ダーク・ファンタジー小説
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- だって僕は君が好きなんだから
- 日時: 2014/12/20 15:25
- 名前: 呉服 (ID: kphB4geJ)
ぎゅっと抱きしめたら、君は僕の腕の中に納まって、その頭に僕は顎を乗せる。
—きっと君は幸福感に包まれているんだろうね。でも、僕はまだ足りないんだ。
ねえ食べたいってわかる?
いや、そういう行為の事じゃなくって…もっと、ほら、本質的な意味でさ。
やっと君とここまでこぎつけた。
けれど僕はまだ満たされないんだ。
ねぇだから、僕がこんなことをするのを、許してほしい。
—どうしてって顔だね。
でも僕のことを好きになってくれた君なら、きっとわかってくれると思う。
ん?どうしてって?どうしてこんなことをするのかって?
おかしなこと言うね。
だって僕は君が好きなんだから。
- Re: だって僕は君が好きなんだから ( No.2 )
- 日時: 2014/12/20 15:55
- 名前: 呉服 (ID: kphB4geJ)
供述2
彼女と一緒に遊園地に行ったときかな、それに気づいたのは。
彼女、怖がりなのにさ、お化け屋敷に行きたがって。僕も怖がりだったから嫌だったんだけど、行ったんだ。
案の定怖くてね、彼女も僕も…え?その時ってこと?うん、20になったばっかりだったよ?……笑わないでくれない?
その時あまりに怖かったんだろうね、彼女が僕に抱き付いたんだ。え?…違うよわざとじゃないと思うけど。そんなにあざとい娘じゃなかったし。……わかったよ、女の人ってそういう技を持ってるんだね?覚えておきますよ、まったく。
僕に飛びついた彼女の横顔が、ちょうど叫びかけた僕の口に当たって、反射的に噛みついてしまったんだ。
そうしたらなんというか…うん、わかるよね?わかんない?そうですか。
僕はその彼女の時も侘びしさに胸焦がれてたんだけど、その感覚が吹っ飛んだんだ、彼女にかみついたら。
でもまだ足りなくて、叫ぶ彼女にお構いなしに耳にかみついたらさ、僕が彼女を襲っているように見えたんだろうね、後からめぐってきたカップルに通報されてさ、誤解は解けたんだけど大変だった。
迷惑だったろうな、って?うれしいね、僕の事かばってくれてるの?あ、彼女の方だって?やっぱりね。君は優しくない。当たり前だろうがって…そんな開き直んないでよね。傷つくじゃないか。
噛み付いた後、しばらく彼女は連絡をくれなかったんだ。当たり前だろうね、いきなり彼氏にかみつかれればさ、驚くからね。
…僕だってそのくらいの常識はあるよ。君、さっきから失礼だね。人をなんだと思ってるのさ?
それで、一週間したら、彼女がまた僕の所へ戻ってきてくれたんだ。なんだかんだ言って僕が好きだったんだろうね。噛み付いたわけを聞かれて、君が好きだったからと答えると、少し怪訝そうな顔をされたけどまたいつも道理に付き合ってくれた。
まぁそうだね、彼女がここで僕に愛想つきてたら、君の言う通り今頃どこかの誰かと楽しくやってたろうね。
でも、彼女は僕を愛してた。
- Re: だって僕は君が好きなんだから ( No.3 )
- 日時: 2014/12/20 16:14
- 名前: 呉服 (ID: kphB4geJ)
供述3
そしてついにあの日がきたんだ。
僕はあれから何度か彼女に甘噛みして、飢えをやり過ごしてたんだけど、どうにも我慢できなくって。
僕の家に遊びに来た時に、外に誘って、月を見ないかって誘って…
あ、あぁ、ごめん。ちょっとあの時のこと思い出しちゃって…まだだめ。落着けないや。
気色悪い?君さ、もうちょっとオブラートに包んでいてくれないかな。君だって女の人抱くとき、こういう風になるじゃないか。俺は人前じゃそんな風にならない?あぁそうですか。かっこつけてりゃいいよ、君なんか。
それで僕は彼女によりそって、深い森の中で月を見上げたんだ。満月の方が辺りがよく見えるし、なにより僕自身まだ慣れてなかったから。
彼女の首に甘噛みすると、彼女はむずがってやめてと笑うんだ。
でも嬉しそうに見えたから嫌じゃなかったんだろうね。
僕が強くかむと、一瞬息を詰まらせた後、彼女が僕をのけようと暴れるんだ。
だけどぼくは吸血鬼がやるように首にかみついたまま、用意してた小さなナイフで彼女の太ももを手探りで刺したんだ。
うん、そう。さすがだね。動けなくするためにね。君の言う通り。
褒められてもうれしくないって…素直じゃないね。
悲鳴を上げて頽れる彼女に覆いかぶさって、僕はやっとその夜、初めて満たされたんだ。
その身体をやさしくかんで、噛み付いて、かみ砕いて…全部は食べられなかったよ。僕より小柄だったけど、40キロ以上あるんだし…残しちゃったけど、僕を十分満足させてくれた。
味?どうしてそんなこと聞くの?聞きたいとは思わなかったけど聞きたいなら—そう、やめとくのね。
それで僕は次の彼女が出来るまで、その彼女をゆっくりと消化しながら幸せに過ごしたんだ。
証拠—?骨?全部僕が食べちゃったよ。あの日余ったものも、すぐに食べて…服とかはさすがに森に捨てたけど…。誰この人?え?どこの森だったか?覚えてるけど、3年も前だよ?もう探してもないでしょ。
一応?…あぁ知ってるのその森?そこの一番奥だよ。あ、もう行くんだあの人。
君はいかないの?僕の側にいるって?ふふ、ありがと。
- Re: だって僕は君が好きなんだから ( No.4 )
- 日時: 2014/12/20 16:30
- 名前: 呉服 (ID: kphB4geJ)
供述4
それから僕は君に出会うまで4人の彼女を同じように食べて、幸せに過ごしたんだ。
でもさ、思わなかったよ?僕の最後の彼女の事を、君が好きだったなんて。
怒らないでよ。だって僕を選んだのは彼女なんだから。君じゃなくね。
でもね、きみが惚れただけの事はあったよ彼女は。
だって僕のこの飢えを知ってなお…僕が愛した人を食らってしまう性質だったってことを知ってもなお、僕を求めてくれたんだから。
彼女と出会ったのは、ここの側だよ。彼女あそこのレストランのウウェイトレスだったんだよ。あぁ、知ってるよねそんなこと。
そこで僕に一目ぼれしたんだろうね、彼女の方から僕に食いついてきたんだ。
まだその時僕は消化中で愛しい彼女と幸せに溺れていたから、彼女に興味はわかなかったんだけど。
愛しい彼女の味を思い出せなくなってきて、どうしてかなぁと考えたら、僕もいつの間にか君の好きだったウウェイトレスに惚れてたんだ。
そして彼女に甘噛みをして、噛み付いて、いざ食べようとしたら、なんて言われたと思う?
だって僕ナイフ持ってたんだよ?なのに彼女こういうんだ。
それでも好きだって。愛する人に丸ごと食べられるのは幸せだって。
僕さ、あのとき感動しちゃったよ。やっと理解してくれる人を見つけたって思ってさ。
ナイフを捨てて外に飛び出して、結婚指輪を買ってしまうくらいにね。
戻ってきたら彼女はまだ僕を待っていて、それどころかシャワーまで浴びてさ、きれいな体で待ってたんだ。
僕は彼女に、泣きながら言うんだ。君を永遠に愛します。結婚してくださいってね。
こんなに僕を最後まで愛してくれた人なんていない。君が大好きだ、愛してる、食べてしまいたいくらいに…。
そうしたら彼女指輪を嬉しそうにうけって、じゃあ食べても良いよって…。
ねぇ泣いてるわけ?
いつも強気であんなに意地悪な君が?どうしたらいいかわかんないよ…。
なにそれ。ナイフ?僕が最後に彼女を食べたときの?
ねぇそれって証拠品だよね。君が独り占めしてたら、操作に滞り出ちゃわない?
…刺したいの?僕を?
いいよ、だって僕は幸せなんだもの。
- Re: だって僕は君が好きなんだから ( No.5 )
- 日時: 2014/12/20 16:44
- 名前: 呉服 (ID: kphB4geJ)
供述5
僕は幸せだよ。この指輪、僕が今してる指輪はね、彼女とおそろいなんだ。
正式にってわけじゃないけど、僕たち二人は結婚したんだ。僕のお腹の中に、このもう一つがまだあるんだよ。
きっとこれからもずっと。だって、僕は最愛の人をやっと見つけて、そしてもう永遠に離れないんだから。
誰がどう頑張っても、もう僕の愛しいあの人を奪えないんだから。僕は永遠に満たされるんだ…だから僕を刺してもいいんだよ?
やめちゃうの?刺さないの?ねぇちょっと、誰か呼ぼうか?君がそんなに泣くところなんて見たことないからさ…。
え、なぁに?・・・・・・・もう一回言って?それ本気で言ってるの?
照れちゃうじゃないか。
僕に食べてほしいだなんて…。
そういう意味じゃねぇって…怒鳴んないでってわかってるって。
え?このナイフで?彼女を食べたときのナイフで食べてほしいって?
……そうだね、いいよ。
でもね、ふしぎだなぁ、僕なんでだろう、最愛の彼女の、あの愛しい彼女の味を…今不思議と思い出せない。
ねぇ、僕は君が好きなんだろうか?
ふざけてる、だって?こんな時に及んで何言ってやがんだって…そんなこと言われてもね。
まぁいいや。それじゃあさ、ねぇ、顔を上げてよ。
僕に食べてほしいなら、その首にかみつかせて。
さすがにきついね。僕よりも体の大きな君を平らげるって…。
吐きそうだけど、戻さないよ。ちゃんと食べてあげるから。
でもさ、もう遅いけどさ、君を食べつくしたら、誰が僕のこの供述を記録するんだろう?
君が僕を逮捕したってのに、君が僕に食べられてどうするのさ。
君が僕に食べてほしいだなんていうなんて、君の方こそおかしんじゃないか?
まぁ、もう遅いんだどね。
ねぇ、でも、おいしかったよ、君は誰よりも。
きっと僕は絞首刑かな?君で5人目の人間を食べたんだから。
でもね満たされたからいいんだよ。
ありがとう、僕の愛しき恋人たち。
- Re: だって僕は君が好きなんだから ( No.6 )
- 日時: 2016/12/20 14:39
- 名前: 通りすがり (ID: OROHjpgn)
なんかぞくってしたのに、引きつけられた…
Page:1 2