ダーク・ファンタジー小説
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- 私達が特別な意味
- 日時: 2017/02/12 09:42
- 名前: 桃 (ID: PiDVVb0.)
私達は生まれた時から、特別だった。
神のようにあがめられ、敬われた。
私達は、この世界を救うことができるから。
- Re: 私達が特別な意味 ( No.1 )
- 日時: 2017/02/20 11:29
- 名前: 桃 (ID: lU2b9h8R)
おもな登場人物
・神谷那月 かみやなつき♀
・白戸幸介 しらとこうすけ♂
・百田若葉 ももたわかば♀
・美羽悠 みはねゆう♂
・美羽夏凜 みはねかりん♀
・笹山琴音 ささやまことね♀
・黒尾詩乃 くろおしの♀
・椎名莉帆 しいなりほ♀
・河野綾華 こうのあやか♀
・リアン♀
- Re: 私達が特別な意味 ( No.2 )
- 日時: 2017/02/13 21:41
- 名前: 桃 (ID: KBFVK1Mo)
「あ…なっちゃん…」
若葉の目には黒いゴスロリを着て、レースのカチューシャを頭につけている那月の姿が映っていた。那月は瞳に怒りを宿していた。若葉には那月の青いはずの瞳が真っ赤に見えた。本当に赤い瞳だった。
「待ってて。若葉」
(なっちゃん!だめだよ…)
自分では声を出したつもりだったが、声は出ていなかった。若葉の目の前には巨大な黒い怪物がいる。若葉は怪物に怪我を負わされていた。
若葉は薄れゆく意識の中で那月に手を伸ばした。
が、その手は何も掴まなかった。
ーーーーーー
那月達は学園の講堂に集められていた。全校生徒700人のこの学園の講堂はとても広くて大きい。何故集められたのか分からない700人はざわざわと落ち着きがなく、いろいろな噂話をしていた。いろいろな噂の中、こんな噂があった。
『学園長が現れる』
生徒は皆、学園長を見たことがなかった。生徒の前には姿を見せないのだ。
変わった学園長だと那月は聞いていた。この学園の絶対に破ってはいけないルールを作ったのは学園長だという話だ。そのルールとは、
『学園の敷地外に出てはいけない。』
そんなルールがあるため那月も、この学園の生徒も、小さい頃からこの学園にいるため外の世界に触れたことがなかった。
数年前、ルールを無視して敷地外に出た生徒がいたらしい。その生徒は、今だに帰って来ていないそうだ。
そんな話があるため、那月は学園長のことを怖いと思っていた。
「なっちゃん!学園長が来るって本当かな?」
元気に話しかけてきた彼女は若葉。私の親友。
「んーちょっと嘘っぽいような…」
「そうだよね〜」
若葉と2人で悩んでいると、後ろから声が聞こえた。
「本当に来るんじゃないか?わざわざ全校生徒を呼ぶくらいだし」
「俺もそう思う。マジだぜこれ!」
幸介と悠だった。落ち着いた顔の幸介と反対に興奮しきった顔をしている悠。
2人はよく一緒にいる。
「やっぱりそうなのかな…」
『皆さん、学園長のお言葉をお聞きください。』
私が呟くと同時に声がした。スピーカーから発せられた無機質な声だった。
「あれが学園長…?」
若葉がステージ上の人物を見ている。いつステージ上がったのか分からなかった。学園長はとても綺麗な人だった。黒い真っ直ぐに伸びた髪、吸い込まれそうな瞳、薄い眉、顔が全体的に整っているため、とても若く見える。生徒は皆、学園長のこの世の物とは思えぬ美しさに息をのんだ。
「始めまして。この学園の学園長の河野綾華です。」
学園長は声もとても綺麗だった。私はすっかり聴き惚れていた。
「またこの時期がやってきました。この世界のために500年に一度、この学園の生徒にはしてもらわなければいけないのです。それが皆さんの定めなのです。私は皆さんの幸運を願っています。」
学園長はそう言うとマスクをした。よく映画で見るあの変なマスクだ。すると、どこからか白い煙のような物が噴き出した。みるみるうちに講堂中に広がる。生徒達は一斉に扉に向かって走ったが、扉は外側から開かないようにされていた。私達700人は逃げ道をなくした。何が起こるのか分からない恐怖。
私も震えていた。若葉も、幸介も、悠も皆意識を手放していく。
「皆…!いや…助けて」
うずくまっていると足音が聞こえた。見上げると学園長が私を見下ろしていた。
「あ…」
私は恐怖で顔を歪めた。学園長はそんな私の頭を撫で言った。
「期待しているわよ。神谷那月。」
私は意識を手放した。意識を手放す直前に見た学園長の目は笑っていた。
ーー「私の期待を裏切らないでね。」
- Re: 私達が特別な意味 ( No.3 )
- 日時: 2017/04/04 14:40
- 名前: 桃 (ID: QxkFlg5H)
「ん……」
目が覚めた。若葉が心配そうな表情をしているのが見えた。
「なっちゃん!だいじょうぶ?」
「!…ここは?」
慌てて起き上がった。そこは学校の講堂ではなく、見知らぬ大きな空間だった。
一面コンクリートに囲まれている。四隅には黒いスピーカがある。天井はびっくりするほど高く、体育館二個分くらいの広さだ。頑丈そうな鉄の扉は閉まっている。学校にこんなところがあったとは知らなかった。
「俺たちは眠らされて、ここに入らされたらしい。」
「たぶん、あと7部屋ここと同じような部屋があるぞ。」
幸介と悠がそういった。確かにここには100人ほどしかいない。あと7部屋にも私達と同じように、100人ずつ監禁されていると考えるのが自然だ。
(なんで皆、そんなに冷静なの?)
どんどん話を進めていく若葉達に私は戸惑った。少し怖かった。なぜ、こんなに早くこんな状況を受け入れることができるのだろう。
そのとき、
「キャーーーーーーアアアア……」
スピーカーから悲鳴がきこえた。女の子の声だった。
その後もいろいろな声がきこえた。悲鳴や、すすり泣き。命乞いや、叫び声。扉を叩く音。
ナニカが壁に叩きつけられ、潰され、引きちぎられる音。
「イヤーーーーーーアアア…」
「ヒック…ヒック…グス…」
「やめて!お願い!たすけ」
「イヤダーーーーシニタクナ」
その声が、1つ、また1つと消えていった。
私達は静まり返った。皆、この壁の向こうで起こっている出来事がなんなのか理解しようとしていた。しかし、頭が混乱して理解できない。今も、声が消えていく。
(…声が消えた子は……)
「……死んだの…?皆…」
若葉が呆然と呟いた。若葉のその一言で皆理解してしまった。この壁の向こうにいる子達は殺され、死んでいっているということを。
(死んだ?……死んだ。しんだ。シンダ。)
私はまだ理解できなかった。
今、きこえるこの音は命が消えていく音だということが。かつて一緒に笑い合ったり、話したりしたかもしれない子達が壁に叩きつけられ、潰され、引きちぎられているということが。
私達も死ぬということが。
ーーーーーー
長い時間、スピーカーから流れる悲鳴をきいていた。
皆、それぞれ思い思いに過ごしている。友達と別れの挨拶をしたり、恋人と手を繋ぎあったり、ただただ「シニタクナイ」と呟いている子もいる。
私も若葉や、悠とのお別れをすませ、幸介と天井を見上げていた。
実は私は幸介と付き合っていたのだ。でも若葉達には恥ずかしくて言ってなかった。けれど、お別れと一緒にそのことも言った。若葉と悠はびっくりしていたが、最後は「言ってくれてありがとう。」と言ってくれた。
「幸介……好きだよ。これからもずっと」
「……俺も那月が好きだ。ずっと。」
私と幸介はそう言って見つめあった。私の目から涙が溢れた。
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