ダーク・ファンタジー小説
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- サイレントスペース
- 日時: 2017/02/26 19:46
- 名前: ヨル (ID: 5YaOdPeQ)
サイレントスペース。
脱出不可能の白い立方体。
この空間では喋ることが一切許されません。
残された希望は自分を信じることのみ。
さあ、まずは目の前のドアまで進みましょう。
来ましたね?
では、お手元のボタンにご注目ください。
赤のボタンと青のボタンがあります。
どちらかを押せばドアが開きます。
正解は一つのみです。
不正解のボタンを押せばゲームオーバーです。
ヒントは、X+1000分の1秒です。
あなた達は喋れません。
制限時間は、10分です。
さあ、頑張ってください。
ドアの向こうで、待っています。
- 作品紹介 ( No.1 )
- 日時: 2017/02/26 19:50
- 名前: ヨル (ID: 5YaOdPeQ)
どうも皆さん、初めまして。ヨルという者です。
えー、いきなり意味不明な文章が現れて、動揺していると思いますが、すいません。
この作品は、サイレントスペースと呼ばれる一切喋ることのできない空間に閉じ込められてしまった主人公達が何とかして脱出を目指すという感じです。
サイレントスペースには、様々な問題が待ち構えています。
是非、皆さんも主人公達のように思考錯誤して問題を解いてみてください。
また、物語も読んでください。
楽しんでもらえるよう、頑張ります!
- サイレントスペース 第一部屋 ( No.2 )
- 日時: 2017/02/26 20:23
- 名前: ヨル (ID: 5YaOdPeQ)
第1章 『希望』
喋ることの出来ない空間。
喋るという行為は、生きていく上で必須だと言っても過言では無い。
それが封じられた空間で、難題を解き進まなければならない。
希望は、あるのだろうか?
第1話 『サイレントスペース』
俺は、普通の人間だったはずだ。
普通に寝て、普通に起きて、普通に友達と遊んで、普通に学校に行って…。
今日もいつも通り起きたはずだった。
なのに、目が覚めたその場所は、俺の知っている場所では無かった。
白い。とにかく白い、四角い部屋。
突然アナウンスが流れた。高い、無機質な声。
分かったことは、3つだけ。
1つ。この空間が一切喋ることの出来ない『サイレントスペース』という場所だということ。
実際に声を出そうとしても、声は出ない。理由は分からないが、とりあえず喋ることはできないようだ。
2つ。この空間から脱出する事が今やらなければいけない事だという事。
3つ。この状況下に置かれているのは、俺1人だけじゃないという事。
アナウンスは『あなた達は喋れません』と言った。つまり、俺だけじゃ無いのだ。
とりあえず俺は、昨日の事を思い出してみた。
昨日は確か学校から帰って来て早く寝たはずだ。
昨日は7月2日だったはずだ。
ポケットの中に入っていたスマホを取り出し日にちと時間を確認した。
【7月3日 8時1分】
つまり、俺が昨日寝てから起きるまでの間に俺はどういう訳かこの空間に来てしまったという訳だ。
意味が分からない。が、何事も進まなければ分からない。
とりあえず、今はこのドアを開ける事に専念しよう。
まずは条件を整理しよう。
スマホを取り出し、メモアプリを開いた。
1.赤のボタンと青のボタンの内、どちらかが正解でもう片方は不正解
2.不正解はゲームオーバー
3.ヒントはX+1000分の1秒
4.制限時間は10分。
恐らくこれが始まったのは8時だ。
そして今は8時3分。つまり7分が残りの制限時間という訳だ。
次に、俺は持ち物を確認してみた。
ハンカチ、スマホ。以上。
寝る前にズボンのポケットに入っていた物だ。
やはり、昨日寝た状態でこの空間に来てしまったという事だ。
証拠に、俺は寝るときに着用しているジャージを今身につけている。
まあ、今はどうでもいい。
ヒントの『X+1000分の1秒』。これが全く意味が分からない。
1000分の1秒。これが何かを意味しているのは分かるが、それが何かが分からない。
Xがあることから、1000分の1秒は何かの英語に変換する事ができるという事なのだろう。しかし、1000分の1秒など聞いた事がない。
くそ、どうすれば…。
…待てよ。
アナウンスは『あなた達は喋れません』と言った。
それ以外のルールは、何も言っていない。
つまり、喋る以外であればどんな手段を使ってもいいという事だ。
俺はスマホで時間を確認した。
8時5分。残り時間はあと5分。
それだけあれば何とか間に合うだろう。
俺はスマホを起動し、ネットを開いた。
1000分の1秒が分からないのなら、ネットで調べてしまえばいい。
これは恐らくいきなりこの状況下に置かれたことと制限時間10分という短い時間が設定されている事で、パニックを起こさせる事が真の目的なのだろう。
しかし、落ち着いて考えればネットを使って調べるという誰でもできるような簡単な攻略法が見つかる。
問題は、『X+1000分の1秒』があくまでヒントという事だ。
ネットで調べたところで、時間が間に合わないかもしれない。
いかに早く、冷静になれるかが重要なんだ。
何が起こっているかは分からない。
だから、今何が起こっているのか、このサイレントスペースを進み、真実を知ってやる。
自己紹介が遅れた。俺の名前は天月 四季。普通の高校生だ。
- サイレントスペース 第一部屋 ( No.3 )
- 日時: 2017/02/26 21:02
- 名前: ヨル (ID: 5YaOdPeQ)
第2話 『解』
調べた結果、1000分の1秒の『秒』は時間の単位ではなく角度の事だという事がわかった。
さらに、『秒』の1000分の1の事を、英語でmilli arc second、略称『MAS』という事も分かった。
これらの事実を踏まえ、もう一度ヒントを見てみよう。
『X+1000分の1秒』
そして、1000分の1秒をMASにしてみると。
『X+MAS』
という風になる。
そして、足してみよう。
すると、『XMAS』。つまり、『クリスマス』となる。
つまり、ヒントは『クリスマス』なのだ。
ヒントはわかったが、このヒントが答えにどう繋がるのかが分からない。
とりあえず、クリスマスに関係する事などを頭の中で思い浮かべた。
イエスキリストの誕生日、ケーキを食べる日、祝う日、12月25日、クリスマスイブがある、サンタがプレゼントを届けに来る、トナカイ、ソリ、靴下、クリスマスツリー、リア充がイチャつく…。
サンタ、靴下などは赤色が多い。つまり答えは赤か?
しかし、そんな単純なわけがない。
クリスマスがヒントなのだ。
答えは何だ?クリスマス…。クリスマス…。赤…。青…。
赤…。青…。
そもそもなんで赤と青なんだ?赤と言ったらクリスマスのイメージがあるが、なぜ青を…。
迷わせるため?動揺させるため?
…違う。
アナウンスは『残された希望は自分を信じることのみ』と言ったんだ。
迷ってはいけない。
自分を信じるんだ。
…待てよ?
『X+1000分の1秒』がヒントだ。
なぜ『+』なんだ?
わざわざ+を使った理由…。
『X+1000分の1秒=クリスマス』
=が重要だ!
わざわざ+を使ったのは、=を強調させるため。
つまり、クリスマスと=、クリスマス=〇〇の〇〇を考えればいいんだ。
クリスマス=サンタ?違う。断定はできない。
クリスマス=キリストの誕生日?これはあっているが、それが赤か青かと問われたら答えることはできない。
クリスマス=12月25日?12月…25日。12月…。十二月…。
!!
そういうことか。
残り時間はあと1分。ギリギリだったな。
答えは、『青』だ。
俺は勢いよく青のボタンを押した。
その瞬間、ドアは開いた。
正解だ。
なかなか凝った問題だったな。
解くのが面白かった。
俺は今、この状況を面白いと感じている。
自分でも不思議だ。
でも、なんとなく理由は分かる。
『普通』の日常に、俺は退屈していたんだ。
このような、刺激のある状況を、俺は知らず知らずのうちに望んでいたのかもしれない。
ドアの先は長い通路が続いていた。
俺は歩き始めた。
そして、進んだ先にはドアがあった。
『ドアの向こうで待っています』
アナウンスでは確かにそう言っていた。
このドアの先に、この状況を仕組んだ奴がいる。
面白くなってきた。
この状況、なんと呼べばいいのだろうか?
まあ、『ゲーム』でいいか。ゲームオーバーって言っていたしな。
俺はドアノブを握った。
声を出そうと思ったが喋れない事に気がつき、仕方なく心の中で叫んだ。
《さあ、ゲームスタートだ。》
- サイレントスペース 休憩部屋 ( No.4 )
- 日時: 2017/02/27 19:38
- 名前: ヨル (ID: 5YaOdPeQ)
第3話 『邂逅』
ドアを開けた先は、やはり白く四角い部屋。
今度は何が始まるのか、俺は早速気構えた。
しかし、その必要はなかった。
「やあやあ、会いたかったよ〜。」
突然声がした。
急いで周りを見渡すと、いつの間にか隣に自分より背が小さい男の子が立っていた。
いつからここに?と疑問を抱いたが、それより前にある疑問が浮かんだ。
どうしてこの子は喋れているんだ?
「どうしてこの子は喋れているんだ?そう思ったね。天月四季君。」
俺は心の中で思っていた事を口に出され、びっくりした。
自分の名前をこの小さな男の子が知っていた事にも、びっくりした。
「喋れるのも当然。このサイレントスペースは僕が作り出した空間なんだ。どうとでもいじることが出来るさ。」
この少年がこの空間を作り出した!?
こんな小さな男の子が!?
一体どういうことなんだ?
まあ、それも気になるが、今この男の子はいじることが出来ると言った。
つまり、彼が喋れているのではなく、この部屋は喋ることが可能という事になる。
なら、俺は声を発することが出来るはずだ。
「…お前は一体何者だ?神かなんかか?」
やはり、予想通りだ。
俺は少年の正体を暴こうとした。
まあ、そんな簡単には教えてくれないだろうが。
「おお、この部屋が喋ることが出来るようになっている事に気がついたんだね。さすが〜。僕の名前はシキ。君と一緒の名前さ。神様なんだよ。」
…教えてくれたな。
それにしても、本当に神様か。いたんだな、神様。
信じてはいない。むしろ、俺はそういう界隈の事は否定派だ。
しかし、サイレントスペースと呼ばれるこの意味不明な空間を作り出したというならば、神様だと納得しておけば無駄な労力を割かずに済む。
「…神様が俺に何の用だ?そもそも何でこんな事してる?」
さっきからシキは俺の事を知っているような感じの口調で話している。
俺はシキに出会った記憶がない。
赤髪で赤色の目をしているため、もし会ったことがあるならば記憶に残るはずだ。
「シキでいいよ〜。僕はね、四季君。君の事をずっと前から知っていた。君が生まれた時から。君でも知らないような君の事を僕は知ってるんだ。君は『普通』じゃない事とか、ね。」
突然現れてはペラペラ喋りまくるな。この神様は。
俺の事をずっと知っていた、か。だとしたらおかしいだろう。
俺は『普通』だ。誰がどう見ても、『普通』の人間。
普通に過ごして、普通に生きてきた人間だ。俺が『普通』じゃないってんなら、じゃあ他の人間はどうなるんだ、って事になる。
「君は今心の中で僕の言った事を否定しているね?ひどいな〜。せっかく喋れるようにこの部屋設定したのに口にしてくれないなんて。でも、君は『普通』じゃないよ?『普通』の人間だったなら、さっきの問題は解けない。『普通』はあんなに冷静になれない。『普通』はあんなに頭の回転が早くない。何より、『普通』は神が目の前に現れたらとりあえずパニックを起こす。君は僕を前にしても微動だにしなかった。それが何よりもの証拠なのさ。」
散々言うな、この神様は。
長い話をすると他人は途中で飽きてしまうぞ?外見だけでなく中身までお子ちゃまなのか?こいつは。
「分かった分かった。とりあえずお前の中では俺が『普通』ではないという事が分かった。で、それが俺に会いにきた理由にどう繋がるんだ?」
シキはニッコリとして答えた。
「これは『ゲーム』だよ、四季君!君ならこのゲームのエンディングに辿り着くことが出来る!!ゲームマスターの僕の身としては、そんな勇者に出会っておきたかったんだよ。」
ほう、俺の『ゲーム』という表現は公式だったようだ。
シキは終始笑顔で話している。
言っていることは全部本音だろう。
俺がこのゲームをクリアする勇者だと思っているのだ。
しかし、俺は王道ゲームの主人公のような特殊な力は何も持ち合わせていない。
それはこれからも同じ。進めて行く上で何か特別な力に目覚める、というわけでもないだろう。
なのに、こいつは俺をクリアに導く勇者だと言った。
…言ってくれるな、本当にこの神様は。
「それじゃあこのゲームをクリアさせてやるよ、神様。」
ゲームマスターに対して俺は宣言した。
もう前言撤回はできなくなった。しかし、それでいい。
俺が『普通』じゃないというのなら、じゃあ俺は何なのかを確かめてやる。
俺は今からこのゲームの主人公だ。
「ちなみに、このゲームを始めた理由はね。」
そういえばそんな事も質問してたな。
一体どんな理由だ?
神様の事だから凄い理由があるに違いない。
いや、案外くだらないのかもしれない。
一体どんな理由なんだ?
「僕に勝ったら教えてあげる。今から僕と君で勝負しよう。」
…いきなりボス級の相手が来ましたな。
チュートリアルを終えたばかりの駆け出し冒険者にいきなり特大クエストですか。なかなか鬼畜だな、このゲーム。
いいぜ、やってやる。
「エクストラゲーム、始まり始まり〜!!」
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