ダーク・ファンタジー小説

Re: 白黒物語—モノクロストーリー— ( No.15 )
日時: 2012/11/25 11:59
名前: 名純有都 (ID: SfeMjSqR)

続きです。


 眼下には、自分の起こした事件の後片付けの場面が広がっている。
 なにかと人は自分の目線より上は見ない。

「『アルフィス・ハイレン』……どういう奴なのか気になるところね」
 
 レインは、そう言って血にまみれたタキシードを脱ぎ捨てた。そして、指紋をつけないように手袋をつけ、盗聴器の母機をそのビルの真下に落とす。この高さだ、十中八九壊れるだろうと見越してのことだ。
 見つかるのが目的だが、壊れていないとまずい。まぁ、なんとかなるだろう。レインはそう思ってから、秀麗な唇をゆがめた。

「…エージィ・トラキア。貴方の観察眼は、だいぶ濁っているようね。

———盗聴器と間諜(スパイ)くらい、余興程度に見つけてみれば私も貴方の大切なモノなんて奪わないのに」

 レインはひらりとビルとビルの間を飛び越えた。羽のように、その白く輝く髪が舞った。

 母機が落とされた場所、それは———“シュヴァルツ・クロウ”…エージィの所属する探偵事務所である…………。