ダーク・ファンタジー小説

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

革命前夜の旋律は。
日時: 2017/02/02 13:59
名前: 華琉 (ID: S3B.uKn6)

いらっしゃいませお客様、ようこそ。私、ここのオーナーの華琉と申します。
こちらでは貴方のお望みの物語を提供させていただきます。その様子だと……目にとまったのは、これ、でしょうか。
『革命前夜の旋律は。』この物語は現実世界とはかけはなれた異世界、政府はとうに腐りきり、黒いマントに身を包む宗教集団による魔女狩りと理不尽な殺人が横行する……そんな世界であがく少年たちの話です。
いえいえ、暗いだけの話ではありません。もはや整備もされない深い森の匂いと人々の憎しみで歪みきった世界の香りを堪能して下さいませ。
おっと、その前にこれを。


『革命前夜の旋律は。』を読む前に

【注意】
・風紀を乱すような言動はご遠慮ください。
・作者は素人でございます。ご了承を。
・感想も節度のある批評も歓迎いたします。


【異世界へ】

>>1   目次
>>2   登場人物  


それではいってらっしゃいませ。この物語が貴方の一部となりますように。 

Re: 白闇黒光ノ旋律二捧グ。 ( No.1 )
日時: 2017/02/03 11:46
名前: 華琉 (ID: S3B.uKn6)

【目次】
>>2  登場人物

———第一章———
>>3  助手
>>4  親友

Re: 白闇黒光ノ旋律二捧グ。 ( No.2 )
日時: 2017/02/03 11:44
名前: 華琉 (ID: S3B.uKn6)

【登場人物・集団】

歩斗あると
……14歳男子。7年前Condemnedに母親を殺された。今は国立エグレッタ学院に特待生として在学。
・マルゴ教授
……童顔のかわいいエグレッタの教授で頭脳明晰。軍との繋がりがあり、武道にも長けている。軍の要請でCondemnedの研究をしている。
・宙乃(そらの)
……兎耳のパーカーと、原色の服がトレードマーク。Condemnedの被害者。エグレッタに在学中。
・アレグロ
……黒い肌と金髪が特徴。Condemnedの被害者。エグレッタに在学していて、魔法学を専攻している。

・Condemned
……世界の八割を制圧した宗教団体。魔女狩りと無差別殺人を繰り返し民衆から恐れられてる。(ちなみにCondemnedとは英語で「死刑囚」です)
・国立エグレッタ学院
……世界有数の最難関校。現実世界だと大学的な。各地から優秀な人材が集まる。全寮制です。(ちなみにエグレッタとはイタリア語で「白鷺」です。)
・魔法研究機構
……100年前の魔法を取り戻そうと研究を進める。

Re: 白闇黒光ノ旋律二捧グ。 ( No.3 )
日時: 2017/02/02 13:30
名前: 華琉 (ID: S3B.uKn6)

【助手】

「おい君」
マルゴ教授からの厳しい声が背中に突き刺さる。いつもかけている赤ぶちの細長メガネの奥から鋭い視線。グサグサ、のビシッ! うわ、痛い。渋々歩斗は振り返る。内巻きボブの茶髪と童顔の組み合わせ。歩斗より少し低い背は学生からも人気だ。
「なんですか、デートのお誘い?」
「……」
容姿も良く、頭も良い教授。だれもが口をそろえて“もう少し明るい性格だったら最高なのに”と言う。
「あ、もしかしてカフェに行こうとか?」
「……」
教授は答えない。心の芯が折れそうだけど、熟練の笑顔をキープする。
「映画館ですか? 先生、他の生徒に見つかったらどうするんですかぁ〜」
「……いくら睨まれても軽口を言い続ける君の精神構造には興味がある。ただし、空気を読まない性格には感心しないな。話がある。来い」
え、告白ですか、キャアッ! とか言ってやろうかと思ったけどやめておいた。素直についていく、というか襟を掴まれてひきずられる。どうしてだろうか、このかわいい顔の教授。怪力、武道にたけていて軍から幹部候補生研修のお誘いがかったそうだ。
教授の講義室に連れられ、歩斗は一番前の真ん中に座らせた。自分で選ぶなら絶対に座らない席。だって寝れないし。
教授は向かい合うように教卓に肘をつき、手に顎を乗せた。位置の関係でいつもは低い教授の目線が上から。歩斗は上目使いだが、多分教授は胸キュンしていないだろう。
「さっそくだが」
教授がもったいぶって口を開く。デートのお誘いか聞こうかと思ったが、やめておく。教授から殺気立ったオーラが発せられている。危険。何か悪いことしましたっけ、心当たりが多すぎてわからないですごめんなさい。
「14歳にして特別試験でエリートの通う最難関校、国立エグレッタ学院に特待生で合格したその経歴を見込んで頼みごとがある」
ものすごく持ち上げられた歩斗。経験から悟った。これはめんどくさいことを押し付けられんな。
「……何でしょうか」
「助手をお願いしたい。付き人になれ。嫌か?」
———その言葉におされて思わずうなずく。提案を受け入れるつもりだったのだが教授は怪訝な顔をした。文脈からすると、歩斗の行動は否定にもとれた。あわてて言葉を返す。
「嫌じゃ、ないです。やります、助手」
でも、なんで。聞く前に答えが返ってくる。
「君は研究対象だ。7年前の魔女狩り。軍の要請でそれについて調べている。私の最終目標は」
……Condemnedを壊滅に追い込むこと。教授の言葉が遠のく。その言葉に自分はうなずいたのか、どんな表情をしたのか。意識を失うとはこういうことか。自分の名を叫ばれ、体をゆすられ、視界がぼやける。頭が痛い。胃を熱いものが駆けまわる。胸が、痛い。

Re: 革命前夜の旋律は。 ( No.4 )
日時: 2017/02/03 11:32
名前: 華琉 (ID: S3B.uKn6)

【親友】

歩斗が目をぼんやりと開く。
———ここは? 白い天井と白い壁。真っ白、じゃなくてクリーム色に近い。あぁそっか、ここは寮か。自分は横になっているようだった。
たてつけの悪いドアの開く音。誰だろう。ルームメイトか?
「アレグロ?」
「ブッブー! はずれですぅ〜」
壁の向こうから黄色いパーカーが見える。兎のたれ耳つきだ。
「アレグロは研究機構にお呼ばれしてるんじゃなかったのっ?」
くくっと笑って原色の塊が飛び出してきた。しかも声が高い。うぇ……目の奥から頭が痛くなってくる。
「宙乃……」
「あ、ごめんごめん。気分はどうですか〜?」
「君を見た瞬間に吐き気が」
「殴るよ」
宙乃が殴る真似なんかしていたけれど、冗談を返せない。本気の方で気分が悪い。
ベッドに座っていた歩斗を、ひざまずいた宙乃が覗き込む。
「大丈夫? 倒れたらしいじゃん」
「教授が、研究の参考人も兼ねて助手になれって。7年前のことで」
「Condemnedの事ね。私も言われた。まだ返事はしていないけど」
宙乃はあいつらの名前を堂々と口に出す。歩斗にはまだ、口にすることができない。あいつらが、出てくるような気がして。また自分の大切な人を、八つ裂きにされてしまう気がして。
飛び散る血が頬につく。
銃声が胃に響く。
冷たい水が体に纏わりつく。
あいつらの笑い声が谷にこだまする。
助けを求める目が刺さる。
くいしばった歯から小さい叫びが漏れる。
大切な人の内臓が……頭が……血にまみれた川に流れる。
最後に見た母の顔は半分水に沈み、肩から下が無くなり、血が噴き出し、目には濁った光がちらつく。その目は何もしなかった、助けることをしなかった歩斗への憎しみと恨みに満ち溢れているように見えた。
「ゴブッ」
胃から熱いものがせりあがってきた。胸が焼ける様で喉が痛い。苦い……。
「歩斗っ?!」
背中をさすられながら歩斗は嘔吐した。
いつもそう。Condemnedと聞くといつも気分が悪くなる。弱い。あいつらに、負けている。歩斗はそんな弱い自分が嫌いだ。嫌いで、情けない。
口についた嘔吐物を腕で拭う。
「俺やるよ。ぶっ潰してやる」
まだ頭も痛いし、気分も良くない。それでもあいつらの名を口に出せるようになりたかった。あんな奴らに怯える自分とは決別しよう。宙乃も勢いよく首を縦に振る。
「歩斗がやるなら私もやるよ。やってやろうよ」
宙乃が目に楽しそうな光を灯す。ドアの音がもう一度した。
「アレグロ!」
一層黒くなった肌と金髪。アレグロは歩斗の下を見る。
「あーあ、派手にやったなぁ」
「アレグロっ! 今の話聞いてた?」
「うん。俺も誘われたぜ。協力するよ」
歩斗もニヤリと笑う。さっきの弱気はどこへやら、足を組んで、腕も組合す。
「これで仲間が揃ったって感じだな」
アレグロが首をゆっくり振る。
「違うんだなぁ、それが」
みんなからの驚きの視線を優越感たっぷりに噛み締め、人差し指をチッチッチッと揺らす。宙乃が小声で欧米かッとつっこんだ。
「明日来るんだ、俺の仲間が。魔法研究機構で知り合った奴でさ、そいつもCondemnedの犠牲者だ」
「うっひょぉ〜! 男っ? 女っ? 」
明日のお楽しみだ。そう言ってアレグロは二ィッと笑う。


———後で思えば此処が転機だった。僕があの一言を出さなければ、と思ったことはない。でもやっぱり、これがなければこのカビの生えた世界はあんなに大きく傾くことはなかっただろう。傾き方が、僕らにとっていいことだったのか、それは誰にも分からない。


Page:1



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。