ダーク・ファンタジー小説
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- ストラグル 守護神の受難
- 日時: 2017/04/14 17:58
- 名前: 狂yuki (ID: OLpT7hrD)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2a/index.cgi?mode=view&no=4842
これは、十文字 麗子がかつて紡いだ、過去の戦いの話
極東大軍事拠点第三都市最前線基地付属訓練学校。通称SFSと呼ばれるその学校の、グラウンドと呼ぶには大きすぎるほどのグラウンドで、訓練は行われていた。
『十文字 麗子、お前は死にてえのか!最大までスピードをあげろ!相手は強襲型のセラフィムだぞ!』
「す、すみません、辰巳教官!」
無線越しの教官の声。
訓練とはいえ、失敗すれば最悪の場合死ぬこともある。気は抜けない。
『高岸 あゆみ!援護はもっと離れてろ!気付かれるぞ!』
『す、すみません辰巳教官!』
今回の訓練は強襲型セラフィムが大群で襲撃してきた場合を想定している。
勿論そんなシチュエーションは滅多にない。
セラフィムとは、地球を第二の拠点にしようと侵略を続ける巨大知覚生命体である。
人間はその侵略に一度は絶望したものの、メシアを開発し、既に主要都市の一部を奪還しようとしている。
現在の技術でセラフィムと戦闘して生存出来るのは5人中2.3人。つまり半分も生存出来ない過酷な戦場が待ち受けている。
「此方十文字 麗子練習機ホトケ1号機、ランチャーパックを小野田 優子練習機亜ホトケ1.7号機に送る!」
『了解...あああああああっ!!』
無線がビリビリと、鼓膜を破るような音をたてる。
亜ホトケ1.7号機は、武器を受け取ろうと伸ばしたアームをごっそり切断されていた。
『馬鹿か!敵に隙見せてどうする!』
『...ぐっ...!』
無線越しでもその衝撃は充分伝わる。
『糞が!...訓練を終わる!各員模擬戦闘対象のシステムを停止!』
「ったく、お前ら何回訓練中断すれば気が済むんだ。こんなことじゃ、戦場では即死だぞ」
「...すみません...」
辰巳教官は、謝る優子を尻目に続ける。
「それに、だ。お前らもお前らだ。何故コイツのアシストが一人も動かなかった」
すると優子が「私の独断です。サポートをすれば、その人が危険に晒される、だからです」
「...」
辰巳教官は一瞬黙り込み、
「馬鹿が...」
と吐き捨てた。
麗子は思わず、それに抗議した。
「教官、それはないと思います。彼女は独断とはいえ、部隊を優先したのです。責める理由は...」
「馬鹿が、つべこべ言うんじゃねえ!戦場で独断が通用するなんて思うな!」
すると、あゆみも優子に加勢した。
「あの判断は正しかったと思います。亜ホトケ1.7号機は比較的性能が低く、戦場では最も狙われやすい。だから、あの状況では、あれが最善の判断だったと」
「...はっ、ガキのくせに随分合理的なことを言うんだな。まあ今回はそれでいい。さっさと寮に戻れ。放課後まで問題児に振り回されんのはごめんだ」
と、辰巳教官は手で麗子達を追い払って、さっさと執務室に戻って行った。
「............教官。訂正したのに、謝りもしないで...。...大丈夫だった?優子」
「う...うん」
「仕方無いよ。私達、まだ訓練兵だもの」
麗子は優しく声をかけ、肩をさすった。
すると優子は泣き出した。
「う、え...あああああん!」
- Re: ストラグル 守護神の受難 ( No.1 )
- 日時: 2017/04/11 11:28
- 名前: 狂yuki (ID: Uj9lR0Ik)
麗子は最上級学年、つまり四年生だった。
SFSでは
一年生:セラフィムに関する生物学と兵器学
二年生:基礎訓練
三年生:実戦(支援)
四年生:実戦と卒業試験
というカリキュラムが組まれている。
休みは1日もなく、病欠でもしようものなら自宅及び寮に特務員がやってきて、強制登校させられる。
そんな学校に、麗子はいつも幼馴染と一緒に通っている。
クローリー・レイン。
中々の好青年で、成績と女受けだけはよかった。
しかし、女受けがいい彼は浮気性でもあった。
彼は麗子と恋人(麗子はそんな気、全然無しなのだが)ということになっているのに、麗子の前で何人もの彼女を作っているのだ。
「よぉ麗子。何か今日は元気ないな、どした?食い過ぎか?あれほど松代養護教諭に注意されたばっかだろ」
「違うわよ馬鹿!」
「おー怖。やっぱ女のヒステリックってこえぇ」
「クローリーイィィィィ、人のプライベートに付け入るなって何度も言ってるでしょー!」
「ひいぃ!暴力反対!俺をセラフィムみたいに扱うなーっ!」
- Re: ストラグル 守護神の受難 ( No.2 )
- 日時: 2017/04/12 12:22
- 名前: 赤湖都 ◆Q8ehryREQw (ID: /48JlrDe)
- 参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=478.jpg
地球はセラフィムの侵攻で醜い世界となった。
街は破壊され、人口は約半分にまで減少し、各地で規格外の大災害が発生。
災害を引き起こす、自然干渉型のセラフィムによってマグニチュード13レベルの地震や100メートル級の津波、また中心気圧がおよそ810ヘクトパスカルの台風を観測している。
国連や主要国保護同盟会議はこれを由々しき事態だとして警鐘を鳴らしているが、
戦闘兵器としてのメシアの汎用性や技術が不充分であることから、いまだに対策は練られていない。
日本の東郷首相とドイツのツェッペリン首相が会談を開いた時も、このことに関しては全く触れられなかった。
自然干渉型セラフィムは更に、存在確認が出来ないという特徴を持つ。故に、その位置が確認出来るまでは狙撃などは出来ない。
セラフィムから奪還されていながら、まだ避難命令が解除されていない都市が多いのも、
どこに自然干渉型セラフィムが潜んでいるか分からないからである。
日本を含め、セラフィムの猛攻に耐え抜いた国々も、数個の都市しか残っておらず、危機に瀕している。
- Re: ストラグル 守護神の受難 ( No.4 )
- 日時: 2017/04/12 20:27
- 名前: 狂yuki (ID: bmJ5BkM0)
- 参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=480.jpg
麗子が亜ホトケ1号機を駆る。
武装は簡易装備ライフル一本。
ようやく防衛戦略委員会が、自然干渉型セラフィムとの戦闘にも対応出来るよう、軍に求め始めたようだ。ライフルだけで遠方の敵を破壊するのがこの日の訓練内容だった。
重要なのは、接近するスピードと、射撃を開始する距離、仕留めるまでの時間。
接近は出来るだけ高速でしなければならない。だが、高速では敵を捕捉しにくい。
そして射撃開始距離。あまりに近いと、カウンターを喰らって撃墜されかねない。
仕留めるまでに時間がかかっても、やはり撃墜される。
これらの難題を即座に判断して、対応していかなければならない。
自然干渉型セラフィムに関しては、いまだその生態を調査中だが、
ドイツの調査機関アインによると、これらのセラフィムは自然と同化し、発見が困難である可能性が高いという。
バレット斉射。しかし命中しない。
「.....ぐっ!」
目の前だけではだめだ。
仲間もいるのに。
仲間の機体も射撃を始めた。
ゼロ距離になれば確実に全滅する。
その前に.........!
- Re: ストラグル 守護神の受難 ( No.5 )
- 日時: 2017/04/13 16:36
- 名前: 狂yuki (ID: 9AGFDH0G)
辰巳が駆る隊長機、指揮官専用ホトケ・あ号に無線で連絡がはいった。
『横須賀基地をセラフィムが包囲している模様。数は特攻型650体、歩兵型3479体、砦型24体。更に、自然干渉型と見られるセラフィムが潜伏し、濃霧と妨害電波を発生させている模様。現在基地の全ての機能が停止しており、此方からセラフィムを攻撃出来ない状況にある。援護を求む』
ついに来たか。
自然干渉型セラフィムがついに、自ら御出座しか。
辰巳は焦りを感じていた。
メシアのスペックの低さと、麗子達の技術の未熟さが命取りになるのは確実だ。麗子達にはのびしろがあるが、メシアのスペックが急激に上昇するなどということは考慮しがたい。
最悪の場合、何の勝算もなく自然干渉型セラフィムと対峙することになる。
そうなれば、麗子の部隊が全滅するのはほぼ確実だ。
辰巳は麗子達を大切に育てていた。仲間の死を何よりも嫌う彼女等だからこそ、
その仲間を死なさないで済むよう、連携や隊列を厳しく教え込んだ。
時には通常の5倍ほど訓練をさせるなどの、恨まれても仕方無いような鍛え方もした。
だからこそ、彼女等には死んでほしくない。
死なせないためなら、どんなに恨まれてでも、強くする。
「此方辰巳。おい、麗子」
『は』
「訓練は中断だ」
『...また、我々が何かしたというのですか』
「違う!」
『............では何でしょう』
「横須賀をセラフィムどもが包囲している。その中に自然干渉型セラフィムが混ざっている可能性が高い。俺は今からそれを止めに行く」
『......!』
「あー、先に寮で反省会してろ。帰ってた時に『反省ノート』が提出出来てなかったら風呂禁止!いいな!」
『し...しかし隊長!実戦用メシアに特別なチェーンを施した訓練用メシアでは...!』
「指揮官専用機だ、そう簡単に蜂の巣にはならねぇよ!いいから帰ってろ!さっさとしねえと明日も風呂禁にすっぞ!」
『............必ず、帰還を...!』
その麗子の声は、本気だった。
はっ。...帰ってきたら、まーたうるさく説教されんのによ。アイツ...。
辰巳はホトケ・あ号を駆り、横須賀へと向かって行った。
グラウンド東倉庫から数機、メシアが飛び立つのが見えた。まるで辰巳を追うように。
- Re: ストラグル 守護神の受難 ( No.6 )
- 日時: 2017/04/14 00:25
- 名前: 狂yuki (ID: bmJ5BkM0)
- 参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=481.jpg
横須賀基地
『東ゲートから幼少体セラフィムが侵入!』
『南の方向より更に歩兵型セラフィムが.....234体接近中!』
『此方東ゲート、コード-1073!セキュリティを突破された!』
『此方最新鋭処理機運用空母マキァヴェリ!主砲をやられた!制御不能!』
『メインタワーの内の全エレベーター停止!タンクに亀裂発見!』
『モニター、依然復帰しません!このままでは戦闘不能のまま占領されます!』
『援軍到着まだか!ここを占領されてしまったら、緑川大臣に何と言えばいい!』
『西ゲート戦闘開始から五分経過!依然膠着状態!』
危機的状況を伝える無線。
それが次々と消えていく。
濃霧により、メインタワーからセラフィムを黙視することは不可能となった。
更に、電波干渉によって、モニターなどにも映らない。
つまり、横須賀基地は完全に未知の敵に包囲されている。
.....と、その絶望的状況の中に、ひとつの希望が舞い降りた。
「うおおおらああああっ!」
辰巳のホトケあ号。
凄まじい勢いでセラフィムを薙ぎ倒す。
何度も。
何度も。
何度も。
触手が装甲を抉り、
牙がポンプを千切り、
溶解液が全てを溶かす。
それでも、
「俺は...退かねえええぇえっ!!」
頭から血を流しながら
脚を折りながら
腹を強打しながら
進んだ。
まるで勇者のように突き進んだ。
「ああぁrrryeaaaaaaaaaaaaaaaaaっ!!」
極限まで。
極限まで。
さあ決めよう。
セラフィムと人間、どっちが強いか?どっちが勝つのか?
勝てば生き残り、負ければ死ぬ。
死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ。
辰巳も、自然干渉型セラフィムに警戒することは怠らなかった。
仲間がついてきてくれているのだ。
自分の不注意で彼等を殺すわけにはいかない。
「くそっ!もっと力が必要だ!」
<grrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrraaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!>
セラフィム達の鳴き声が響く。断末魔だ。
辰巳は沢山沢山殺した。

