ダーク・ファンタジー小説
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- 君と僕の歪んだ世界
- 日時: 2012/12/06 21:32
- 名前: 狐浅 (ID: q4IWVUNW)
お初にお目に掛かります狐浅(koasa)と申します、
以後、お見知りおきを。
目次
prologue 異様な異能>>01
第1話 非現実との出会い>>04>>05>>06
キャラ設定(随時更新)>>07
お礼>>08>>09
- Re: 君と僕の歪んだ世界 ( No.1 )
- 日時: 2012/12/02 15:21
- 名前: 狐浅 (ID: q4IWVUNW)
prologue
頭が痛かった。
ズキズキと形容し難い痛みに頭部を襲れて狂いそうだった。
気を抜けば吐き気を催すような痛みに顔を歪め、生理的な涙を目に浮かべながらも、男は夜の暗闇を走り続けていた。
まるで何かから逃げるように、
まるで何かを恐れるように、
痛みなどで歩みを止めている暇などないとでも言うように。
「はッ、はッ、はッ」
足を縺れさせながらも男は走る。
乱れた呼吸音だけが暗闇を、空気を震わせる。
「なんで何で何で何で何がどうなって俺が如何して何が如何して俺は」
狂ったように何度も何度も呟き続ける。
それが激しい混乱からか、もしくは何かに対する恐怖からかは分からない。
「死にたくない死にたくない死にたくない死にたくないんだよぉッッ!!!」
呟きながらも必死に足を前へと進める様は異様に異常だった。
血走った目は闇の中でも輝いていて最早人間というよりは獣に近い。
しかし、濡れたような異様な光を纏った瞳は明確な恐れを浮かべている。
「そんなに急いで何処いくんですかねー?」
「うぁぁぁああああぁぁぁあぁああああぁぁあああッッ!!!」
急に、男に背後から声が掛かかった。
その声に電撃が走った様にビクリと男の体が揺れ、大袈裟なほどの悲鳴を上げる。
雲に隠れていた月が徐々にその姿を現し始める。
暗闇に薄い光が輝き、男の姿が浮かび上がらせる。
男は酷く乱れた服装で髪も汗でびしょびしょ、おまけに頬が何者かに殴られたかのように腫れている。
ガクガクと体を震わせながら恐怖に顔を歪める様は酷く滑稽に映る。
唇をパクパクと開閉させながら闇を見つめる男に陽気な声が再び声を掛ける。
「んー?ナニその反応?え、俺もしかして悪者扱い?ひっど」
男を追いかけて来た何者かが少し不機嫌そうに声を発する。
「な、なななな何でお前が俺を如何してお前は俺が何で何で何で」
「ちょっと落ち着いてー?はい深呼吸スーハースーハ」
月に照らされた何者かは酷く華奢な少年で、男の何倍もか弱く見えた。
なのに主導権を握っているのは明らかに少年で、怯えているのは明らかに男である。
少年の軽薄な金髪が揺れる、無造作に伸びた髪は切るのも面倒くさいのか肩に掛かる様な長さになってしまっている。
瞳は男と同様に獣のように鋭く言い知れぬ威圧感を放ち、男を威嚇しているようにも見える。
「ふ、ふざけるなぁぁああッ!!」
唾を吐き散らしながら男が吼える。
羞恥で顔を真っ赤にしながら吼える。
少年はそんな男を見下した目で見つめながらため息をつく。
「アンタさー、今の状況分かってる?理解してる?それとも知ってて言ってる?馬鹿なの?死ぬの?」
面倒くさそうに少年は男を蔑む。
「ふざけるなといってるだろうがぁぁぁぁあああああぁぁぁあッッッ!!!」
男は恐怖なのかそれとも怒りなのか分かりもしない激情を奇声と共に少年にぶつける。
「何が馬鹿なの、だッッ!!ふざけてるのはお前だろうがッ、がッ!?が、がぎ、があッ!?」
男の咆哮は少年の攻撃によって途中から悲鳴と変る。
いつのまにか男の指が二つ、消失していた。
欠落部分からはおびただしい血が出ており、酷く生々しい。
「あのさー、さっきから五月蝿いんですよねー、ちょっと黙っててもらえます?」
黙ってれば、直ぐ終わるんで
少年は男に歪な笑みを向け、男に一歩近づく。
「ひ、ひぃっ...!!」
それだけで男はズリズリと後ろへ後退し、失った部分を庇うように後へ回す。
「だ、だれか、だれか助けッがッ」
バヒュッと軽い音を立てて男の喉が破れる。
その瞬間に男は絶命し、白目をむいて地面に倒れる。
ベチャッ
喉の一部分だったものが男の下敷きになったのかつぶれた様な不快音がなる。
少年はつまらなそうに鼻を鳴らして、月を仰ぐ。
「あー、
腹減った」
ボソリと呟いて少年はその場を後にする。
その場には男の死体のみが残り、その殺され方は酷く異様である。
そして空には美しい月が、悲劇の幕開けを告げるように爛々と光輝いていた。
- Re: 君と僕の歪んだ世界 ( No.2 )
- 日時: 2012/12/01 19:05
- 名前: 梓守 白 (ID: gfjj6X5m)
はじめまして。
梓守 白と言います。
とてつもなく面白いです!
文才ハンパないッスね!!
分けてほしいくらいです。
表現が大人っぽくて、かっこいいです。
更新頑張って下さい。
- Re: 君と僕の歪んだ世界 ( No.3 )
- 日時: 2012/12/01 20:21
- 名前: 狐浅 (ID: q4IWVUNW)
如何も初めまして。
コメント有難うございます!!
すごく嬉しいですっ!!(笑
文才なんて無いですが、頑張りたいと思います!!
梓守さんも頑張ってください!
- Re: 君と僕の歪んだ世界 ( No.4 )
- 日時: 2012/12/02 15:17
- 名前: 狐浅 (ID: q4IWVUNW)
first chapter :非現実との出会い
神様ってのは存外不公平だと思う。
世の中には天才もいれば無能もいるし、
頭が良い奴もいれば馬鹿な奴もいる。
恵まれてる奴もいれば恵まれてない奴もいるし、
不幸な奴もいれば幸せな奴もいる。
俺はどちらかと言えば馬鹿だし、恵まれてもいないと思っている。
母は俺を産むときに死んだし、父は俺が5歳の時に死んだ。
現在は親戚の家で居候生活を送っている。
俺はそれを一度も不幸だと思ったことは無い。
周りの大人たちは決まって俺の事を「不幸」だの「災難」だの「可哀想」だのいうが、正直止めて欲しい。
俺自体はそう思っていないのだから。
要するに俺が言いたいのは、神様に対する不満だ。
確かに世の中全てが公平じゃ成り立たない。
必要な不公平だってあると思う。
だが、一つ良いたい。
————異能者と無能力者という不公平は必要なものだったのか、と。
* * *
季節は春。
麗かな日差しが俺の上に降り注ぐ。
気持ちの良い朝だな、と俺は思った。
(これで学校という面倒くさいものが無ければ最高なのに)
はぁ、とため息をついて頭を掻く。
自分で言うのも何だが、俺は若干引きこもり気味なのである。
しかし、何が楽しくて毎日毎日早く起きて学校などに行かなければならないのか、と心から疑問に思っている時点で「若干」ではないような気もするが。
俺、藤崎臣は青春の盛りである高校生という時期でありながら、退屈な日々を過ごしていた。
「臣くーんっ」
明るい陽気な声が俺の名前を呼ぶ。
ブンブンと手を振りながら笑顔を浮かべて俺に駆け寄ってくる少女に俺は視線を向けた。
立花婁依、それが彼女の名前。
いつも笑顔で明るく、ショートカットの茶髪を揺らしながら笑う。
面白い奴でもあるし、幼馴染ということもあってかやたらと絡んでくる。
俺からしたら色々と勘違いされそうで怖いのだが、彼女自体はその手の話題に興味がないようなので助かる。
「よ」
軽く手を挙げて相手に挨拶する。
日に日に朝の挨拶が面倒くさくなり発言が短くなっている訳では無い、断じて無い。
近くまでくると彼女はへらりとしまりの無い笑顔を向ける。
「臣くん一緒に学校行こ」
そういって俺の返事も聞かずに手を引いて歩き出す。
変なところが強引だよなーと一人思う。
いつもどうりの光景。
いつもどうりの日々。
(ほんと、飽き飽きする)
心の中でため息をつく。
変凡な日々は平和だけれど、刺激が無い。
恋愛でもすれば別だろうけど好きと思える相手もいない。
何か、
何かきっかけがあれば、
何か、
きっかけが————。
「ッきゃ!?」
「ッ!?」
前を歩いていた婁依が誰かとぶつかって派手に転びかける。
その悲鳴は自分の世界に浸っていた俺を現実へ引き戻した。
「っおい、大丈夫か?」
咄嗟に婁依へと手を伸ばす。
その手を掴んで婁依は体制を立て直す。
「あ、ありがと臣くん、あ、す、すみません大丈夫ですか!?」
婁依は急いで倒れた相手に駆け寄る。
相手は「痛てて...」といいながらゆっくりと立ち上がる。
「んー、大丈夫大丈夫。俺丈夫だから。てかあんたこそ平気?怪我とかしてない?」
長い金髪で、澄んだ紫色の目をした少年はへらりと笑みを浮かべて婁依に話しかける。
丈夫、というわりには華奢に見えるが。
「あっ、大丈夫ですっ友達が助けてくれたので...」
わたわたと顔の前で手を動かす。
小動物みたいだな、と思ったが空気を呼んで発言は慎んだ。
少年は婁依の動きを見て面白そうに笑みを浮かべてから俺へと視線を動かす。
「あんたが友達ー?」
「あ、どーも」
...なんだこの微妙な空気。
てか初対面の人に「あんた」って失礼じゃないか?
むっ、とした俺の表情に気付いたのか少年は首をかしげる。
「んー、あ、なるー。自己紹介しろと?三鷹憂、よろしくー」
「え、あ、どーも、藤崎臣です、よ、よろしく」
何を勘違いしたのか名前を言って手を伸ばしてくる。
その手を握ってこちらも自己紹介する。
更に変な空気になった気がするのは気のせいか...?
三鷹は俺の微妙な表情を知らずにヘラヘラと笑いながら手をぶんぶんと振る。
やがて手を離して婁依に向き直る。
「ごめんねー。ちょっと人探しに夢中になっちゃってって奴?怪我がなくてよかったー。んじゃまたねー」
一人で一頻り喋った後、俺たちに背を向けて歩き出す。
「い、いえっ、本当にすみませんでしたっ」
三鷹の背中に婁依が謝る。
三鷹は振り向かずにヒラヒラと手を振る。
そして一瞬だけ此方に目だけを向ける。
「またね」
小さく呟いて目を細める三鷹に俺は背筋を凍らせた。
本能的に、何故か、恐ろしいと思った。
細めた目が獣のようだったからか、それとも彼が完璧な無表情だったからかは分からない。
とにかくゾッとした。
一瞬紫だったはずの瞳が赤くなったのは気のせいだろうか。
逡巡する俺の後方で何かが割れる音がした。
パリンッ
「ひっ」
婁依の驚いたような怯えたような声が隣で上がる。
「どうした?」
俺も婁依の視線を辿り、割れたものを視界に入れる。
割れていたのは道路に捨ててあったガラス瓶だった。
一箇所が抉れてから大破したようで破片がばら撒かれていた。
「何で」
急に割れたのだろうか。
「分かんない...でも急に割れて...」
落とした訳ではない。
誰も近寄っていなかった。
そもそもどうやってガラス瓶を抉る...?
何故か少年の赤い瞳を思い出だした。
————不吉な、赤い瞳を。
「...とにかく急ごう、遅刻するぞ」
「え、あ、うん、そうだね」
次は俺が婁依の手を引く。
そして思った。
如何してあいつは俺の名前だけ聞いたんだろう。
普通ぶつかった相手の友達の名前だけなんか聞くか?
疑問を振り払うように、俺はただひたすらに学校を目指して走ることしかできなかった。
了
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