ダーク・ファンタジー小説
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- 探偵事務所の調査依頼名簿帳。
- 日時: 2016/12/05 17:51
- 名前: 零 (ID: 4NzAaWKB)
「眠い…」
探偵事務所の探偵、白帆千咲が大欠伸をした時、好きな歌手の音楽が流れ、同時にスマホのバイブ音が鳴った。
食べていたハンバーガーを口に押し込み、珈琲で流し込んだ。
「はーい」
「木崎ですが…」
電話の相手の声はとても弱々しく、女性だった。
「木崎さんね、少々お待ち」
千咲はそう言い、調査依頼名簿帳を一枚一枚めくった。
『五月十日、午前十時二十分、木崎恵美。依頼内容︰娘の失踪』
「…もしもし。予約されたのは約五ヶ月も前ですが、何かありました?」
この探偵事務所は予約をしてから、後日、電話を入れ、日程を決めるというものだが、
最高で予約した次の日、最低でも予約したその月中には会うようにしている。
だが、千咲が言うように、今日は九月二十四日だ。
娘が失踪したにも関わらず、約五ヶ月間も捜索依頼を出さないのはおかしい。
警察が捜索してくれていて、探偵事務所には用無しという場合には文句はない。
が、警察は何も手掛かりがないため、二ヶ月前、捜索を打ち切りにしたというのを、警察官の友人、北川慎太郎から聞いている。
今も行方不明の娘を、三ヶ月だけの捜索だけで簡単に諦められるだろうか。
聞く限りでは、恵美の娘以外にも同級生の男子児童も行方不明になっているという話しだし、神隠しだという一説もある。
…まあ、神隠しなんていう非現実的な現象は、元々、眼中にはないんだけどね。
- Re: 探偵事務所の調査依頼名簿帳。 ( No.1 )
- 日時: 2016/12/05 19:47
- 名前: 零 (ID: 4NzAaWKB)
「す、少し用事が重なっていて、時間がなくって…」
恵美はそう言った。
声がはっきりとこわばったものの、千咲はわざとその事には触れず、
「そうですか。…では、日程はどうしますか?」
と別の話題を振った。
「明後日、水曜日の午前十時にあの喫茶店で…」
「わかりました。失礼します」
と言い、千咲は電話を切った。
最近は依頼が一件もなかったので、千咲の目はやる気に満ちていた…。
明後日の水曜日。
茶色を基調にしたあたたかい印象のする店内は、とても居心地が良かった。
店員に珈琲を注文し、珈琲が届いた頃、店の入り口に恵美さんはいた。
「木崎さん、こっちです」
呼びかけ、席に座らせた。
近くで見ると、とても端整な顔立ちをしていることに気づいた。
長く艶のある奇麗な黒髪を後ろで束ねているので、色白な肌にとてもあっている。
大きな瞳と小さく高い鼻もキュートで、とても美人だ。
「こんにちは…私、木崎恵美といいます」
優しい恵美の声で我に返った千咲は自分も自己紹介をした。
「白帆千咲といいます。…単刀直入で申し訳ないんですが、娘さんが失踪したのはいつですか?」
「えっと…五月九日の午後二時半くらいですかね…」
「どこかに出掛けたりとかですか?」
千咲が訊くと、恵美はふと気が付いたように声を上げた。
「そうなんです! 同じく失踪した同級生の子と一緒に出掛けると言って…」
「何で忘れてたんですか」
千咲が責めるように言うと、恵美はふてくされたように言った。
「喧嘩してたんですもん…」
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