ダーク・ファンタジー小説
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- 私達は狂っていない
- 日時: 2017/03/12 18:52
- 名前: 蕨餅 (ID: 8topAA5d)
この世界には老衰以外には実質、「死」というものがない。
どんなに酷い怪我をしても数分で体が再生する。
そしてまた当たり前のように日々を歩む。
でもそんな世界であっても
どの世界でも
「欠陥品」というものが存在する。
どこかがたりなかったり
どこかが使えなかったり
といった欠けて足りないもののことだ。
この話はそんな狂った世界と欠陥品の話。
- 私達は狂っていない ( No.1 )
- 日時: 2017/03/14 01:43
- 名前: 蕨餅 (ID: gZQUfduA)
プルルル…プルルル…
ガチャ…
早朝というのに電話とは
ほんとに嫌気がさすものだ。
「はいっ…ミヤベでーす。」
「お前、さっさと現場にこいやーぁ!」
キーンと耳鳴りがする。
「いや、あの…後輩ちゃん。
今ね朝の5時42分だよ……。」
「朝だろが仕事は仕事です!
10分で支度して来てくださいっ!」
ブツっ!という彼女の怒りを
表すような音で電話は消えた。
今時の子なのにとても元気なことだ。
ぐーと背伸びをして、頬を叩く。
さて、彼女の血圧をhighでMAXさせる前にさっさと行きますか。
- 私達は狂っていない ( No.2 )
- 日時: 2017/03/19 15:57
- 名前: 蕨餅 (ID: jX/c7tjl)
「先輩遅いですよ!」
目の前で頬を膨らませて怒る彼女はモトガネ シオリ。警部補である。
彼女といったら真面目と誰もが答えるほどの真面目ちゃんである。
「ごめん、ごめん。君と会うとならばおめかししないといけないって思って。」
「冗談は寝てから言ってください。」
辛辣である。
「はいはい、じゃあ冗談はここまでにして。シオリ君、状況は?」
「はい、ですが今回の事件は妙なんですよ…。」
「妙というと?」
彼女はメモをパラパラと開き、淡々と情報を読み始めた。
「被害者は〝雛菊 ソウ〟 24歳。男性。あと、死亡しています。」
「〝欠陥者〟かい?」
この世界では老衰がないため、若くして死ぬなどありえず、ただ例外なのが身体的な異常を持ち生まれる〝欠陥者〟だけである。欠陥者のみ事故や怪我で死ぬのである。そのため社会的地位は低く、数も希少である。
「……それが…いいえ。正常者なんです。」
「それは…妙であるな。本当に正常者なのか?」
「ええ、免許証にもきちんと書いてありました。」
「そうか…。とりあえず現場を見に行こう。」
- 私達は狂っていない ( No.3 )
- 日時: 2017/03/19 16:16
- 名前: 蕨餅 (ID: jX/c7tjl)
殺人現場となったのはある廃工場。
ギギギ…という音と共に重く扉が開く。その瞬間、鼻を刺すような鉄の香りと死臭が体にまとわりつく。
「ひどい…」
彼女が目を見開く。
そこには血を床下に垂らしながら力なく首を落とし、宙に浮く哀れな男性がいた。
腹の部分は肉がえぐれて原型がないといっても過言ではない。
「うん、これは酷い。シオリちゃん大丈夫?まだこういうの慣れてないでしょ?」
この世界では殺人事件などは滅多に起こらない。新人にとってはかなりキツイものだろう。
「…人ってこんな風に死ぬのですね。私は大丈夫です…。調査を進めましょう。」
といい、口をハンカチで押さえながら死体に寄る。全く、彼女には関心ばかりをする。私だって最初、死体を見た時はその場で動けなくなってしまったものだ。
「ひっ…!?」
「どうしたっ!?」
「この人の顔…笑っているんです…」
彼女の言う通り、力を無くしていながら不気味な笑いを留めたままにしている。
「これはちょっと面倒なことになったねぇ。シオリ君、一旦本部に戻るよ。」
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