ダーク・ファンタジー小説

Re: 白黒物語—モノクロストーリー— ( No.9 )
日時: 2012/11/14 22:33
名前: 名純有都 (ID: SfeMjSqR)

世界と白ウサギの続きです。

「ヘイリアぁ、報告書」

「急かすんだったら手伝えッ馬鹿上司ィ!」

 心ない催促にヘイリア・ハイレンは思わず叫んだ。
筆を叩きつけた拍子にぱーんと小気味いい音が鳴る。「ははは」と気にせず読めない笑みを浮かべる男の顔を思いっきりにらめつけた。

「上司って認識あるなら馬鹿ってないな、ヘイリア」

「馬鹿は馬鹿であるから馬鹿なんですよ!馬鹿=あんたですよ!あと、名前で呼ぶな寒気がするッ!!」

「四回も馬鹿って言ったね。後それ別に三段論法でもなんでもないよ?

        ・・・・・・・・・・・・・・・・・
ついでに言うと、君が嫌がるから名前で呼んでるんだよヘイリア」

 真性の馬鹿とは、頭脳とかではなく行動が馬鹿ということである。

 この男、リョウ=サガミが馬鹿呼ばわりされるもっともな所以(ゆえん)たるや、今までの生活を振り返ってみるといくらでも浮かんでくるほどである。
 
 ……つまり、変態ドサド怠惰×美形(仮面)=女の敵、というわけだ。
 簡潔に言う。ヘイリアはリョウが大嫌いだ。

「気持ち悪っ!?今本気でこの仕事辞めようかと思いましたけど!」

「是非とも辞めてくれるとありがたいな。俺もこんなに馬の合わない女は初めてだよ。今はエージィがいないから、ヒラ社員つまり下っ端の君が仕事を押しつけられるのは当たり前だろ?でもって、それをさっさと処理することで今の俺の位置に居られるんだから」

「エージィさんを山車(だし)にするのは無しです!!大っ体、『こんなに馬の合わない女』ってなんですか!まるで、今までおとせない女はいなかった、みたいな言葉ですね?」

 ヘイリアは改めてその東洋系の顔立ちをながめた。リョウ=サガミ。背は一般の欧米男性に比べて低い。ただしその顔立ちは不思議なくらいに甘く、きっと多くの難攻不落な女をたやすく落としてきたのだろう。

 だからこそ、囮調査ができるってもんだが。

「当たり前だ。じゃなきゃ、探偵になろうとも思わないからね」

 「ヴァロック・シティ」に限らずイギリス各地で活躍する、浮気調査の新星。日本にいるより、イギリスという新天地で働きたいという思いできたと本人は言っているが……。

「どーだか」

ヘイリアは冷たく吐き捨てて気合いを入れ、再び筆を執った。



世界と白ウサギは何回かに分けます。