ったことを後悔してくれ。
まぁ、そんなこと言っても合理的なつもりだ。
最悪のことは予想して行動しているさ。
やっぱり、小組織のリーダーって最高だよな。
End
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