ダーク・ファンタジー小説
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- gravity ~限界無き始まり~
- 日時: 2017/04/27 00:08
- 名前: 狂yuki (ID: bmJ5BkM0)
- 参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=505.jpg
かつて、没落してしまった、ふたつの貴族。
バステード家と、アルトハイゼン家。
ドイツとイギリス。決して交わるはずのないふたつの家は、
運命に導かれたかのごとくして、惹かれ合った。
馬車。館のような建物に向かっている。
「...新居は広そうだね...少なくとも、前の家よりかは...」
だが、言葉とは裏腹に、少し不満そうな顔をするアーサー。
無理もない。
何度も引っ越しばかりさせられてきたのだ。
いい加減飽き飽きしてきていた。
父親のオズワルドが言う。
「我慢してくれるかね、これでも限界まで交渉したんだ」
だが、それには答えられなかった。父親がどれだけ頑張っているかを知っていたから。
しかし、この次の発言には答えざるを得なかった...いや、聞き返さざるを得なかった。
「今回、あの新居にはもう一人住むことになっている。
あの広さでもあまりお金がかからなかったのは、そういう事情があったのだよ」
アーサーは完全に動揺した。しないわけがない。
何だ、そのもう一人というのは。
気にならないようで気になるとかいう絶妙な感情ではない。
完全に意味不明というのが本音だ。
「何それ!?聞いてないよ...」
「ディルク・アルトハイゼン。アルトハイゼン家...ドイツの没落した貴族の一人息子だそうだ...」
その、如何にも高貴そうな没落貴族とやらと共に住むことになる館が、レンガひとつひとつまで見えるようになってきた。
すると、
「君がアーサー・バステードか」
馬車の横から声が聞こえた。
そこにいたのは、水色の髪と青い目が爽やかな少年だった。
燃えるように赤い髪のアーサーとは真逆のその少年は、続ける。
「僕はディルク・アルトハイゼン。ドイツの貴族の息子だ。よろしく」
ディルクは「没落した」と言わなかった。
だがそんなことはどうでもよく...
この男は馬車についてきていたのだ。
「も...もしかして君が...」
恐る恐る聞いてみると
「ああ、僕がその、同棲する者だ」
- Re: gravity ~限界無き始まり~ ( No.1 )
- 日時: 2017/04/28 08:07
- 名前: 狂yuki (ID: bmJ5BkM0)
「...ディルクか...よろしく(...中々清潔感があるな、育ちはよかったんだろうか...)」
馬車の中から握手をする。ディルクは快く、握手に応じた。
「よろしく!(...コイツか...バステード家の一人息子は...。フン、面白い。搾り取れるだけ搾り取ってやるぞ...!)」
ディルクの第一印象は何とも爽やかだった。なので、思ったほど、抵抗感なく、アーサーはディルクを受け入れることにした。
「もうすぐ館だ、荷物は僕が運ぼう(...さぁ!既に
お前は僕の策に嵌まろうとしているのだ!)」
「え、あぁ、ありがとう(えらく親切だな...案外友達になれそうかも...?)」
警戒心は解けた。よその国の貴族の息子と仲良くなろうとは思ってもいなかったし、正直はじめは躊躇ったが、
このディルクという少年に関してはそんなものを感じさせなかった。一切。一切だ。
館に入ると、召し遣いだったメアリが先に身辺の準備をしていた。
「...お疲れ様でございました」
財力は貴族と呼べない程度まで落ちたバステード家だが、
このメアリは、かつて父親のオズワルドに救われたか何かで、
報酬が払えなくなった今でも召し遣いとして働いてくれている。
- Re: gravity ~限界無き始まり~ ( No.2 )
- 日時: 2017/06/11 20:00
- 名前: 狂yuki (ID: WgIzNCa0)
ある日、二つの貴族が住む館に強盗がやって来た。
「うおぉい!命が惜しけりゃ金を寄越せミソッカスども!!」
ナイフを持っている。体格もいい。大柄だし、何か胸に十字マークがある。
「...コイツ、十字軍の類いか...」
アーサーは構えた。勝てないだろうけど関係ない。まさに名状し難いほどの覚悟を決めて。
しかし、
ダッ
「ぐわっ!!?」
ドスン
大柄の強盗を蹴り飛ばしたのは、ディルクだった。
一蹴り。なのに、強盗は吹っ飛んだ。
「......ふん、気軽に俺のものを盗もうとするんじゃないぞ、薄汚い俗物ごときが」
続く
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