ダーク・ファンタジー小説
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 愛を謳って
- 日時: 2017/03/04 00:06
- 名前: 胡桃バター (ID: FsLlRaQk)
貴方の様になりたかった。
だけど、
気付いたら自分を失っていた。
貴方さえ私の目の前からいなくなって。
私には、背中を這う罪悪感しか残らずに。
嗚呼......貴方への愛を謳っていたかった。
- Re: 愛を謳って ( No.1 )
- 日時: 2017/03/04 00:18
- 名前: 胡桃バター (ID: FsLlRaQk)
私はある先輩が好きでした。
この黒社会の中でもあんなに澄んだ瞳の持ち主がいるんだと、
私は一目で恋をしました。
私は国でも名の知れた、あるファミリーの一員でした。
その中でも私は腕が立つようで、大きな仕事をよく任せられて。
ファミリーの中の構成員には並ぶ者がいないくらい
強かったんだと思います。
......何故なら私がいつも血に濡れて、ファミリーに避けられていたから。
*...*...*...*...*
- Re: 愛を謳って ( No.2 )
- 日時: 2017/03/05 21:53
- 名前: 胡桃バター (ID: FsLlRaQk)
「キミいつもそれ食べてるね」
いきなり背後から声を掛けられた。
声のする方へ振り向くと、一人の男の人。
「............」
私はその人を見つめながら、ただ口を動かして
クリームパンを全て口の中に収める。
「あ、隣座ってもいーい?」
男の人は私の隣を指さしてふんわり笑う。
その問いに答えるべく、ごくんっと喉を鳴らしてパンを飲み込む。
「......んっ、どうぞ」
「ありがと。いやー、静かに食べられる場所がなかなか無くってさ」
彼は私に申し訳無さそうにはにかみ、持っていた袋から
サンドイッチをひとつ取り出す。
暫くそれを輝く瞳で見つめてぱくっと食いついた。
「......ひとつで足りるんですか、お昼」
「ん? ......あぁ、僕あんまり仕事まわって来ないんだよねー」
あはは、と照れ臭そうに笑って頭を掻く。
......子供っぽい表情をする人だな。
私はなんだか気になって...相手の顔を穴があく程じぃっと見つめる。
黒い髪に黒い瞳。肌は健康そうな小麦色。
ここらではあまり見かけない日系人の様だ。
何より瞳が澄んでいて吸い込まれそうなくらいで。
......清く美しい。
私は一目で彼に惹き付けられて、
同時に恋に落ちた。
- Re: 愛を謳って ( No.3 )
- 日時: 2017/03/13 21:22
- 名前: 胡桃バター (ID: FsLlRaQk)
淡く澄んだ夢に落ちた様な、
彼の瞳を見ていると......この血の臭いが染み付いた身体でも
浄化されていく気がして。
気付いたら、彼の頬に触れて。
「あの............?」
「_____あ」
ふと我に返って目の前の男性を見つめる。
その表情は若干困惑している様だ。
私は急いで触れていた手を離す。
「ご、ごめんなさい...一人で盛り上がってしまって」
手を後ろに隠して横に垂らしてある長い髪をいじる。
......私の照れ隠しの癖。
でも彼は先程まで私が触れていた頬を自分で軽く撫でてから。
「...僕にこんな興味示してくれた人は始めてだよ」
「ちょっと、見てくれて嬉しかった...かな?」
私に話し掛けて来た時みたいにはにかんだ。
途端に私の頬へ熱が集まる。
......私らしくない。
- Re: 愛を謳って ( No.4 )
- 日時: 2017/06/08 21:51
- 名前: 胡桃バター (ID: TPtU8hBo)
私が頭の中で盛り上がっていた内に
彼はサンドイッチを食べ終えた様だ。
「えっと、じゃあ僕は行くよ。ありがとね」
何も「ありがとう」なんて言われる様な事はしていないのに。
寧ろ貴方を困らせただけなんじゃないか。
そう思ったけど、代わりに別の感情が口から飛び出る。
「あ、あのっ」
私は咄嗟に、私に背中を向けた彼の服を掴む。
「明日も、ここに来ますか......?」
そう言った後に私は口に手を当てた。
こんなこと、言うつもりは無かったのに......。
そんな私に彼は一瞬驚いて。
でもすぐ微笑んでくれた。
......何処まで人が良いんだか。
「君が良いなら、明日も来るよ」
彼の澄んだ瞳が昼下がりの光を吸い込んで、私を照らす。
「えと......また宜しくね」
___________嗚呼。
なんて綺麗な人なんだろう。
私は溜め息が出るくらいに綺麗な彼を
好きになってしまった。
そんな彼のことを不幸にしか出来ないのに。
Page:1