ダーク・ファンタジー小説
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- リーダー
- 日時: 2017/02/18 12:16
- 名前: そーれんか (ID: qESkNdgF)
初めまして。このゲーム"リーダー"をインストール頂き誠にありがとうございます。軽くチュートリアルをさせていただきますね。このゲームに課金要素は一切ありませんので安心してお遊び頂けます。そしてこのゲームの目的は、この日本の中でのリーダーを決める戦争ゲームのような感じです。あ、でも城を育てたりではなく自分自身の分身をつくりそれを育成していくというゲームです。友達と協力していくのもあり、一人で孤独に戦うのもありですよ。日本のリーダーになられた方は永久の名誉を約束しましょう。
それでは、ゲームスタート。
ワイワイとする教室に二人の男子が椅子に座ってスマホをいじっている。
「嘘くせ。永久の名誉だなんてあるはずないだろ?お前から誘われて入れてみたが…ゲーム性見る前に辞めそうだわ」
そう言ってスマホを机に置く。
「いやいや、それが嘘だったとしても結構面白いゲームなんだって!悠、早くチュートリアル終わらせて俺にフレンド申請してちょうだいよー。俺フレンド誰もいなくて困ってんだからさあ」
悠と呼ばれる少年は再びスマホに電源をつけゲームを起動する。
「しょうがないなぁ...憐斗、お前のユーザーネーム教えて」
憐斗と呼ばれる少年はフレンド画面を開き自分のフレンドIDを確認する。昼休みを利用しスマホとにらめっこ状態になる。このゲーム"リーダー"は何故か日本中でブームを巻き起こしプレイヤーは皆リーダーの座を狙おうとしている。
「ユザネねー、笑うなよ?闇メイジレントだよ...後フレコは42395」
名前を聞いて思わず悠は吹き出してしまう。
「何その名前!?だっせぇ!」
「このゲームはさぁ、ちょっとしたお決まりがあるんだって。光か闇のどっちかに所属して職業...ウォーリアとかメイジとか選ぶんだよ。それがそのまま名前になるんだってば...そういうお前の名前はなんだよ!」
恥ずかしそうに顔を赤らめながら悠のスマホを確認する。
「闇アーチャーユウ...?お前もそれなりにダサいじゃねえか!」
「うるせぇ!しかもなんで闇アーチャーとか闇メイジなんだよ!ダークメイジとかでいいだろ!?なんでこういうとこ変なんだよ!」
悠はバンと机を叩く。そのせいで教室内にいた人達の視線が一斉に悠達に向く。
「ぁ...いやすいません...」
恥ずかしさで穴があったら入りたくなる。
「あ」
憐斗は少しびっくりした表情でスマホに目をやる。
「大型アップデートの為のメンテナンス?ほへー、昼休みまだ時間あるからちょっとあれだけど帰る頃には終わってるみたいだし、帰りながらやろうぜ!」
"アップデート内容...現実となります"
こんな意味深な言葉を公式サイトに残してリーダーはメンテナンスへと突入した。
- Re: リーダー ( No.1 )
- 日時: 2017/02/19 00:04
- 名前: そーれんか (ID: qESkNdgF)
学校の終わりを告げるチャイムがなり、生徒達は一斉に帰り始める。
「お、メンテ終わってる!どれどれ...異能モード?なんだこれ?」
憐斗は新たに追加された異能モードをタップする。"異能モード...プレイヤー本人のみが使える技です。既に技は数多く存在していますが、それとは別の唯一無二の技です。お好きな名前をつけてあげてください。"とチュートリアルがあり、技名をつける画面へと移動する。
「技の効果とかは決まってるみたいだな。悠はなんて名前にする?俺のは技が呪いのかかった魔法陣で攻撃だから...マジックカーススクエアってのはどうだ!?」
「そのまんまじゃねえか...俺は...えーっと敵を闇の力で操る?じゃあ.....。ダークアローでいいや」
「弓矢関係ねえ!」
二人はゲームをしながらのんびり歩く。
「あの、そこの二人!」
少女の声が背後からし、二人は振り向く。
「あれ?君って同じクラスの」
「花咲奈々です。あの...昼休み聞いてたんですが...リーダーやってるんですか?」
「悠はさっき始めたばっかだけどな。君もやってるの?」
憐斗がそう言うと奈々は顔をキラキラと輝かせた。
「はい!楽しいですよね!私は闇プリーストナナです!...悠くん、私がさんざん勧めた甲斐があったわ!ようやく始めてくれたんだもん。」
奈々は腰に手を当てえっへんと仁王立ちする。
「え?知り合い?」
「...幼馴染み。こいつからさんざん勧められたんだよ...やる気なかったけどお前から勧められたから仕方なくやってんだ。」
「仕方なく...ねぇ?私には少し楽しんでいるように見えるけどなー?」
悠の楽しくなさそうな表情とは裏腹に手はピコピコと遊んでいた。
「こ、これはゲームが単調だからやりやすいだけで...」
「ふーん?」
奈々はニヤニヤとした顔でスマホの画面に目をやる。
「あれ、誰かとマッチングしてる。誰だろ?」
「このゲーム、クエストよりオンラインマッチングがメインだからな。というかクエストって飾りだし。装備とかもマッチングやってりゃ貯まるし。ただキャラが走ってるのを見てるだけみたいな?」
憐斗は全然進んでないクエスト画面を開く。まだ1-1すらもクリアしていなかった。
「あ、相手決まった!ええと...光ランサーイー...ルッ!?」
奈々の身体が槍に貫かれ血飛沫をあげながらその場へ倒れ込む。奈々が持っていたスマホの画面には[光ランサーイールVS闇プリーストナナ]と表示されていた。
「な...」
突然の事で二人は呆然とする。
「ひ...人殺し...!」
憐斗がカタカタ震えながらそう呟く。槍を持っていた女の子に見える人物は不満そうな顔をしている。
「人殺しなんて人聞きの悪い。僕はリーダーのルールに従ったまでだ。お前達は公式サイトのお知らせ文を読んでいなかったのか?」
悠と憐斗は急いでブラウザを開き公式サイトに接続する。
一番上のお知らせ文に
"現実となります"
とあった。
「え...それじゃ...」
「そう。異能が追加されたのもこれの為だ。対戦相手を殺すことが勝利条件なんだ」
どくどくと絶え間なく奈々の体から血が流れ続ける。血はコンクリートの地面に染み込むことなく広がっていく。
「異能を使うまでもない雑魚だったね...次は...闇アーチャーユウ君、君にしようか?」
悠の頬から冷や汗が伝う。
そうだ、アンインストールしてしまえばいい。そう思ってスマホのホーム画面に戻りアプリを消そうとする。
「あ、やめといたほうがいいよ。アンインストールしちゃうと存在が消えちゃうからね。...なんで住宅街なのにこれを見つけて警察に通報する人がいないのか、わかる?」
そういえばそうだ。先程からずっとこの四人しか人や動物を見ていない。この時間帯にいつもパトロールをしている人もいない。
「はぁ。君がホーム画面に戻るから別の人とマッチングしちゃったじゃないか。見ておくといいよ。この試合とリーダーのルールって奴をね」
"異能・双刀騎士"
住宅の屋根から男が一人飛び降り、剣で二連撃を繰り出す。悠と憐斗とイールは驚いた顔でかわし、当たらなかった攻撃はコンクリートにヒビを入れる。
「うわっ!いきなり異能を使うなんてなんて脳筋なんだ!」
「ふん、女の子の癖に槍使いだなんて生意気な。女の子は杖でぶんぶん振り回してろ」
女の子と言われイールは顔を真っ赤にする。
「女の子!?女の子だと!?僕は男だ!クソッ!殺してやる!」
"異能・永久兵"
イールは分身し、凄まじい速さで連続攻撃をする。
「女の子みたいに軽い攻撃を沢山したって男にはならないぞ?」
ニヤニヤと笑いながら軽やかに避ける。
「キー!男だって言ってるだろうが!」
二人が戦っている後ろで悠と憐斗は震えながら奈々の応急処置をしている。
「奈々...病院...いかないと...」
腹部を布で抑え血を抑えるが一向に止まる気配がなく青い顔をしている。
「病院つったって人がいるかどうか...!」
「行く価値はあるだろ!見殺しにする理由なんかねえ!」
悠は奈々をおぶり、走り出す。憐斗は悠の分の荷物も持ち追いかける。
「あ、逃げたってうぉあ!?」
イールがよそ見をした瞬間にブォンと風を切る音を出しながら男は剣を振り回す。
「よそ見をして死んだって知らないぞ?まぁ俺的にはそっちの方がいいんだがな」
「ぎぎ...絶対殺す!女の子って二度と言えないようにしてやる!」
[光ランサーイール
VS
闇セイバーロウ]
- Re: リーダー ( No.2 )
- 日時: 2017/02/19 00:03
- 名前: そーれんか (ID: qESkNdgF)
病院の中に入る。医者などはちゃんといたものの他の患者の手当などでとても奈々を見てくれそうにはなかった。
「ど、どうする!?これじゃどうしようもないじゃないか!」
憐斗は焦った顔で悠に話しかける。
「どうするもなにも...ここで治療してもらうしかないだろ!別の病院じゃ間に合わない...」
「だったらどうやって!?」
「...俺の異能を使うしかないだろ...出し方とかそんなのすら全くわからないけど...でも...でも!奈々を死なせたりはするもんか、絶対!」
悠はスマホを取り出しアプリを開く。
「異能...頼む...お願いだから...発動してくれッ...!異能・ダークアロー!」
"初めて使われる異能です。これより異能・ダークアローのコードを新たに作成します.....完了しました。それではどうぞ、闇アーチャーユウ様。"
スマホからそんな声が発せられ、言い終わると悠の地面に魔法陣が描かれる。悠達は眩しさで目を瞑ってしまう。
"異能・ダークアロー"
魔法陣が消え、目を開ける。すると医者と看護師達が目を赤くして悠の目の前に立っていた。
「「「御主人様、御命令を」」」
「...奈々を助けてくれ...」
「「「かしこまりました」」」
奈々は手術室へと運ばれる。ランプが点灯し、手術開始の合図がなる。
「びっくりした...お前、すごい異能手に入れたんじゃないのか?」
憐斗は感心しながら手術室手前のソファーに座る。
「...一体なんなんだこのゲーム?」
悠は深刻な顔でスマホの画面を見つめる。
「さぁな。俺にもわからないけど…やっぱリーダーってゲーム名なくらいだし、日本のリーダーを決めるんじゃないのか?」
「そういうのは政治家に任せておけばいい話じゃないか!殺し合いをしてまでリーダーになんかなりたくねぇよ!」
しんとした手術室付近に怒号だけが響き渡る。返事はない。
「.....落ち着けよ」
「...あぁ」
ただただ時間だけが過ぎていく。三十分は経っただろうか。
ピロン♪
重い空気に似つかわしくない軽快な通知音が憐斗のスマホに鳴る。
「...?」
通知画面には
"マッチング完了 今から対戦を始めます"
と書かれていた。
「おい!?たた、対戦相手は...!?」
"闇メイジレント
VS
光ウォーリアケン
「SHOWTIME、だね。よろしく。レント君♪」
- Re: リーダー ( No.3 )
- 日時: 2017/02/20 02:56
- 名前: そーれんか (ID: qESkNdgF)
「あー、レント君まだ一戦もしてないのかー。どんな戦いぶりか気になるなぁー!」
ニコニコしているケンと言うユーザー名の金髪男はスマホの画面を見ながら楽しそうに話しかける。
「ここは病院だぞ!?ここで戦うとか何考えてるんだ!」
悠はケンに怒鳴る。それでもケンはヘラヘラしていて神経を逆なでされる。
「いやぁ、ここ病院だし手術中だってことも分かってるよ?」
「だったら何で!?」
「うるさいなぁ...僕は今レント君と戦ってるんだよ?」
「ッ...!」
悠に段々とイライラが積もっていく。塵のように少しずつ、雨のようにはやく。
「悠...奈々ちゃんが起きるまで絶対病院から離れるんじゃねえぞ!」
「...憐斗?」
「何、ちょっと離れるだけだし、俺はそれなりに長くこのゲームをやってるんだ。メイジの特性でどうにかするさ!」
そう言って憐斗は出口に向かって全速力で走り出す。
「うへっ、僕走るの苦手なのに...」
そう言ってケンは憐斗を追いかけていってしまった。
手術のランプが消える。
「「「御主人様、手術が終わりました。彼女は生きています。」」」
奈々が助かった、その事実だけで足の力が抜け、悠はへたりと床に座り込む
「奈々...良かった...」
「うんうん、よかったね。僕的には死んだ方がよかったんだけど。」
「!?」
いつの間にか手術室にイールが立っていた。
「だからここでとどめさしちゃおうと思ったんだけど...」
眠っている奈々の首元にピタリと槍を当てる。
「やめろ!」
「うん、君が許してくれるとは思ってなかったよ。だからさ、取引取引!僕と君がマッチングして戦う。それで君が勝てば僕を煮るなり焼くなり好きにしてもらって構わない。けど僕が勝てば君の命とこの子の命を貰おうか...なんて」
「...俺が勝てば...奈々は無事なのか?」
「そうだね。どう?結構いいと思うけど。」
「乗った。」
悠は即答し、マッチング画面を開く。
"マッチング完了 今から対戦を始めます"
"闇アーチャーユウ
VS
光ランサーイール"
「そう言えば...イールって女の子なのか?」
「だから違うって言ってるだろ!」
- Re: リーダー ( No.4 )
- 日時: 2017/02/22 02:05
- 名前: そーれんか (ID: qESkNdgF)
メイジとウォーリアは何気に相性が良くない。ウォーリアは攻撃も防御も平均の万能型だがメイジは攻撃と素早さだけに特化しているため脆く死にやすい。それだけに防御型の職業でも充分通用する攻撃力だ。
"異能・稲妻の勇者"
ケンが異能を使うと、走る速さが尋常じゃない程上がり、あっという間に憐斗に追いつく。
「やっと追いついた...ぜー...ぜー...」
「げっ!」
憐斗は立ち止まり、間合いをとる。
「今度は止まるのか!?酷いじゃないか...こんなか弱い男の子にこんな重労働をさせるなんて...」
確かにひょろひょろの痩せ型に見えるがスマホにうつっているケンのステータス画面を見たところ、憐斗にひけを取らない手練で今の所19連勝もしていた。
「なにがか弱い男の子だ!か弱いってのは女の子に使う言葉なんだぜ!」
"異能・ダークカーススクエア"
魔法陣の筒ががケンの体をつつみバチバチと筒の中で雷のような音がする。
「...!」
「いてて...ビリビリする...」
魔法陣が消え、腰のあたりをさすりながらケンが出てくる。
「やーっぱりお前か弱くなんてねぇじゃん」
「酷いなぁ...」
「.....な」
憐斗は下を向きぼそっと何かを呟く。
「ん?なんて?」
聞き返すと憐斗は前を向きケンに向かって満面の笑みで言い返した。
「本来仲間同士なのに殺し合うって残酷だよな!」
そう言って憐斗はアプリをアンインストールする。リーダーを消したスマホを投げ捨て、ポケットからもう一台スマホを取り出す。
「俺は闇メイジレントじゃない。あれはサブ垢でね。本垢は光パラディンイラって名前なんだぜ?」
別のスマホでリーダーを起動し、強制的に対戦が終了したケンの方に歩み寄る。その間にどんどん憐斗の姿が変化していき、最終的に光り輝く鎧や兜を纏った姿になる。
「い.....イラ.....?ランキングの...あの...?」
ランキング、それは総合戦闘力が最も高い七人を載せている掲示板。その七人はプレイヤーにとって憧れである。
「そ。俺と対戦しようか?冥土の土産にな」
"特別戦を開始します"
"光パラディンイラ
VS
光ウォーリアケン"
「100連勝目指していっちょやりますか...!」
- Re: リーダー ( No.5 )
- 日時: 2017/02/27 23:30
- 名前: そーれんか (ID: qESkNdgF)
奈々、絶対、絶対にお前を死なせたりはしない。約束を破るのは嫌いだからな。
「っしょ!間合いを詰めないと攻撃できないのはわかってんだけどこう一歩一歩の歩幅がでかいと詰めにくいんだよ!」
アーチャーはエルフの力が宿っておりそれによって移動速度や回避率はどの職業にも引けを取らない。とゲーム画面に書いてある。真偽は定かではないが初めて持った弓を熟練のように扱えるあたり、嘘ではないのだろう。
...しかしこのゲームは一体何がしたいのだろう?課金もなく、広告もなく。普通こんなことをしているとサーバー費やら給料払ったりで相当な料金がかかるはずだ。そして...なんで国のリーダーを決めようと?どうしても謎だった。しかし考えたって答えが出るわけでもない。悠は頭をポリポリとかき、意識を集中させた。
"ダークエルフの弓"
異能ではない、ただの技。簡単に出来るものの威力も同様に低く攻撃力などステータスを上げる技には制限時間が設けられている。
そして、クールタイムというものも存在し、その時間が終わらない限りその技は使用することが出来ないというもの。技は例外を除き一人五つ持つことが出来る。
「うげっ!いくら数秒とはいえ攻撃力増加はやめてくれよ...」
イールは槍をぐっと強く握る。
"ドクリンゴ"
槍先は毒を帯び光り輝いていた先は紫色に染まっていく。
「毒りんごって...白雪姫が何か?やっぱりお前は女の子...」
「うるせぇ!男が白雪姫好きじゃいけねぇのかよ!」
顔を真っ赤にし槍を投げる。
悠は苦笑いをし、弓を構えた。
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