ダーク・ファンタジー小説
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- びたーちょこれいと
- 日時: 2017/05/05 14:13
- 名前: 碧 ◆SOsDJiuk2Q (ID: zLrRR1P.)
【プロローグ】
「甘いものが嫌い」
そう言っていたから。
___だから、びたーちょこれいとを
買ったんだよ。
君のことばかり。
あれから何年も経ったというのに…
- Re: びたーちょこれいと[1] ( No.1 )
- 日時: 2017/06/19 18:40
- 名前: 碧 ◆SOsDJiuk2Q (ID: zLrRR1P.)
【1】
青い空、地面を照りつける太陽。
私は、後悔してる。
…あれが、君との最後の会話だった事を。
「淆なんて、もう知らないから」
感情的になってしまったこと___
後悔すらもう許されないのだろうか…
私の声も、もう___
…届かない___
魔法の言葉だった、あの言葉も。
小指を絡ませて約束する仕草より、
グータッチの方が良いと言って
繰り返してきた、あの温もりも。
出来ない。
教えてもらった算数の解き方。
まだ、忘れていないよ。
だって___
どんなにもがき苦しんでも、同じ時間は
二度とやってこないから。
新しい想い出は作れないから。
忘れてしまうことが、一番怖いから___
- Re: びたーちょこれいと[2] ( No.2 )
- 日時: 2017/05/05 17:11
- 名前: 碧 ◆SOsDJiuk2Q (ID: zLrRR1P.)
【2】
淆と私が初めて出会った日のこと、
淆は覚えているだろうか…
淆の優しい笑みに、私は魅了された。
ねえ、知らなかったでしょう。
私が淆に想いを馳せていたことに。
私はずっと、淆のことが好きだった。
淆は分かってなかった…
分からせたくなかった、という
表現の方が近いかもしれない___
淆に、好きな人がいることは
知っていたから。
「応援するね」
そう言ったのは、紛れもない
私だったから。
伝えればよかったのかもしれない___
でも、そんなこと許されなかった。
淆は、私を知らないから。
私は、淆に何も言わなかった。
淆は私の名前さえ、知らないだろう。
初めて会ったあの時から、
私のことなんて見てなかった。
あの時から、淆に好きな人が
いることを知っていたから___
教えることなんて、出来なかった___
- Re: びたーちょこれいと[3] ( No.3 )
- 日時: 2017/06/19 18:42
- 名前: 碧 ◆SOsDJiuk2Q (ID: zLrRR1P.)
【3】
丁度、淆の一回忌の時に私は
淆との想い出の品々を
眺めていて考えていた。
淆は私のことを聞かなかった。
だから、淆に一つだけ教えた。
「私は、ニンゲンでは無いの」
淆は無言で、頷くだけだったけれど。
本当は人間なんだ。
でも、ニンゲンでは無いんだ。
淆は、分かってくれたのだろうか___
「ねえ、今日は淆の一回忌だよ。
お墓参り、行かな…」
私の友達、陽葵が家にまで来ていた。
陽葵は途中で、言い出した
言葉を引っ込めた。
陽葵は、私をよく知る友達だ。
私の考えていることなんて、
安易に分かるのだろう。
「お墓参りでも、唯々墓前で
立ち尽くすだけなら邪魔だろう…
そんなこと、考えてるのでしょ。
いいよ、私だけで行くから」
陽葵は踵を返し、霊園に向かった。
「私は…
___淆の墓前には行けないから」
私は、そう呟いた。
- Re: びたーちょこれいと[4] ( No.4 )
- 日時: 2017/09/13 19:35
- 名前: 碧 ◆SOsDJiuk2Q (ID: zLrRR1P.)
【4】
私は、陽葵を追いかけ、
びたーちょこれいとを渡した。
「ビターチョコレート…」
陽葵は不思議そうにしていたが、
びたーちょこれいとを
持って行ってくれた。
ただ、陽葵はびたーちょこれいと、と
言わなかった。
ビターチョコレート、としか
言わなかったのには、陽葵なりの
理由がありそうだ。
「淆___」
淆の好きな人は那都さん…
私はあったことがない。
那都さんは立派な成人らしいが。
淆は知っていたのか___
…あのことも___
知っていただろう。
だから、あんな気持ちが生まれたのも
言うまでもない。
これならいけるかもしれない___
その気持ちもあり、私は一つだけ教えた。
「私は、ニンゲンでは無いの」
これしか、教えられなかったけれど。
「ねえ、淆のお母さんいるけど」
陽葵が慌しく玄関のドアを開ける。
私は何も、言わなかった。
「挨拶しに行こうよ。
あんなに仲良くしてたのに、
挨拶もしないなんて、無礼だと思うよ」
無礼でもいいと思った。
それより聞きたいことがあった。
「那都さんは、今何処にいるの」
陽葵に聞いた。
「隣の県の南町。
大きいから、きっとすぐ分かるけど
坂の勾配がきついから、気をつけなよ。
5の32。
今日中に行く訳じゃないよね。
一緒に行こ」
私は静かに頷いた。
それから私は息を吸い、一つ一つの
言葉を噛み締めるように言った。
「淆のお母さんに、会ってくる」
私は陽葵に言うと、淆のお母さんに
会いに行った___
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