ダーク・ファンタジー小説

Re: 白黒物語—モノクロストーリー— ( No.20 )
日時: 2012/12/17 21:39
名前: 名純有都 (ID: jmwU8QL1)

第四章 A sity wrapped B & W
   (街は白と黒に包まれて)



どうか神様、あの大切な人を忘れさせて。
未練なんていらない、思い出もいらないから、だから、



———捨てさせて。誰かに縋るような、私の弱さを。








「これに限らず、可能性はinfinity———つまり無限ですよ」

「でも、それならこの街の人間じゃない、ってことに……?」

 ヘイリアが、急に核心をついた。エージィはにやりと笑って言う。


「そーいうことだ。…まあ、俺が思うのは、白き悪魔(ブラン・ディアブロ)もどーせこんなことで白旗なんて揚げないだろ」


「そもそも、何がしたくてそそのかしたりなんかするんです?「ヴァロック・シティ」を混乱させるため?それとも、
——————そうか。なぜ、私はこの可能性を、疑ってなかったんだ」

ヘイリアは、既にリョウとエージィが辿りついていた答えに触れた。
だが、顔色はかんばしくない。当たり前だ、なぜならその答えは……。


「元から、白き悪魔と対になる存在の、エージィさんを狙って、催眠を解いたのか——————!!!」


 襲われたのは、『特定された』家屋。……“シュヴァルツ・クロウ”だけが、その犯行の対象。無差別ではない。


「そーだ。お前にしてはイイ答え。だが少しずれてるな。それはただ誘導しただけだ。完全に催眠は解かれていない。単に、白き悪魔の催眠は強固じゃなくて、しかも俺相手には全く掛っていない。…それは、今俺があいつの顔を覚えていられることにも、繋がっているはずだな」

「そうでしたね……。彼女、確実に面白がってエージィさんだけ妨害していないから」

「つまるところ、白き悪魔は俺の事柄に関して全部緩くしておいた。それこそ、催眠のたぐいで。たぶん、こんなことも起こるのを予測しておいた上で。
 だから、『この事を知っているか、俺と白き悪魔との干渉を避けたい人物』が、自分の手を汚さずに他人に全てを教えて誘導した。…そいつは、容量オーバーでパンクして言われた通りここまで来ただろうな。
 だが残念、俺は中枢に行って会議中」

「あの白の中毒女、どう考えてもエージィのこと余興程度にしか思ってないよね。……あの頼まれていた報告書、一応シティ管理局に送った。
間諜(スパイ)だった?それと、何回かにわたって取り付けられてた盗聴器も回収済み。
 報告書はヘイリア、盗聴器は俺。感謝して崇めたてまつれ」

語尾に星がつきそうなリョウに、あのな、とエージィは告げる。



「俺、一応上司」

「…………ざまぁ」

「ヘイリア、君人のこと言えないでしょ」



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「……今、「ヴァロック・シティ」は一般人が入ることを禁止されている。即刻、退去を要求する」

 がたいのひとまわり大きい男にすごまれても、プラチナブロンドの美しい髪を流す青年は笑みをたやさない。それどころか、さらに笑みを深くして見せる。

「アルフィス・ハイレン。入国パスは、「ヴァロック・シティ」の市長から免除済みだから」

 彼がちらりとその『印』をちらつかせると、警備兵は突然恐れ多いといったようにかしこまる。

「……は、はっ!失礼いたしました。法皇様のご友人でしたか!どうぞ、お通り下さい。」

「—————誰があいつの友達だよ。僕は、無理矢理お目付け役に抜擢されちゃっただけだってば」

「……は?」

「いいや、なんでも」

 また能面のような微笑みをはりつけてから、アルフィスはその門をくぐった。彼の本質は、この街にある。

 —————————やっとあえるね、ブラン・ディアブロ。

 無邪気な狂気をにじませるその無垢な眼は、やはり異様だった。