ダーク・ファンタジー小説

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【滅びた世界の存在証明】
日時: 2017/05/25 15:36
名前: はむ。 ◆H5CzBEem7. (ID: XLtAKk9M)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=11853

——そこで学んだのは、神様はいないという事。あるのは……。


【読む前に】
・亀更新の予感がします。完成度は…保障できませんあああ
・荒らしは遠慮してください。
・コメントとアドバイスは大好物です。
・暴力的な表現が出てきたりします(微量ですが)。ゴミは毎回漁っています←
苦手な人はブラウザバックお願いします。

【目次】
〈プロローグ〉>>1
〈第一章 届かない祈り〉>>2-6
 ・孤独な子供    >>2
 ・失った子供    >>3
 ・色の付いた子供  >>4
 ・睨み合う子供   >>5
 ・眺める子供    >>6

【記録】
5/9  スレ設立
5/24  参照100!

【蛇足と余談のオンパレード】
*むだばなし
コメライを書こうと思ってスレ設立して、そのあと行き詰るという…。恋愛ものは難しいですね
*作家ぷろふぃーる
上のURLから行けます。暇でしたらどうぞ。

Re: 滅びた世界に花を添えて ( No.1 )
日時: 2017/06/01 10:23
名前: はむ。 ◆H5CzBEem7. (ID: pyCNEaEv)

<プロローグ>

 泣いている女児がいた。4歳くらいだろうか。おぼつかない足取りで人の波にもまれ、弾き出されて此方に飛び出してくる。いたたまれなくなって、女児に話しかけた。

「……どうしたの」
「おかあ、さんがいなくて、いな、いなくて、なんか、いなくて」

 まともに喋れずしゃくりあげる彼女の瞳は、母親譲りなのか藍色をしていた。正直煩いのだがなぜか無視できなくて、手を引っ張り銅像の前まで連れて行く。4歳だったら大柄なその背丈より高い台座に座らせて、辺りを見回した。

「アッカ!」

 凛とした声が聞こえた。気の強そうな女性の顔が、近づいてくる。母親らしきその女性は、やはり藍色の瞳を持っていた。アッカとよばれた女児は、嬉しそうに台座の上で飛び跳ねる。それを見た彼女は顔を歪めた。

「やめなさい! 神の御前でそのような、」
「やめなくていい」

 怒鳴った彼女の言葉をさえぎり、驚いた女児を見て……我に返った。何をこんなにも熱くなって。もう、分かりきった事なのに。2メートルを超えるその銅像には、首から上が無かった。右側の羽が折れ、服の皺は擦り減り、赤い文字で落書きが書かれていた。

『神はいなくなった』

 これを書いた人。それを、自分は知っていた。記憶が頭を通り過ぎ、懐かしさと悲しみが湧き上がる。
 台座に歩み寄って女児を抱き上げ、女性は此方を見た。金と緑のオッドアイ。驚いたように藍色の目が丸くなり、気まずそうに目を伏せた。

「娘を、どうもありがとう」

 頭を深々と下げた女性は、思っていたよりも過酷な運命を送っているようだった。垂れた髪の隙間から見えたうなじには、売婦の娘、と書いてあるように見えた。踵を返し女児の手を引いていく。女児がこちらを振り返り、満面の笑みを見せた。
 自分が母親と一緒に過ごしていたのは、14の時までだ。今はもう、顔さえも覚えていない。それは哀しい事ではなく、よくあることだった。
 時をしっかりと掴みなさい。そういう前に、二人の姿は消えていた。でも、それでいいのだと気づいた。これからはもう母親の顔が分からない、なんて事は減っていく。
 いや、そう期待しなければならない。これからを作るのはアッカ、君たちだよ。もう2度と合わないであろうあの女児に、そっと心で呟いた。

Re: 滅びた世界に花を添えて ( No.2 )
日時: 2017/06/01 10:24
名前: はむ。 ◆H5CzBEem7. (ID: pyCNEaEv)

〈孤独な子供〉

XX年 ある商人の手記

——まともな文章が書けるのは、多分祖父の影響だ。一世紀と少しの時を過ごしてきた祖父には、沢山の事を教えてもらった。これには凄く助かっている。この日記を書けるのもそのおかげだ。今日は、だいぶボケてきた祖父から面白い話を聞いた。たぶん絵空事だとは思うが、書いておこうと思う。なぜって……。うまく伝えられない。でも、祖父の目が金色に光ったように輝いた。でもまぁそれは気のせいか。
 祖父はいつものように椅子に座っていた。不思議な話をし始めたのは、夕食の時だ。
「この国は、歪んでおる」
 そう呟いた。最初は老人がよく言う、「最近の若者は」というやつかと思った。聞き流すつもりで、祖父の顔を見る。祖父は、家を建てると政府から配られる、振り子時計を睨んでいた。
「昔、身分制度という物はなかった。少なくとも、今の様にスラム街の子供に、レンガを投げつける奴なんていなかった」
 そこからの話は、うまく書けない。なぜかって、祖父の話す一つ一つが大切に見えて、どこを省けばいいのか分からないからだ。だから、祖父の話をまる写ししようと思う。

 ……泣いて泣いて枯れ果てて、涙を流す気力さえも失って。文字通り干からびて、力なく歩き始める。その姿を見た町の人々は、「汚い」と言う。他人事だからこその偽善をふりまき「可哀想」と眉をひそめる者もいる。
 子供たちは、どの声にも心を動かさなかった。石を投げても物を与えても動じない目。期待も希望も無く、ただ切実に本能のままに生きる姿。人々は、まるで公衆の面前で丸裸に剥かれた様な気分になり、子供たちの住処の近くは視線を逸らして足早に立ち去った。そして夜になれば今日の事を思い出し、暖かい寝床で気持ちよく眠る自分を必死で正当化した。

 ここでで一度、分かるか、と僕の反応を確かめた。正直言って、そうは思わなかった。スラム街の孤児たちは『異端者』なのだから。ゴミと同然、と友達と瓶を投げつけた事もあった。その事を言うと、苦々しい顔で祖父はうなずいた。「だろうな」と、諦めたように肩をすくめた。

 流れる時の中で、子供と自分を比較する人は減っていった。身分の違い。そう称して、正当化する事を当たり前の事にした。「可哀想」と眉をひそめる人は居なくなり、物を与える人も減った。汚いと含み笑いをする物は増え、石を投げる者は日常になった。時には、わざわざ買ったレンガを投げつけ、どうにかして子供の首を折ろうとする者もいた。それが恥ずかしい事だとは、だれも思わなかったのだ。
 勿論子供たちはなんの反抗もしなかった。生きるための最低限の活動以外に体力を使うのは、無駄だと知っていた彼らたちは、ある意味一番賢かったのかもしれない。
——子供たちの祈りは、まだ叶わない。

 そういうと、僕をじろりと見つめた。その時だ、祖父が本当の事を言っているのではないかと思ったのは。……とはいえ、こんな夢物語のような事誰も信じない。信じられない真実は夢物語だ。しょうがないから、紙芝居屋のジョーにでも話してやろうか。確か、最近ネタが尽きてきたと言っていたな。



抹殺完了。手記の回収、『夢物語』の拡散の有無、共に確認済み。問題なし。
神の仰せのままに。

Re: 滅びた世界の存在証明 ( No.3 )
日時: 2017/05/23 12:46
名前: はむ。 ◆H5CzBEem7. (ID: 9rKDLQ3d)

〈失った子供〉

 その環境がいかに恵まれている物なのか、母親はいつも伝えてくれた。理解しようとしないバカ息子を見て、何を思ったのだろうか。
 あの日はやけに優しかった。外出する事を勧めて、時間まで指定した。でかけるときには、涙目でキスをした。それを嫌がった察しの悪い息子を見て、何を思ったのだろうか。あの時点で気づくべきだった。少年は何度でも後悔する。
 あの日家に帰ると、周りでざわめく野次馬たちが、溶けるように消えていった。含み笑いが、聞こえた気がした。つまりは、そういうことだ。そこで逃げることはできなかった。馬鹿で察しの悪い……愚かな少年は、何も感じ取る事が出来なかった。感じの悪い奴らだ、そう思いながら周囲を睨み家に入る。好奇の視線は、前々から向けられていた。

 ……鉄の臭いがした。半開きのドアに、遠慮なく画鋲がねじ込まれている。挟まった紙の端には赤黒い何かが付いていて、そこで察した。あぁ、あぁ。あぁ、もう全て終わった。中で何が起こったのか分かってもなお、足を止めない。もはや意地だった。涙が頬を伝って、自分の嗚咽がやかましく響く。乱暴に破られた紙には、機械が書いたように整頓された文字。でもそれは人の書いた物だった。あいつらは、殺した人間の血でメッセージを書く。それはまるで遺された者を嘲笑うかのように。

『 神 の 仰 せ の ま ま に 』

 そこには、想像よりも遥かに酷い惨状が広がっていた。驚いたことに、涙が引いて何故か冷静だった。
 壁に塗りたくられた紅色。羽虫が群がる赤黒い何か。傷だらけの手足には、蠢く白い何かがびっしりと張り付いていた。踏み出した足に潰された、銀色のリングがはめられた指。そこで行われたであろう行動と母親の悲鳴が脳内で反響した。ビクン。残っている肉片で一番大きい本体が、少しだけ震えた。首は、もう付いていないというのに。

「お母さん!?」

 近寄ろうとして、まだ固まっていない床の血で滑って。母親の血でまみれて、仰向けに倒れた。振動で羽虫が舞う。顔の横に転がる肉片を見て、あろうことか微かに笑みが零れる。
 いつも母親が使っていた姿鏡が視界に入り、自分の笑いをじぃ、とみつめる。貼りつけた様な歪な微笑み。機械の書いた文字よりも、無機質で生きていない嗤い。家の周りで此方を窺っていた、卑劣で臆病なあいつらのようだ。なぜ、なんで自分はあいつらと同じように。心臓が止まったような気がした。時も止まる。

——母親と同じ、ガラス玉のような翡翠の瞳が、暗い濃紺色に変わっていた。

 いったいどこで。これじゃあまるで、「普遍色」みたいじゃないか。浮かんだ笑みが嘘のように、引いた涙がもう一度。濃紺の瞳から流れた。まるで、張りつめていた糸がたわんでしまったように。いつの間にか変わったそれの色は、赤黒く咲いた花に良く似合う色だと思った。細い息が漏れだす。あぁ。

あぁ……ああ、あぁ。おかあさん。お母さん。オカアサン。おかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんおかあさんもういちどめをああけてはなそうよほほえんでぼくにきすをしてばかでさっしがわるいけどそれでもあなたのきもちがぼくにはいたいほどつたわった。
——糸はまだ切れていない、ただたわんでしまっただけ。
 花は散れどまた咲いて、根を張り地を這い生き延びていく。願わくば、花のように美しく。


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