ダーク・ファンタジー小説

Re: 白黒物語—モノクロストーリー— ( No.13 )
日時: 2012/11/21 22:49
名前: 名純有都 (ID: SfeMjSqR)

【愛しかった時を想う】

【抽象的な物語と君は】

【いつまでも眠るまま】

【そして、その名前は】




第二話 一章 “Now,start with the worst Banquet!!”
(さあ、最悪の宴を始めよう)

 「ヴァロック・シティ」は、ヴァチカンより小さくはないが奇妙に入り組んだつくりの街だ。
 
「————だからこそ、私も逃げ切れるってもんだわ」

 ビルの屋上でひとり、レイン・インフィータ———またの名を、白き悪魔(ブラン・ディアブロ)———は呟いた。
 連続盗は、まず郵便物からはじまり、次は傘や花などになり、次第に事態は大きくなっていった。焦る様子が見ものであると高みの見物をする町長宅の金目のものも盗んでやった。
 そして、急速に風向きは変化した。それは、レインが殺人を犯したことから始まったのだ。 
 

§ § §

 場所は変わって、ヴァロックの中枢。


「おい、電話が入ったぞ」

「また悪魔がやらかしたのか」

「またか————、何をやっておるのだ取締係は」

「しかも、見るも無残な姿だそうだ。いつものことながら胃液が逆流しそうだったよ」

「一番ひどかったのはあれだな、最初のやつ。きれいさっぱり、臓器をツブされてやがんの」

「懇切丁寧に脳味噌までぐっちゃだしな」


「————下品な話はそれまでにしていただこう」


 今までつぐんでいた口を開いたのは、エージィ・トラキアだ。いい加減、こめかみに皺が寄っている。

「おお、すみませんね黒の断罪(ノワール・ギルティ)」

「もしかしたらあの女怪に遭いたかったですかな?なんにしろ、あの美貌だ。」

(…クソな中年共め)

 心で冷たく吐き捨てて一度俯き、口を無理矢理笑みの形にすると、エージィは艶やかに微笑んだ。



「では、御仁よ。貴方がたはその悪魔に内臓を引きずり出され、肺を八つ裂きにされ、脳髄を木っ端微塵にされたというのか?その殺された被害者のように。馬鹿にする程度の下らない幹部なら、俺は今すぐにでも貴方がたを解雇し新たに人を雇いますよ。そろそろ、気楽に話せたもんじゃないということぐらい、皆わかっているはずだと思いましたが」



 痛烈な揶揄。皮肉屋の渾名を持つエージィにはこれくらいお安いもんである。


黙りこくった幹部たちに、彼は明朗な声で告げた。


「今日中に、ハイレンを呼んだ。致し方ないと考えてのことだ。被害者が15名を越した時に、あいつを呼ぶ手筈だったからな」


ざわり。
古株の者はざわめき、新しく入った者は首をかしげる。

ハイレン。


「アルフィス・ハイレン。俺も正直、あいつは気違いだから呼びたくは無かったんだがな————。」


§ § §


『…ザー…ザッ———ピッ
        コードネーム“fish”、こちら“blanc”』

「……コードネーム“blanc”、どうか致しましたか」

 テトラは突然繋がれた無線を、いつも通りに慌てることなく執った。
 盗聴されている可能性があるので、電話や無線はいつだってコードネームだ。

『突然悪いわね。ハイレン、という人のこと、調べてもらいたいわ。男か女かはわからない。情報が入り次第、頼むわ』

「了解。そろそろ探知の電波が届きそうです。一旦切ります」

『D’accord(了解)』

ぶつり、と無線が切れた後、パソコンを目の前にテトラは足を組んだ。




「ハイレン、と言えば、あの人物しかないでしょうね……」









 ブランさんが話すのは主にフランス語だったり、英語だったり色々。