ダーク・ファンタジー小説

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ヴァンパイア −紅の街−
日時: 2017/01/24 20:27
名前: 彼岸 (ID: 3i70snR8)

皆さんお久しぶりでございます。
2.3年程前に此方で小説を執筆しておりました、彼岸と申します。
以前書いていた「ヴァンパイア −紅の街−」ですが、今更読み直してみました所、誤字脱字のオンパレードに描写不足でとてもそのまま続けられる気がしませんでした。ですので今回、話の流れは変えずに加筆修正したものを上げたいと思います。
初めましての方、又は以前の執筆作業中に面識のある方、問わず大歓迎です。

拙文ではございますが、何卒宜しくお願い致します。

Re: ヴァンパイア −紅の街− ( No.1 )
日時: 2017/01/24 20:28
名前: 彼岸 (ID: 3i70snR8)

1.Prologue 紅
気がつくと私は、知らない場所に立っていた。目の前には分岐した三本の道がある。先は暗く、現時点では何方に進むべきかまるで分からない。

『初めまして。』
途方に暮れていた時、澄んだ声が聞こえた。背後を振り返ると、其処には美しい一人の女性。
透き通る様な艶やかな白い髪に、何をも包み込む紫紺の瞳を持っている。同性でも見惚れてしまう程の美貌だった。
『貴女、此処に来るのは初めてでしょう?私は藍玉よ、宜しくね。』
桜貝の唇から発された言葉は音符の様に私の中に溶け込んだ。見知らぬ人間に突如声を掛けられた違和感や危機感を覚える気すら霧散していく。
「…初めまして。」
名乗られたからには、自分も名乗るべきだろう。すぐに自己紹介を返さなかったのは、一重に藍玉さんの浮世離れした容姿に見惚れていたからだ。

『…シズク。』
自己紹介をしようと口を開いた時、藍玉さんの口から私の名前が出た。思わず驚きに目を見開くと、彼女のしなやかな手は空へ向く。どうやら、雨が降ると伝える意の「シズク」だったらしい。名前を当てられたのかと疑った心臓が早鐘を打っている。
『雨が降りそうね。此処じゃ濡れるかもしれないわ、ついていらっしゃい。』
花よりも綺麗に笑った藍玉さんの後を追った。




彼女はいつになっても只管無言で歩き続ける。知らない場所にいる不安感が今更になってぶり返して来て、時間が何倍にも長く感じてしまう。きっと時刻を見れば、思うより長くは進んでいないのだろうけれど。
私は無言が苦手だ。それは育った境遇に左右されているからだと思う。思い出したくもない事が頭を駆け巡って、その恐怖に手が震える。震えは全身を即座に回り、挙句に足まで止めてしまった。
…それがいけなかった。どうして今の今まで気づかなかったのだろうと不思議な程、違和感はすぐ近くに存在したのだ。
私の足元には、青白い死体が転がっていた。

Re: ヴァンパイア −紅の街− ( No.2 )
日時: 2017/01/24 20:30
名前: 彼岸 (ID: 3i70snR8)

2.蒼
「…ッヒ…!」
急に張り付いた喉から、小さな悲鳴が搾り出た。全身から脂汗が噴き出るのが分かる。勿論の事ながら、死体なんて見るのは初めてだった。
転がる死体は真っ青で、きっと何よりも冷たいのだろう事が見て取れる。すぐに此処から走り去りたい心とは裏腹に、恐怖で地面に縫い付けられた足は見事に機能しない。逸らしたい目も操られた様に死体から離さない。こんなに怖いのに。

『どうして止まったの?』
気づけば目の前に、歩いていた筈の藍玉さんが立っていた。肩がびくりと跳ねる。目にした顔は、驚く程の無表情。
『止まってはいけなかったのよ、貴女は。』
殴られると身構えた身体は、悲痛な声を聞き取った。表情とはまるで反対だ。
「…止まっちゃいけないって何ですか…?」
藍玉さんは俯いたが、またすぐに顔を上げた。
『貴女は、私が止まるまで歩き続けなければならなかったの。』
「そんな事、聞いてないです…」
『これは試験だから、態と伝えていないのよ。』
相変わらず悲しそうな顔をしている藍玉さんは、懇切丁寧に説明を始めた。
『最初に此処は「紅の街」だと言ったけれど、それはあくまで表向きでしかない。此処は別名、「ヴァンパイアの街」と言われているの。』
ヴァンパイアの、街…?困惑する脳内は、足元の死体を思い出す。そうだ、死体は、真っ青な顔をしていた……。合点が行った。死体達も、元はきっと私と同じ様に試されたんだろう。
『試験を通れば、貴女は現世に生きて帰れる。でも……』
私は、立ち止まってしまった。だから、試験に落ちた。つまり。死体達と、同じ一途を辿るという事。
「っ藍玉さん!…え…?」
俯いた頭を上げると、藍玉さんはいつの間にか消えてしまっていた。その代わりに、三人と男が立っていたのだ。

Re: ヴァンパイア −紅の街− ( No.3 )
日時: 2017/01/22 23:02
名前: 彼岸 (ID: 16oPA8.M)

3.紫
「可愛い女じゃねぇか。」
赤い目を光らせ、舌舐めずりをした男はヴァンパイアの一人目、名前はカイ。
「怖がる事を言わないでよ、カイ。女の子は大事に優しく可愛がってあげないと。」
柔和に笑んで見せた男はヴァンパイアの二人目、ケイ。
「煩いです女誑し。余計な情は面倒なだけです、さっさと吸血しますよ。」
眼鏡のブリッヂを上げた男は三人目のレイだ。
「俺はいつも通り首だ。」
「獰猛な…。私は手首にします。」
「僕は唇かなぁ。」
「そんな事ばかり言うから女誑しと言われるのです。」
固まったままのシズクを囲う三人のヴァンパイア。恐怖に今にも倒れそうなシズクの手を取り、ケイが口付けた。みるみる真っ赤になっていくシズクに、優しくケイが微笑んだ。彼は好みの女性を吸血前に落とすのが大好きである。曰く、「真っ赤な顔を真っ青に染めるのが好き」らしい。

真っ赤な顔をしているシズクを背後から抱き竦めたのは、吸血を堪えきれなかったカイ。
「嫌っ!離して!やめて!」
ヴァンパイアは長命故、かなりの怪力だ。シズクが全力で抵抗してもびくともしない。髪を右側に流され、剥き出しになった首にカイの舌が這う。感触で分かる、牙の感覚。その次の瞬間、首が痛んだ。
「…っ、いたっ…!」
鋭利な牙がシズクの肌を食い破り、溢れ出る真紅を吸っている。レイも手首に牙を突き刺し、血を飲む。
シズクはどんどん血が抜かれて行き、顔面蒼白となっていく。そうして意識が飛ぶ直前、ケイが唇を食い破る気がした−−。



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