ダーク・ファンタジー小説
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- 最後に君は笑った
- 日時: 2017/01/28 20:53
- 名前: 黎 (ID: KwIJCRrJ)
その日は風が強く、ぱぁーっと桜が舞っていた。
私、もう行かなきゃね。
そう君は言った。
待って
と、僕は慌ててとめる。
もう少しだけ君の顔見ててもいい?
そう言うと君は顔を真っ赤にしていた。
うさぎみたいに死んでたら許さないから。
真顔でいう君はあの時の顔と同じだった。
あの日は大雨だった。
家で死んでいたうさぎをさばいて食べた。
2人の秘密ね。
そう君は言う。
少し暗い部屋。
たまに雷が鳴る。
その度に部屋がぴかんと光る。
明日晴れたらうさぎを埋めてあげてお墓を作ろうと君は僕に提案した。
けど君は次の日熱を出したんだよね?
だから僕が1人でお墓を作った。
次の日から仕事なのを忘れて必死に作った。
次の日君の熱は下がっていきなりの2人の共同オペ。
その日の君の手は震えていた。
その日の患者は小さな子供だった。
ねぇ。何ぼーっとしてんの?私もう行くからね。
君は頬をぷくっと膨らませた。
ごめん。
もう行くね。そう言うと君はスタスタと歩いていった。
その後ろ姿をみていた。
すると突然止まり、
「逃げちゃダメよ?」
「どういうこと?」
「この世から。どんなに辛いことがあっても死ぬのは一番ダメだから。わかってるでしょ?あなたは外科医なの。人の命を預かる仕事なんだから。」
そう言う君は微笑んだ。
桜がまう中、僕は1人残された。
どこか寂しかった。
でも1ヶ月もしたら戻ってくる。
人形のように美しい君が。
傷一つない、僕の可愛い人形ちゃんが。
- Re: 最後に君は笑った ( No.3 )
- 日時: 2017/01/31 18:05
- 名前: 黎 (ID: KwIJCRrJ)
家に帰るとそれはそれは残酷な光景だった。
「お父さん…」
ゆらゆらと揺れていた。
中学生の私にはわかる。
お父さんは首をつって死んでいた。
「お父さん。ねぇ!お父さん!!」
必死に叫んだ。
嘘だと言って…
冗談だと言ってよ…
これは千尋を驚かすためにしたんだと言って…
死なないでよ。
ガチャ
「お母さん…」
「あら千尋見ちゃったの…」
「ねぇ。どういうことなの?お父さんなんで死んだの?ねぇってばっ!」
バチン
頬を叩かられた。
「あんたのせいで金がないんだよ!だから一家心中しようって…「私のせいなの?」
私はお母さんの話を遮った。
「そんなの酷すぎるよ。人を殺すのはダメだよ!」
「人は美しく死のうと思っても死ねないのよ。」
そう言うとお母さんは青酸カリを飲んで死んだ。
私は怖かった。
だからその青酸カリを持って走って家を出た。
ポケットに入れた。
これはお母さんの形見なのだ。
そう思うことにした。
そして学校に行き事情を話した。
みんなには転校といってもらうことにしたが本当は精神病院にしばらく入れられるそうだ。
精神病院に入れられるぐらいなら死んでやる。
そう思った。
最期に先輩に会いたかった。
だから屋上に呼んだ。
先輩に私が死ぬところを見ていて欲しかった。
私は死ねなかった。
先輩が私が刺したナイフを抜いて胸に刺した。
消えゆく意識の中で最後に見たのは笑顔で胸にナイフを刺していく先輩だった。
目が覚めたら病院だった。
先輩には死んだと伝えたと医者が言っていた。
医者はあと1センチずれていたら死んでいた。と言う。
この体に残る傷。
私は嬉しかった。
だって先輩が作ってくれた傷だもん。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
それから2年後私は外科医になろうと決めた。
外科医の世界は狭い。
そう聞いたことがある。
だからいつか先輩と会えるかもしれない。
そう思い勉強を人1倍頑張っていい高校行って、有名大学の医学部に入ったのだった。
- Re: 最後に君は笑った ( No.4 )
- 日時: 2017/02/01 18:44
- 名前: 黎 (ID: KwIJCRrJ)
僕の将来の夢
3年6組 齋藤和馬
僕の将来の夢は外科医になること。
なぜ外科医になりたいのか。
それは小さい頃に父が死んだからだ。
父は癌だった。
あの時あと少し手術がはやければ助かっていたという。
母はその後体調を崩して死んだ。
死の連鎖を作らないように、僕自身が人を救いたい思った。
僕は叔母に育ててもらっている。
叔母には感謝してもしきれないと思っている。
叔母に支えてもらった分、今度は僕が支える番だと思っている。
こうやってみんなが協力して生きていけば世の中簡単なのに。
どうして裏切りとかそういう感情が出てくるのだろうか。
人間は欲深い生き物。
その欲を我慢できれば…。
たとえ僕が死の連鎖を止めたとしても、他のところで死の連鎖を人間が創り出すのだろうか。
殺しや自殺など命を無駄にするようなことを僕はやめて欲しい。
そういうことをする人に僕は言いたい。
こと世には生きたいひとがいた。ということを。
生きたくても死んでしまった。
そんな人は必ず殺人を犯した人や自殺した人に言うだろう。
どうして命を無駄にするの?と。
僕は命を救いたい。
みんなの笑顔が見れればそれでいい。
たとえ見返りがなくたって、僕はいい外科医になる。
そしてみんなから慕われる外科医になる。
それが僕の夢だ。
- Re: 最後に君は笑った ( No.5 )
- 日時: 2017/02/02 21:57
- 名前: 黎 (ID: KwIJCRrJ)
最近なんだか熱っぽい。
気だるくてずっと仕事を休んでいる。
気分も悪い。
ここ3ヶ月ほど生理が来ていない。
まさか…
私は慌てて妊娠検査薬を買いに行ったのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
夜9時。
今日は当直じゃないはず。だから電話をかけてみよう。
「もしもし。和馬さん?」
「どうしたんだ。いきなり。」
「大事な話があるの。私妊娠した。」
「えっ…」
「ごめんね。勝手に。どうしよう。中絶した方がいい?」
「育てよう」
「つまり…」
「産んでいいの?」
「あぁ。名前はなんてする?仕事はしばらく休んでいいよ。」
「和馬さん…」
「大事に育てような。」
こんな幸せなことはあるのだろうか。
彼は喜んでくれた。
この子を一生大切に育てよう。
私はそう決めた。
そして仕事も産休に入った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
それから3ヶ月後…
「うっ…」
私はその場に崩れ落ちた。
血が溢れ出てきた。
慌てて救急車を呼ぶ。
息がどんどん上がっていく。
もう死んでしまう…
医者なら誰でもわかる。
医者じゃなくたってこうなったら皆不安に思うだろう。
10分後…
救急車が到着した。
「花山さん。聞こえますか!花山さん!」
「は…い…」
「具合は?」
「…」
「花山さん!?花山さん!!」
安心して意識を失った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
目が覚めると病院だった。
先生はこう言った。
あなたの命だけは助かりました。
と。
和馬が慌てて来てくれた。
「和馬さん…ごめん。流産しちゃったみたいなの。」
「しょうがない。それも運命なんだよ。」
「和…馬さん…」
大粒の涙が溢れてきた。和馬さんは頭をポンポンとしてくれた。
そうして私に言った。
「自分の子供にこだわらなくてもいいんじゃないか?」
「どういうこと?」
「養子をとろう。」
和馬さんは笑顔で言った。
- Re: 最後に君は笑った ( No.6 )
- 日時: 2017/02/04 19:37
- 名前: 黎 (ID: KwIJCRrJ)
「もしもし千尋さん。いい情報があるから今日いつものとこで会いませんか?」
僕は電話をかけた。
すると千尋さんは
「そう。わかったわ。今日もいつので払うわね?時間は…」
んふふっと微笑んだ声が聞こえる。
「僕明日休みだから朝までで」
「かしこまりましたぁっ。」
僕は急いでホテルに向かった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
それから1時間後。
千尋さんはバスローブを来て風呂から出てきた。
「じゃあ始めますか」
「はぁーい」
バスローブをぱっと脱ぎ捨てた。
最初見た時は驚いた。
胸と腹に手術痕があったからだ。
でも今は驚かない。
もう慣れてしまった。
千尋さんには夫がいることはわかっている。
けれどこの関係はやめられなかった。
僕は千尋さんが好きだから。
ことが終わりしばらくぼーっとしていた。
「ねぇ。情報って何?」
「捜査が千尋さんに迫ってます。」
「どういうこと?」
「逃げないと捕まります。」
「どうしてそんな事に…」
「目撃情報です。」
「そんな…なんで…」
「わかりません。けど早く逃げてください!!」
「わかったわ…」
「1週間以内には逃げた方がいいです。」
「素敵な情報をありがとう。この代金はお高めね。もう1回ぐらいしましょうか。」
はい。と僕が言うともう1度影が重なったのだった。
- Re: 最後に君は笑った ( No.7 )
- 日時: 2017/02/06 20:49
- 名前: 黎 (ID: KwIJCRrJ)
「らびと。この子の名前はらびとよ!」
「どうしてらびとなんだい?」
「蘭の花のように美しく永遠の愛を誓う子に育って欲しいから。」
「漢字は蘭に美しいに永遠の永?」
「そう。蘭美永。いい名前でしょう?」
君は素敵な笑顔で言った。
僕達は養子をとったのだ。
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4年後
「らびと!どうしてこんなことするの!」
「僕じゃない!」
「嘘はダメでしょう!」
「千尋落ち着いて。」
「あなた…」
僕は君に首輪を渡した。
「これ。つければいいだろう?」
「えっ。」
君は意味がわからないのかぼーっと止まっていた。
だから僕は君から首輪を奪い取ってらびとにつけた。
「パパ辞めてよ!」
「らびとが煩いからだよ。」
僕はにっこり笑って言った。
僕は君の手を引いてらびとを部屋に置きっぱなしにした。
君は少し怒っていた。
「どうしてあんなこと…」
「少しは楽になるだろう?君も。」
「…」
僕は君を抱きしめた。
それから僕達はベッドにもたれこんだ。
何時間たっただろうか。
君はらびとの様子を見に行ってからシャワー浴びてくると言って部屋から出ていった。
「きゃーっ!!」
僕は急いで隣の部屋の扉を開けた。
らびとは死んでいた。
綺麗に来ていたバスローブが乱れていた。
だから僕は綺麗に戻してあげた。
僕は死亡届を偽造した。
医者という立場を使って。
君はらびとが死んでから、らびとのことをうさぎと呼ぶようになった。
少しでもらびとのことを忘れたかったのだろう。
しかし君は何故か清々しい顔をしていた。
らびとが死んでも悲しんではいないように見えた。
「うさぎ死んじゃったね」
叫んだ後君はこういったのだった。
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