ダーク・ファンタジー小説
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- エア
- 日時: 2014/10/06 01:44
- 名前: 龍 (ID: 6Nc9ZRhz)
〜あらすじ〜
宇宙のはてに存在する<異世界>。
ここではひとつの大陸に人々が暮らしている。
神の生まれ変わりとされる王族が彼等をまとめている。
今から15年前−−
悪政をしく王に堪えかねて、王弟が改革をおこした。
それは国民にも受け入れられ、妃は美しさから王弟のもとへ、
王子と王女は処刑された。
全国民が良い国へと変わることを期待していたが、そうではなかった。
ますます治安は悪化し、『悪霊』と呼ばれるものまで出てきた。
−−このままでは<異世界>が滅んでしまう−−
このときに生を受けし、史上最強の魔術師・エアは、この世界を、人々を、自然を、救うことが出来るのだろうか……?
- Re: エア ( No.5 )
- 日時: 2014/10/06 11:37
- 名前: 龍 (ID: 4pC6k30f)
☆第一部 城にて
§1 魔術師エア
「コンコンっ」
執務室を誰かがノックした。
「どうぞ」
と私が言うと、二人の人が入ってきた。片方はビックリ仰天しているが、もう一人−−金髪碧眼の美少女−−はどうしたのかしらという顔をしている。
なぜ彼女たちがそうなったのかは後にして、とりあえず。
「こんにちは、ヘレーネ嬢。私はエア。この国の城づかえの魔術師だ。」
「あっ、はい、こんにちは。私がヘレーネです。」
「君は下がって良いよ。」
メイド−−さっきビックリしてた彼女だ−−はさっと立ち去った。
「そういえばごめんな。ここまで来させるべきではなかったんだが…」
この子は婚約者だ。だから普通なら盛大な催しがあってしかるべきだがそれはこの国の<革命>以前の話で、もし王家の血筋を遺そう者なら間違いなく『悪霊』に狙われてしまう。それに、公にしたところで、妃となれなかった女性たちの妬みからの暗殺を避けるためでもあった。
「あの…何でさっき、メイドさんが驚いていたのですか?」
「あ…あれね…。今、私はこの上着を着ているだろ。」
確かに私は今、長着をきている。藍色の地に魔術師としての証を銀の絹糸で刺繍した、襟などの縁取を銀と空色でした、豪華なものだ。
これは、『神に捧げられし者』の証で、代々作られてきたものだ。
これを着ているときは、王族以外の者は膝まづく決まりが法で定められている。はっきり言って、迷惑極まりない。私は普通に皆と接したいのだ。昔はこの上着をずーっと着けていたヤな奴も居たそうだが。
「………と、いうわけだ。」
「そうだったんですね…。」
「ところで、早速だけど、謁見しなくちゃならんな。城の案内もしてあげるからついてきて。」
私たちは廊下を歩きだした。すると。
「エア〜っ。」
廊下の向こうから誰か−−私を名前で呼べる誰か−−が走ってきた。
「何やってるんだよ、フェレナ」
「え?あぁ〜ちょっとね。って、どうしたの?エア。女の子連れてるなんて珍しいじゃないの。いつも勘違いされるからしないでしょ。」
うん。そうだ。私の立場を利用しようとして恋人とかその類いになろうとする女どもは数多い。私実は女なんで。誘惑とかこれっぽっちも意味がないので!!と叫びたい本当は…って話をそらされた。
「それは後で弁明するけど。とにかく護衛も置いてきぼりにしてなにしてるんだ ?」
「あーそのですね…」
「成人前に弾けてちゃおうという気持ちもわからなくないけど、成人してからは政務が大変だろうし。でも、特に今は『悪霊』が多いんだよ。」
「うぅ〜わかってるってば!!で、そのお嬢さんはどなた?」
「ちょっとな…こっちこい。」
フェレナを引っ張って廊下の隅でコソコソ話だ。
「お前の兄さん、つまり王子の婚約者、ヘレーネ嬢だよ。義妹になるから仲良くしておけ。」
「あら、そうだったの。だからエアに護衛が任されたのね。もう兄さんというお相手がいるから。」
「それもあるけど……立場上都合が良いだろ、私は。」
私は『神に捧げられし者』という称号を得ている。その名を持つものは、結婚や恋愛を禁じられているのだ。だから私がヘレーネを相手にしてもなにもしない事が明らかなので、護衛—つまり悪霊から守ること—を任されたわけだ。
「あ、そうなのね。さ、戻るわよ。ヘレーネちゃんが変な顔で見てるわ。」
私たちはもとの場所に戻った。
「じゃあいくか。またな、フェレナ。」
そして、そのとき。
私は、左手を出した。
- Re: エア ( No.6 )
- 日時: 2014/10/06 11:31
- 名前: 龍 (ID: 4pC6k30f)
私の左手から青い光がさすと、光線となって、フェレナを護衛していた近衛兵の一人に当たった。
「グアッ…ウ…グアアアッ」
それは黒い炭のようになった。命はない。というかもともとない。
それは悪霊だったのだ。
「エア、それ、悪霊だったの?」
無言で頷いた。
「仲間に連絡して処理してもらうから、君たち近衛兵はフェレナを部屋まで届けてくれ。では。」
私はヘレーネを連れてその場を立ち去った。
「なんで悪霊だってわかったんですか?普通の人でしたよ?」
「普通の人が見れば、ね。でも、私や師匠は魔術力が生まれつき強いんだ。だからその力で、悪霊を見分けられるんだよ、ある程度はね。」
「そうなんですね…」
「悪霊が何か、知ってる?」
「ええと…人に有害なことくらい……です。」
「だよね…」
「ええっ…違うんですか?」
「あながち間違っちゃあないんだけど。専門的に言えばちょっと違うんだなこれが。」
『悪霊』を説明するには、まずこの世界の理から話すべきだろう。
人は基本、魂をもって生まれる。寿命を迎え、死んだとき、肉体は滅んでも魂は滅びない。輪廻転生で、また新しくこの世に生を受ける。ただし、このときに前世の記憶を消される。魂には刻みつけられても、この世ではめったに思い出すことはない。このうち、王族はかなり特殊で、前世は神であり、その力を何らかで失った—死んだときにこの世に転生し、王となるとされている。
悪霊はこのサイクルが、現世への—人への—「負のエネルギー」つまり憎しみや満足して死を迎えられなかった事実によって、転生できず、『悪霊』として人に襲いかかる。普通は肉体的なダメージなのだが、レベルが上がると魂をも抜き取るものが現れる。悪霊はレベルわけされており、S,A,B,Cだ。B,Cは人の世に現れて今、人々を襲っているものだ。私も見分けられるし、魔術力が高いので左手の一撃で倒すことができる。しかし、Aレベルは魔法陣を使わねば仕留められない。Sレベルは存在するのはわかっているが、実際にあったことはない。
ちなみに、すべての『悪霊』は闇の神を働かす力と同じ、『黒き力』なのだとか。
「そうだったんですね…」
「さて、ここが謁見の間だよ。私には用はないから、ヘレーネだけに入ってもらう。もし、会話が続かなくても我が師・サーガが何とかしてくれるよ。準備は良いかい?」
「……はいっ。」
「魔術師エア、ヘレーネ嬢をお届けに参りました。」
「入れ。」
私は、ヘレーネの背中を押した。
※ちょっと一言※
ここまで長いですね…まだまだ前置きなんですけどね。
今まで主人公・エア視点でしたが、どうでしょうか?大分男っぽいですよね
ま、男装してるし仕方ないですが。
次回からやっと王子が登場です!!視点がヘレーネから始まって、師匠も来ますよ!!
どんどん城の人が増えて賑やかになります。解説が多いですけどご理解くださいませ〜(*^^*)
このお話、もともと漫画を考えていて思い付いたものです。1年ほど考えていたので思わぬ伏線・謎など盛りだくさんになっています。
主人公・エアや、王女、王子などの人物設定イラストも相当描いたので、機会があればのせたいです。
- Re: エア ( No.7 )
- 日時: 2014/10/06 14:29
- 名前: 龍 (ID: cvsyGb8i)
*
入ると、そこは、凄かった。
家でも見ない、荘厳なシャンデリアに、ツルツルピカピカの床。赤い絨毯が引かれて素晴らしい玉座……に、この国の王子様。
「よく来た、ヘレーネ嬢。」
「はい。これからもよろしくお願いします。」
「おお。あなたがヘレーネ嬢か。」
王子の脇に立っていた、背の高い白髪に白髭の老人が言った。
誰…?
「わしはこの城の魔術師・サーガじゃ。どうせエアから聞いておろう。」
「あなたがサーガ殿ですね。特にエアさんからは聞いてないのですが…。」
「ふむふむ…。何か重要なことがあったと見える。すぐそこにいるだろうから聞いてみ」
「ちょっと待て、サーガ。お前とヘレーネ嬢のための謁見ではないんだぞ。私とヘレーネ嬢だ。」
あ、そうでした…。
「明日から、女性初の城づかえ魔術師として働いてもらう。無論…大変言いにくいのだが…君には魔術力がないので、エアの雑用をしてもらうしかない。今日は城の決まりや生活について学んでくれ。」
「わかりました。」
……………話すことない。気まずいよ…。
「ところでヘレーネ嬢。悪霊は見たか?」
サーガ殿、ナイスタイミングですね!!
「は、はい。先程ですが。エアさんが一瞬でやっつけたので実際に正式な方法では見てないです。」
「ほう…では、見るとしよう。驚くでない。今、エアが悪霊と遭遇したのでな。」
………どうして分かるんですか、サーガ殿?しかもそれを当然のように疑問さえ感じていない王子様もおかしいですよ…。
*
ヘレーネが入っていったあと、私は独りになった。もともと勤務時間帯で人通りはない場所だ。にしても、衛兵が少ない気がする。いくら悪霊からの防衛目的の軍の派遣だとはいえ、城がおろそかでは意味はない。
寒気が走る。悪霊が近づいている証拠だ。
『エア。聞こえるか?』
師匠だ。私と師匠、イレーネはテレパシーができる。ちなみに、人の気持ちを読むことも。
『聞こえてるよ…なんだい?今、悪霊がいるんだ。』
『そのことさ。どうも王子とヘレーネの会話が続かなくてだな。』
『あぁ〜。そんなこったろうと思ったさ。なんせ、次期王として女からさんざんちやほやキャーキャー言われた女嫌いの王子と大人しめ人形さんのヘレーネ嬢じゃあね。』
『それはともかく。二人にお前の魔法陣を見せるから。』
『了解。話のネタにどうぞ、でしょ。』
銀のナイフを取り出した。
普通、悪霊は塩と鉄粉を五角形において、魔法陣を描き、そのなかに悪霊を拘束してから邪気を祓うとされている純銀のナイフ—短剣だけど—で刺して仕留める。
悪霊に気づかれぬよう鉄粉と塩をまくのはもちろん、剣技も必要だ。そのため私はさんざん二刀流の短剣使いとして鍛練を重ねた。普通の短剣でも、この間剣術大会で優勝したのはこの間のことだ。
レベルが低いのか、まともに形を保てないらしい。どす黒い何かはこちらへ来ると飛びかかってきた。私は素早く避けて、足元に塩と鉄粉を置く。対角線上に移動せねば五角形には描けない。左手から青い光—手加減したもの—を出して挑発し、十分ひきつけると、飛びかかってきたのを避けて対角線へ移動した。また塩と鉄粉を置く。これをもう三回繰り返して五角形を作ると、左手を前に出し、
『我が力によって命ず。黒きものを白きものに変えたまえ。この悪をとどめよ。』
と唱えると、ソレは拘束された。あとは短剣で仕留めるのみ。仕留められまいと悪霊は力を出すので、ソレを避けつつソレの心臓—白き力のあるものにのみ見える—にナイフを突き立てた。
「ウガァァァァッ」
ソレは悶えて倒れた。浄化をし、周りを清めて新たに悪霊が来るのを防ぐ。悪霊は仕留められた悪霊によってくるのだ。
『ふ〜っ終わったよ。そっちはどう?』
『二人の目がそっちへ行ったから危機回避できた。ずいぶん派手にやってくれたな。』
『良かったよ。で、そっち言った方がいいか?』
『ああ。』
私は重い扉に向かった。
『開け。』
と、呼び掛けると扉は開いた。魔術の初歩だ。さて、仲を取り持ちにいくか。
- Re: エア ( No.8 )
- 日時: 2014/10/06 21:15
- 名前: 龍 (ID: uqFYpi30)
*
エアが入ってきた。いつも声をかけるよう言うのに、また勝手に開けた。いくら普通の魔術師じゃ魔術で開けられないとはいえ、わざわざそんなことしなくても良いんじゃないだろうか。
「先程の悪霊ですが、Bレベルと見られます。処理し、浄化もすみました。しかし、」
「なんだ?」
「城内の衛兵が少なすぎやしませんか。街の防衛のためとはいえ、本来あるべき場所が疎かでは意味をなしませんよ、王子。」
知っている。私自身よくわかっているのだ。だが、父が失いかけている国民の信頼は回復せねばならない。それに城はさして—これでも—悪霊がでるわけではないが、城を出れば街の中以外恐ろしくて歩けやしない、これが現状だ。
「仕方ないのはわかってるんですがね。私や師匠の力が及ぶ範囲も限られてくるから防衛を完全にするのは難しいんですよ。」
「ところで、城の案内はしたのか?」
「まだしてないよ、師匠。というわけで失礼しました。」
エアとヘレーネ嬢は出ていった。
ほとんど会話していないことに今さら気づいた。
*
エアは無事悪霊を仕留められたようだ。心配するほどでないのはわかっているがなんたって弟子だ。心配しない師匠はいないだろう。
「ヘレーネ嬢はどうだったのだ、セト?」
「大人しい子だな。金髪碧眼はこの辺りで見ないから珍しい。」
「まぁそうなんじゃが。」
この程度の評価だが、誉めてしかるべきだろう。
いつもなら「そんな女いたか?」という最低な(わしが言っていいか分からないがエアならそう言いそうな)フレーズなのに今回はきちんと目を見て会話したし評価した。少なくともヘレーネ嬢は嫌われていないようだ。
「政務に戻らねばならんじゃろうが、もう少しで昼だ。食事の間は行くとしよう。」
「食事の間なんていうセンスのない呼び方をするな。暁の間という名がある。」
わしらはそこへ向かった。
- Re: エア ( No.9 )
- 日時: 2014/10/10 01:23
- 名前: 龍 (ID: QnSr3K5Z)
※
私たちは謁見の間を出て、食堂へ向かう。
もう昼時になるので、城で働く人はみんな—一部を除いて—が食事をするため、食堂へ歩いている。
「よう!」
仕事仲間が声をかけてきた(ちなみにあのうざったらしい上着は脱いできた。)
「これから昼か?てか……その子、どうした?」
「あー…あとでな。先いってくれ。」
「わかった。」
彼は向こうへいった。
「ここの昼飯は面白いんだよ。知ってる?」
「知らないです…。」
「まぁ、ヘレーネならそうだよな。」
ここの食事(三食)はとても変わっている……というより、面白くてアイデア豊かだ。
基本はパンとスープの組み合わせだが、パンが約十数種類あって、スープも約二十種類近くある。それらを好きなように—好みで—組み合わせて食べるのだ。
「へえ〜!!美味しそうですね!!」
「確かに不味くはないけど…。でも、ヘレーネはどんなのを組み合わせるか知らないだろ。ちょっと秘策があるから、ほら、食堂についたから、ここで席とっといてくれ。」
ヘレーネをおいて、私は厨房へ向かって歩き出した…って、な、な、な、っっつ…!!
「フェレナァァァッッッ!!なんでここにいるんだ!!お前は国王さまと向こうで飯を食うんだ!!ここじゃ危ないんだよ!!」
私は怒鳴りつけた。それもそのはず…ここにいないはずの王女様が、ここで飯を食っているからだ。
普通、城—とかその周りに隣接する宿舎—で暮らす人たちは、食堂で食事をする。しかし、重臣や王族はその身が大切だし、働く人たちと同じ、粗末な料理を出すわけにもいかない。だから暁の間という、それ用の部屋で食事をとっている。
だからまず、フェレナがここにいること自体が大問題だ。
「だってさ…どんな食事をしてるかなって。」
「ここで毒をいれても誰がやったかわからないだろ!?うるさいし、人多いし!!だから困るんだよ、君が毒殺されるとかなったら!戻るよ……ってか戻す!!」
「はぁ〜い…」
私はフェレナをずるずると引っ張り、暁の間まで連れていくことにした。
「魔術師エア、フェレナ王女をお連れしました。」
「入れ。」
扉があく。私が入り、フェレナが現れると、席についていた—円卓に座っている厳めしい輩が—こっちをみた。国王を除いて。
「ごめんなさい!!わたし、みんながどんな生活をしているか見てみたかったの!!」
「だそうですので、どうかお許しを、陛下。」
そこで、やっと、国王が顔をあげ、私たちの方をきちんとみた。
その顔が、驚愕の色を浮かべている。運が良いのか悪いのか、家臣達—師匠を除く—はこっちをさっきからずっと見ていて、顔色については全く気づかない。
「?」
どうしたんだ…?
『おいっエアっ?!』
『し、師匠!!国王はどうされたんです!?』
『なんだっていいがお前は早く出ろ!!あとで説明する!!』
『わかった。』
これは不味い、早く逃げろと警告が出ている。
「では失礼します。」
文句を言わせず、さっと部屋を出た。
※ちょっと一言※
二日ぶりの更新ごめんなさい!!漫画描いてたら更新出来なかったんです…。
このあと、美味しいお料理解説と、過去が出てきます。なんで使用人とかの料理をスープとパンにしたんでしょうね…?自分でも謎です。朝よく食べるからですかね。
だんだん読んでくれてる人が増えていますね!!過去・未来編までストーリーがありますので(またいってますけど)意外なところに伏線があるかもです!!謎解き気分で(もう少ししたら)読んでもらっても良いですね。ヒントは、時間軸。人物紹を読み直したり、あらすじを読む等すれば、わかるかもしれません…といってもまだまだ謎解きのための鍵が出揃ってませんけどね。
今後もよろしくお願いします!!恋愛要素はほぼゼロですよ覚悟なさって下さい。