ダーク・ファンタジー小説

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『BLACK BLOOD』
日時: 2015/10/22 16:01
名前: ノア (ID: tqRRDXqi)

は、はじめまして。まずは、このページを見てくださりありがとうございます!

今回初めてこのように投稿をしました。ノアと言います。素人でなかなか上手く書けないですが精一杯頑張っていきます。誤字・脱字が多いかもですが、できるだけミスがないようしていきますのでよろしくお願いしますm(_ _)m

Re: 『BLACK BLOOD』 ( No.1 )
日時: 2015/10/22 16:38
名前: ノア (ID: tqRRDXqi)

序論「最初で最後」

周囲は赤い魔法陣に覆われている。
その真ん中で呪文を唱える。呪文に魔法陣が反応し赤黒い光を放つ。

呪文が進んでいくにつれ、身体が重くなっていく。身体に激しい痛みを感じ、悲鳴を上げそうになる。だが、その痛みにはわざと気が付いていないかのように唱え続ける。


疲労が身体に圧し掛かる。
その反対に身体が引っ張られ宙に浮く。どうやら、呪文が上手くいっているようだ。
耳鳴りがすごく、周囲の音を拾うのに苦労しそうだ。
しかし、不思議なことに聞こえてしまう声があった。あいつの声が魔法陣の外から、叩いている音と一緒に聞こえてくる。

「おい!!頼むから!!!頼むから、やめてくれ!!!」

私を止めようと大声を上げる愛しい人。
普段は、上から目線で、頼むときだって、当たり前と言って、押し付けることが多いのに……。こんなときだけ、今の私と同じぐらいかすれてしまった声で頼んでくるなんて卑怯だよ……。気が付くと、頬に涙が流れていた。


だけど、呪文を唱え続ける。
これで最初で最後にしたいから……。口を動かし続ける。

「やめろ!!!聞いているのか!!!!」

彼の方にゆっくりと顔を向けた。呪文を唱えているため話すことはできない。よく見ると、彼の手から血が流れていた。私を止めようと魔法陣を叩いたことが原因だろう。


浮いている錘のような腕に力を入れ、彼の手に重ねる。魔法陣があるから直接触れることはできない。触れることができないことに今まで彼を思っていた感情が込み上げてきた。

彼が私の行動に驚き目を見開く。
それから、何か言うとしているが言葉が出ないのか口を開くだけ……。

そんな彼に微笑もうとするが上手くできたか分からなかった……。
だが、できていないだろうと思う。なぜなら、彼の声を聞いて泣いてしまったから……。本当は、怖くて怖くて仕方ない……。彼のところで泣き叫びたいのに……。
そこで、呪文が完成した。身体がゆっくりと地面に着く。
これで、やっと彼と話すことができる。

「す、優(すぐる)……。」

意識がなくなりそうになる。話したいことがたくさんあるのに……。
そこで何かが手に触れた。閉じられそうになった瞼を開く。

「あ・・とう。・・・よ。さよう・・・」

言葉が続きそうになかった。まだ言いたいことがあるというのに……。
でも、最後に彼に触れることができたのだから良いと思う。
彼が何か言っている。けど、もう何も感じることができなくて……。

「————!!!」

私の意識がそこでなくなった……。

Re: 『BLACK BLOOD』 ( No.2 )
日時: 2015/11/02 16:24
名前: ノア (ID: tqRRDXqi)

第一章「裏の住人」

部屋に響くテレビ音。
チャンネルをかえても大体が同じ内容のニュースを報道している。


女子高校生2年     変死体で発見


その学生は、全身が真っ黒に染まっていた。
彼女からは、血の臭いがしたことから出血死だと思われたが、目立った外傷はなく死体が動かされたり、血をかけられた形跡もない。しかも、その血は本人の血と一致した。死因不明の謎の死……。ただ、黒い血に染まった死体……。

学生の名前は、桜庭 美果(さくらば みか)

彼女の死には私が関係していた。
私と彼女は親友だった……。彼女は、私のせいで死んでしまったのだ。
私たちはいつも一緒に行動し、性格とかは似ているようで対照的でもあったけど、とても仲が良かった。美果は明るく、可愛くて私とは違い、友達も多く憧れでもあった。
だから、彼女と一緒にいることはとても楽しくて、嬉しかった。


なのに、最後があんなことになるとは思ってもみなかった。
あの時の映像が頭の中でフラッシュバックする。雨の中、お互い濡れ続けて、彼女は私の前で黒に染まっていった。黒い血に染まっていった……。


「大嫌い!!!本当に……。私は、あなたを……。」


どんどん黒くなっていく。あの時の光景が目に焼き付いて離れそうにない。
手が黒くなり、足が黒く……。広がっていく黒、止まらない黒……。


無意識に手に持っていたリモコンに力を入れていた。
その時に音声ボタンに当たったらしく大音量に先ほどの映像がかき消される。ニュースは、まだ美果について報道が続いている。だが、それも今だけにしか過ぎない。なぜなら、皆この事件を忘れてしまうから。きれいに何事もなかったかのように消されてしまうから。


美果の名前も、姿、存在自身が最初からなかったことにされてしまうのだ。
それが、黒に染まった者の運命だと言っていた。誰にも覚えられることはできないと、言っていた。だけど、私は彼女のことなんて忘れたいとは思わなかった。覚え続けておきたいと懇願した。そして、教えてもらうことができた。彼女を覚えておくことができる方法を……。


それは、人間をやめること。影となり生活していくこと。
影となると、被害者も加害者も減らすことができるとも聞いたのだ。だが、人間をやめることは、私の存在はなくなるということだ。私を覚えている者はいなくなる。
だが、思うのだ。自分が彼女を覚えておくことができるなら、他の被害者・加害者を減らすことができるなら、私はこの身を捧げようと……。
もう彼女みたいに被害者を増やしたいとも思わない、私みたいに傷つき苦しむ加害者も増やしたくない。後悔はしていない。苦しくても、前に進もうと思ったから。


あの時の映像がまた繰り返される。
不思議なことに彼女が目の前で死んだというのに、私は涙を流すことがなかった。自分は、冷酷なのかもしれない。目の前で動かなくなった親友……。悲しい、辛いと思うのに……。なのに涙が出なかった。


テレビを消し、リモコンを静かに置く。
ゆっくりと立ち上がる、私の進むべき道へ。


「さようなら、美果。さようなら、如月 優(きさらぎ ゆう)。」

Re: 『BLACK BLOOD』 ( No.3 )
日時: 2016/04/22 21:07
名前: ノア (ID: Mg3hHTO1)

第二章「動き出す歯車」

見渡すとどこまでも続く青空。白い雲に暖かい日の光。私、如月優ゆうは風景を眺めながら今日何度目かの溜め息をついた。

前は風景を眺める余裕もなく時を過ごしていたが、今思えば綺麗な場所は近場にたくさんあったのだと改めて感じたのだった。

もう一度溜め息をついた時、突然呼び止められる。気配を感じさせない唐突な呼び掛けに大声をあげそうになるのをなんとか堪える。高鳴る心臓を抑えながらゆっくりと後ろを向いた。

「こっちだ、ついてこい」

その言葉に首を縦に振り、先に進む声の主を追いかける。声の主は、全身を黒の服に包まれ見た目は若い男性の姿である。だが、この男は人間ではない。彼の両目は、赤い瞳。まるで血を流し込んだような赤色……。

しばらくお互いに話をせず歩を進める。男の姿は私にしか見えないのだという。重い空気になるのだが、仕方ない。私は男の後ろをただ静かに歩き続ける。すると次第に辺りは暗いトンネル付近を歩いていた。

周囲に人がいないことを確認し、前に行く男に話しかけた。

「……の」

声がかすれてしまい言葉が上手く出なかった。
それに男は不思議そうに振りかえる。

「なんだ?」

私の言葉の続きを待っているようだ。
だが、男の瞳と目線が合ってしまうと出しかけていた言葉が止まり、全身に恐怖が走る。私は彼の目が怖い。

この目は、すべてを見てしまう。私の黒い奥深い所まで見通しているかのように怪しく光赤い瞳。間近で見続けているとそれは赤黒く感じた。私が、見さされたあの時と同じ色……。私が黙ってしまったせいか男が口を開く。

「そんなに怖がる必要はない。今のお前は染まり過ぎていない。それと……。」

男は言葉を止める。
よく見ると視線を泳がしていた。続けようとする言葉を探しているようだ。そして、小さく溜め息をついた後、男は再び口を開いた。

「ここから先、進めば人間ではなくなってしまう。本当にそれでも良いのか……?この方法を教えたのは俺だが、必ずしも俺たちと同じように生きれるかは……」

「わかってます、私次第ですよね……」

「……。そうだ。もしお前がここから行う試練をクリアすることができなければお前は死んでしまう可能性も出てくるんだ……。だが、今引き返せばお前は人間として生きていられるんだぞ?」

俺はゆっくりと言い聞かすようにそう言った。
まだ生きられる可能性があるのなら、私は生きろと。美果の分まで生きていろと……。


だけど、私はどんなに苦しくてもこの道を進むことを選んだのだ。もうここまで来て引き返すつもりもない。身体に力を入れ言葉を出す。男に返事をかえした。

「ありがとうございます。でも、私は進もうと決めたんです。迷いはありません。」

「そうか……。分かった。お前がそこまで言うのなら俺は仕事をするだけだな……。」

これからどんなことが待ち構えているのだろう。
だが、もう後悔だけはしたくない。男が言った言葉通りに行動する。これから試練が始まる……。

(美果、私頑張ってみるよ……。この先が例え、イバラの道でも進んでみせるから。)

***

辺りは静まり誰もいない。そんな場所に一つの影が薄く笑った。

「待ちくたびれたよ、ゆう。やっとこれで、僕の計画が動き出すよ。君が僕の望むように進んでくれることを祈っておくよ。楽しもう。ゆう

小さく呟いた影はそのまま姿を消した。
ここからゆっくりと、だが確実に歯車が狂い始める。消えた影の笑いは静かだった場所にこだましたのだった。

Re: 『BLACK BLOOD』 ( No.4 )
日時: 2016/11/06 15:17
名前: ノア (ID: ztDxVDAP)

第三章「ベストパートナー?」

「ば、化け物!!」
「お、お、俺たちを殺すなんて……。お、お前は化け物だ!」
 
まだ、幼さの残る少年に言い放つ。そんな言葉など気にもせず少年は冷笑する。
 
「俺が、化け物?何を言っている、化け物は他でもないお前たちの方だろうが!」
 
少年が笑う。壊れたように笑い続ける。その様子に影たちは今までに感じたことのない恐怖が広がっていた。
自分達が消されてしまうという初めての経験。数では、こっちの方が多いというのに……。
 
「あーあ。誰も近づいてこない。じゃあ、こっちから〜」
 
少年が近づいてくる。影たちが後ろに下がっていく。それを見て少年は嬉しそうに微笑んだ。
 だか、それは一瞬ですぐに面白くなさそうに溜め息をついた。それは、動かなかった影がいたから。少年の方をずっと見続ける。恐怖で動かないのではなく少年を威圧していた。
 
「なんだよ?面白くねぇな」
 
不満の呟きを言うと共に動かない一つの影に向かって突進する。それに反応し、二人が交わる。
 
影たちが叫ぶ。やめろ、と。行くな、と。
眩しい光が、二人の間で交差し爆発した。
 
 「白霞びゃっか!!」
 
 ***
 
「あ・・?す・・さん」
 
名前を呼ばれ、意識を元に戻す。久しぶりに見た自分の過去に嫌気がさす。
近くにいる女の方を確認する。まだ、幸い生きてはいるようだ。彼女に溜まっている涙を手で拭ってやった。
 
 「優さ〜〜ん」

と、自分が呼ばれていたことを忘れていた。俺に話しかけてくるアホがあの白髪以外にいたのが不思議に思ったがそれを顔には出さず視線だけ動かした。
 
俺と目を合わせた相手は何が嬉しいのか笑顔で話しかけてくる。
 
「もう、ずっと呼んでいるのに無視するんですから。私落ち込んじゃいますよ?」

「勝手に一人で落ち込んでいろ。俺に構うな。」
 
 話しは済んだと相手から視線を離す。それから、自分が連れてきたゆうを見た。この試練は心次第。その為、いつ終わるのか検討がつかない。
 
「冷たいな〜すぐるさんは。私と話ししましょうよ」
 
まだ、いたようだ。面倒なので、無視を続行してやる。それを見て相手は苦笑いを浮かべる。
 
「じゃあ、こちらから話させて頂きます。私は、かいと申します。話するのは今回が初めてですね?」
 
わざと質問したのか、かいは俺の答えを待っているようだった。溜め息をつき肯定してやる。

答えが、返ってきたことに喜び話続けてくる。そんな様子を見ていると影という同じ存在とは思えないくらい明るいやつだった。
 
「それで、彼女は新しく入るということですね!仲間が増えることは嬉しいですね」
 
結構は、ゆうのことが気になっていたらしい。俺が、答えるより先に低めの声が耳に届いた。
 
かい、仕事。」
 
声の方に視線を向ける。そこには、背の高い真っ赤な髪をした男が俺達の方を見つめていた。男の視線がゆうを見ていた。その視線が少し違和感を覚えたがすぐこちらに戻していた為あまり気にしなかった。
 
呼んだ男にかいは申し訳ないように戻った。だが、俺の方に顔を向けると……。
 
「それでは、すぐるさん。また、お話しましょうね」
 
その言葉に皮肉に返してやる。
 
「もう、うるさいお前とは話したくないがな。」
 
「私は、そういうすぐるさんが好きですよ」
 
「なっ!?」
 
クスッとかいは面白そうに俺を見て手をふった。
先程の二人組を呆然と見送った。まだ、赤と茶が目に焼き付いて離れなかった。
 
「少しは、パートナーに興味を持ってくれたか?」
 
後ろから声をかけられた。振り返らなくてもわかる声に嫌々答えてやる。
 
「持つわけないだろうが。お互い監視する為に作られたものなんかな」
 
「まぁ、そう言うな。意外と良いものだぞ?」
 
「しつこいぞ、白霞びゃっか
 
パートナーなんて、俺には必要ない。これ以上その話はしなくて良いと態度であらわす。重い空気になってしまいお互い黙る。
 
「う……。」
 
その時、嗚咽が聞こえた。慌てて近くにいるゆうを確かめる。薄く目を開けた彼女と視線が合った。試練を無事終了したようだ。
 
すぐる、良かったな。」
 
「あー、そうだな。」
 
それから、新しく入る仲間として紹介されたゆうが、俺のパートナーになるのを自分が知るのは少し後のこと。
 
「あいつめ!」
 
誰がこんな事をしたかは考えなくてもわかった。

あの交差した時に、白霞びゃっかは俺の気持ちを当てた。それ以来、あいつには敵わないと密かに感じていたのかもしれない。
 
「ばーか。」
 
誰に言うわけではなく俺は小さく呟いた。

Re: 『BLACK BLOOD』 ( No.5 )
日時: 2017/06/21 20:10
名前: ノア (ID: Pk3oxKzN)

第4章「受け入れの滴」


最近、パートナーの白霞びゃっかがとても機嫌が良い。なぜ、機嫌が良いのか。それは、長年一緒にいることもあるが、彼自身感情がよく顔に出るから聞かなくても分かってしまう。
 
そんな、少し子供ぽい所を見るとこちらまで楽しくなってくる。笑みを含んだ声で相方に話しかける。
 
すぐるをまたからかって来たの?」
 
「最近、特に面白いからな。ついついいじめたくなる。」
 
そう言って彼は満面の笑みを浮かべる。また、行ってくるとワクワクしながらすぐるの所に向かって歩き出していった。
 
「程々にしないと嫌われるよ」
 
「心配はいらないぞ、沙闇さくら。なんたって、もう嫌われてるからな!」
 
どや顔してくる相方に吹き出し爆笑したのだった。
 
それから、一人になって少し考える。白霞びゃっかすぐるのことが気になってるみたいだが、自分の方は今回新しく入った子が気になってしかたない。
 
ゆうちゃんだったかな?お互い同じ漢字のパートナー通しも面白いけど……。」

彼女の表情や仕草それがなぜか頭から離れない。白霞びゃっかから紹介を受けたとき自分でも驚くほど胸が高鳴った。頭の中には疑問が浮かんでは消えていく。
 
「……。ゆうちゃん、どこかで会ったのかな……。うーん。」
 
なかなか思い出せないもどかしさを感じながら気分転換に散歩することにしたのだった。
 
***

その頃、私の相方はとても機嫌が悪かった。聞かなくても同じ場所にいたのだから当然ではあるのだが……。
 
「あいつは、暇なのか……!」
 
怒りで声が掠れて言い放つすぐるに何を返して良いか分からずただ静かに聞くだけに留める。二人はとても仲が良いように見えたなど言えば、今は火に油を注ぐようなものである。
 
「その通り!俺、今暇なんだ。よく知ってたな、嬉しいぞ」

「出てくんな……!」
 
「俺が来て嬉しいくせに〜〜。」
 
先程と同じように言い合いをし始める二人を眺める。
すると、二人の口論は次第に激戦に発展しこのままでは、自分の方に火の粉が降りかかると判断した私はその場から静かに立ち去るのだった。
 
立ち去った場所の近くに女性らしき姿が見えた。白髪で、背の高い女性、それでいてどこか優しい雰囲気を漂わす。後ろ姿しか見ていないのにその人物は私に懐かしいさを与えてくれる。

 
女性が、こっちを振り向いた。目が合い会釈する。なぜか、緊張している自分に驚きつつ彼女の隣へと移動した。

ここに来てわからないことが山のようにあった。これからどうすれば良いのか不安が募るばかり。少しでも知識が欲しい私は彼女に話し掛ける。
 
沙闇さくらさん、私はこれからどうすれば良いんでしょうか……。すぐるさんは何も教えようとしてくれなくて……。」
 
明白な答えが欲しいわけではなくただ思うことをそのままに話す。
 
「自分が、どうしたいのかって感じだろうけど〜。ここに来たばかりだからわからないことが多いのね。」
 
「はい……。」
  
沙闇さくらは、私の方をじっと見つめてくる。その視線に耐えきれなくなる。すると、彼女の目が少しだけ柔らかなものに変わった。
 
「まずは、ここの説明もしてあげる。けど……。一番最初にゆうちゃんが我慢していることをやめたらかな〜。」

「私が我慢していること?そんなのないです!」

予想外のことを言われ戸惑う。そんな時私の頭に優しく手が置かれた。そのまま上下に手が動く。
何故だろう?こんなにも安心できるのは……。温かく感じるのはどうしてだろう?
 
そう感じると共に頬に濡れる感触が伝わる。そのまま、腕を引かれ沙闇さくらに体をあずける。

「泣くことは悪いことではないわ。我慢することはないの。」

頬に伝う滴は次第に増えていく。そして、声までもが漏れてしまう。

確かに我慢していたのだろう。自分の意識がある中では泣くことはなかった。無意識の時は常に流していたというのに……。

どうして?それは、自分が一番分かっていたくせに気が付かないふりをしていただけ。
泣いてしまうと本当に彼女はいないのだと認めているようで……。一緒にいたあの彼女はもういない。そんなこと認めたくないのに事実は変わらない。そして、それを受け入れているかのように私の涙は尽きることもなく流れていく。
 
大声で泣いている私の声に沙闇さくらが小さく呟いた。
 
「あ〜、似てるな……」
 
その呟きは歯車のパーツの一部。
私は泣くばかりでそれには気が付かない。


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