ダーク・ファンタジー小説
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- 創造のクロス 神よ、テンシとアクマよ
- 日時: 2016/07/17 20:51
- 名前: 狂yuki (ID: fiow63Ig)
1200年フランス キリスト教とソロモン教…この二つの宗教が
ヨーロッパを支配していた時代
天使は何故愛される?悪魔は何故憎まれる?
それら全てを神に任せていた時代。
そして、神に苦しめられた二人は運命により出逢った。
これは、神の時代のヨーロッパから始まり、
神童の名が轟く、「審判」で汚れた世界に終わる、壮大な物語である。
ネール・アルトリア。彼は非常に裕福な家系のフランス貴族だった。
しかし、父親の代で没落し、いまでは名だけが残る、下級貴族だ。
ネールは、ある日、キリスト教徒として教会に召集され、
そして、選ばれた。
「神の子として戦う戦士」に。
その頃流行していたソロモン教の教徒が、キリスト教の聖地パレスチナを占領したから、奪還するという目的だ。
ネールはアルトリアという名家に生まれたからか、
没落しているとはいえ、聖地奪還軍の中でも優遇されたが、
剣の才能があったため、さらに優遇されていた。
部隊を率いるキール・ウェスタはネールを気に入っており、何時間も訓練時間を与えた。
1232年 パレスチナ付近
「今日でパレスチナは奪還される!ソロモン教徒どもは死ぬ!神の加護は我々に!」
キールの掛け声に、多くの絶叫が応える。
この勢いなら勝てる。ネールもどこか、そう慢心していた。
…まさかソロモン教徒に、あんなところで逆転されるなんて、誰が予想出来ただろう?
ソロモン教徒との戦いに参加していたのは、ネールと同級の騎士たちだ。
マルクス・セレアン、ダレス・ヴァルト、そしてネールの忠実な部下であるカール・フランシス。
誰もが勇敢で優秀で、強かった。フランシスは貧しい家柄に生まれながらにして
今や教皇に知られるほどの大物になっている。
「まずはパレスチナに行き、それから……」
神のため、天使の勝利を宣言するのだ。
続く
- Re: 創造のクロス 神よ、テンシとアクマよ ( No.1 )
- 日時: 2016/08/20 16:10
- 名前: 狂yuki (ID: fiow63Ig)
パレスチナにたどり着き、ソロモン教徒との戦いが始まった。
その時すでに、彼等は下級騎士6000人を失っていた。
飢えや戦死だ。戦死は光栄とされていたが、一方で飢え死には惨めとされていた。
ネールは百人以上殺した。しかし、妙だ。上級騎士と見られる騎士が一人もいない。
「ぐああっ!」
後ろで声がする。おふざけ者のマルクスが剣で腹を貫かれていた。
「…チクショウめ!どうせ…死ぬなら…やりたい放題やっときゃよかったぜ………!」
そう言って、目にもとまらぬ程速い剣を敵に降ろす。
三人程を殺し、腹の剣で後ろから襲ってきた兵士の首をはねとばし、そのまま倒れた。
マルクス…君の分まで戦わせてもらうよ。
同期の死が彼を熱くした。一閃で6人同時に殺した。
そして、突撃してくる兵士の剣を自分の剣と絡めて払い、
その剣を奪って弓矢を斬り落とし、串刺しにした兵士を蹴飛ばして別の兵士にぶつけ、
首を斬り落とし、騎馬の頭を刺し、足を斬り、
…そして、ソロモン教徒をほぼ全員殺した。
仲間も、その大半が死んでいた。
続く
- Re: 創造のクロス 神よ、テンシとアクマよ ( No.2 )
- 日時: 2016/09/15 16:00
- 名前: 狂yuki (ID: fiow63Ig)
「逃げろ!この近くに援軍が待機している砦がある筈だ!」
いつも無口で冷静、喋っても皮肉くらいしか言わないダレスが先陣をきり、
ネールの部隊は撤退を始めた。
パレスチナを聖地とするユダヤ教からキリスト教が生まれ、そこからソロモン教が生まれた。
ネールは、キリスト教徒として、パレスチナの奪還を命じられたのだが…
それは十字軍などとは違う、密命で動く部隊だった。
その証に、教皇はネール達キリスト騎士軍に手形を渡さなかった。
十字軍に渡される手形が、彼等には渡されなかった。
砦へと続く道中、「ネール…。」ダレスが言う。「もう逃げよう。フランスからもキリスト教からも。」
そう言った。
突然の爆弾発言に、ネールがどう応じようか案じていると、従騎士カールが怒鳴った。
「何を仰るのですか!神から逃げるなどと!!」
しかしダレスは冷静に、「神などいない。」
ネールは口を挟むことに決めた。いや、元々ネールが反論すべきだったのだが。
「神がおわさないって?」
「ああ。」ダレスは続いて、言い始めた。
「神がいるなら、俺達は今頃助かっている筈だ。だが…。」
と、自分達が囲まれていることを示すように、顎で四方を指す。
「ダレス…、何故黙ってた!」ネールが怒鳴る。
「神を信じていないのか?神がいるなら、この状況でも俺達が勝つ。」
ダレスは戦争に行く時も今も、危機的状況の時でも怯えない。
ダレスは冷笑しながらも、剣を抜いた。
ネールが抜刀しながら言う。「神がいないなら悪魔もいないさ。」
四人に囲まれた。身形からして上級騎士だろう。だが…勝てる。神を味方につけているという慢心が、
ネールとカールを動かし、ダレスは冷静に、しかし二人より真剣な目で、戦いの体勢に入った。
続く
- Re: 創造のクロス 神よ、テンシとアクマよ ( No.3 )
- 日時: 2016/12/10 22:59
- 名前: 狂yuki (ID: iCfJImSu)
同じ頃、フランス。
ギルバート・シエル。若く妖艶で、騎士としても凄腕の男がいた。
彼はキリスト教徒だったが、神は信じていなかった。
貴族の中でも特に有力な家柄の一人息子で、広い屋敷に沢山の少女を住まわせている。
その誰もが上流階級出身の娘で、美少女だったし礼儀も仕込まれていた。
ネール達がソロモン教徒と激戦を繰り広げている頃。
「な〜んか、今日はよくないことが起こりそうだ。」
その勘があたるとはまさか思ってもいまい。
一人の少女を呼び、
「アンヌ、今日は君を描きたい気分だ。さ、脱いで。」
ギルバートは屋敷の少女のヌードを描くのが趣味だった。
特にこのアンヌという少女は、瞳が透き通っていて、
まるで清流のように優雅に流れるブロンドヘアが美しい。
下塗り済みのカンバスをひとつ取り出して、筆をとる。
舐めるように画面を這う筆の先とアンヌを見比べつつ、
ギルバートは楽しげに絵を描く。すると、
ゴン、ゴン。
玄関扉をノックする音だ。
「そろそろ来たかな…。はいはい?」
ギルバートが玄関へ向かう。
扉を開け、外にいたのは、全身黒竦め、フードを被った男だ。
「え?」
ギルバートの待ち人ではなかったようだ。
「誰です?」
すると黒竦めの男は言った。
「…君の、復讐相手になる男だ…。」
そう言い、男は針のようなものをギルバートの首に刺した。
「がッ…!」
ギルバートはうめいた。
「はッ……あ…あ……」
全身が、自分のものでなくなるような感覚。何かも分からぬ感覚にギルバートは喘ぎ苦しんだ。
ギルバートは、煉獄の炎に焼かれるかのごとき悲鳴をあげ、気を失おうとしていた。
このままじゃ…アンヌもやられる。
しかし、とめられない。とめる前に力尽きるだろう。その自覚はあった。
しかし、最後、ギルバートがまだ気を失っていないのを確認して、男が言った。
「僕は、悪魔だ。君は目が覚めたら僕と同じ、悪魔になってる。神童の……」
ここで、人間ギルバート・シエルの全てが失われた。
そして、悪魔ギルバート・シエルの物語が始まり、
ネール・アルトリアの悲劇の物語が始まることになる。
続く
- Re: 創造のクロス 神よ、テンシとアクマよ ( No.4 )
- 日時: 2016/12/15 17:59
- 名前: 狂yuki (ID: lPEuaJT1)
ギルバートが目覚めると、そこは森林の中だった。
なぜ?
いつ?
誰が?
ギルバートには何の情報も与えられなかった。
「・・・。」
ギルバートは何があったかを思い出そうとしていた。
「・・・。」
しかし
暫くして、
耳を澄ませていないのに、ギルバートの耳に、音が入ってきた。
キィン!キィン!
剣戟の音だ。すぐ解る。
立ち上がり、歩く。
すると、
「?体が軽い・・・。」
まるで、体が空気のように軽かった。
どうして?
疑問が増えた。
行動すればするほど、
ギルバートは疑問を増やす。
「うぅん・・・。クロッキーから後が思い出せない。」
男に薬のようなものを注入されたことは忘れていた。
そして、
「あ・・・。」
剣戟の音源を見つけた。
あれは・・・。
キリスト教徒の戦闘服と、ソロモン教徒の戦闘服。
ギルバート
- Re: 創造のクロス 神よ、テンシとアクマよ ( No.5 )
- 日時: 2017/02/22 20:23
- 名前: 狂yuki (ID: bmJ5BkM0)
あれから、ネール達は何とか生き残り、カレーの街で休息を取っていた。
ダレスが言う。
「やはりおかしい。父上は死ぬ前に言っていたんだ。我々の聖地はエルサレムだと。
それを今、思い出した。なら、教皇達は嘘つきだ」
ネールが答える。
「そんな嘘をつく理由があるか?あるとしたら、何だ。教皇は仲間を騙してまで何がしたい」
「さあな。父上もそこまでは言わなかった。肝心なことを言わずに死んだからな」
「…」
ダレスは海を眺めて言う。
「おい、ネール」
「何だ」
「俺達は何を信じればいい。昨日だって、近くにソロモン教徒の奴等がいた。俺達に安息の地はない」
確かにそうだ。ここのところ、神は我々を見放しているように思える。だが
「…神を信じろ。それだけが救いの道だ」
「自分を愛してくれる人間達を殺して、『試練だ』とか抜かす神がいるか」
ダレスは少し語気を強めた。
続く
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