ダーク・ファンタジー小説
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- 蒼飛 記憶喪失
- 日時: 2017/05/17 21:27
- 名前: きるこ (ID: HpE/sQXo)
「…、っ………夢、」
吉野蒼は、勢いよく目が覚めた。
怖い夢を見たのだった。自分の最も大事な人、一番好きな人、鳴海飛鳥が交通事故に遭う夢。
飛鳥が引かれる寸前に目が覚め、体中汗でビショビショになっている。
「…今日、確か…」
スマホを取りだし、予定表を見る
今日の欄に[飛鳥]とだけ入力されている。
待ち合わせ時間は10:00、今は9:00。
さっさとシャワー浴びて準備しよう、そう考え蒼はベッドから出たのだった。
________悪夢が近付いてるとも知らないまま
「…早く来すぎちゃったかな、」
飛鳥はボソッと呟き辺りを見渡す。
やっぱりいないか、と思いスマホを出し時間を確認する。「8:47」と表示されている。
久しぶりに会うため、早く来てしまった。
二人が待ち合わせとしている場所は「緑公園」だった。
駅に近く、緑の多い大きい公園。
ここは高校時代からの二人の待ち合わせ場所、「いつもの場所」となっていた。
「はぁ、なんかドキドキしてきた」
まだかな、とまた辺りを見渡すと見たことのある人が、。
「…あ。」
走ってこちらに向かってくる。
「…っはぁ、はぁ…待った?」
肩で息をしながら微笑む。
「蒼くん、!!!!…ううん、全然待ってないよ!」
飛鳥の表情がいっきに明るくなる。
「そっか、良かった」
蒼は安心したように息を吐き、手を差し出し
「…いこっか」
「…、うん!!!」
飛鳥は元気よく笑顔で蒼の手を握った。
続く
- Re: 蒼飛 記憶喪失 ( No.1 )
- 日時: 2017/05/17 23:53
- 名前: きるこ (ID: ???)
「蒼くん、美味しいね!!このクレープ」
飛鳥は美味しそうにクレープを頬張り、口にクリームをつけていることにも気付かず食べている。
「ん、美味しい」
蒼も一口もらう。
自分の口についたクリームをとると、飛鳥の口についたクリームもとってあげる。
「んあ、ありがとー!」
飛鳥の嬉しそうな笑顔を見て、つい蒼も頬が緩む。
「次、どこ行こっか」
辺りを見渡す。
近くには、大きな交差点をすぎると映画館やショッピングモール、カフェなどがある。
「あ、買い物したい!!買いたい物がある!!」
飛鳥が思い出したように言う。
「ん、じゃあ。あっち行こ」
信号が赤になり、二人は立ち止まる。
この大きな交差点は、交通量がとても多く、人も車もたくさん通っている。
「…今日なんか、気温、高めだね」
眩しそうに太陽を見て呟く。
「…確かに、ちょっと暑い」
蒼も太陽を見る。
駄弁っていると、信号が青に切り替わった。
「お、!!」
やっとか、というように一番に飛鳥が歩き出す。
…………………その時。
「………………ッッ飛鳥!!!!!!!!!」
咄嗟に体が動いた。
キキーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ
辺りには車のブレーキ音が響いた。
それと同時に車と、なにか物がぶつかる音がした。
その場に倒れているのは、吉野蒼だった。
続く
- Re: 蒼飛 記憶喪失 ( No.2 )
- 日時: 2017/05/18 07:15
- 名前: きるこ (ID: ???)
「え、?」
一瞬にして、辺りが静まりかえった。
さっきまで人のざわつきや車の音、クラクションなどとうるさかった交差点が嘘のように無音になった。
「キャーーーーーーーー!!!!!!」
この叫び声が合図だったかのようにまた、いっきにざわつき始めた。
そして、飛鳥はただ一人蒼の目の前で固まっていた。
「、蒼くん…?………蒼くん……!?」
蒼の体を揺さぶる。何も返事はない。
ただずっと血を流し続けその場で目を瞑り、倒れているだけだった。
ピーポーピーポーピーポー
誰かが救急車を呼んだみたいだ。
そして、
「ちょっとどいてください、すみません」
と、人を掻き分けて救急隊の人が二人の元に来た。
飛鳥は頭が追い付かないまま、いつの間にか気付いたら蒼は救急車に乗せられていた。
「乗ります、よね」
救急隊の人が聞いてきた。
「…はぃ…っ」
飛鳥も救急車に乗り込んだ。
- Re: 蒼飛 記憶喪失 ( No.3 )
- 日時: 2017/05/18 18:56
- 名前: きるこ (ID: ???)
すみません、No.0の方で誤字がありました。
『8:47』ではなく、『9:47』の間違いです。
申し訳ありません。;;
- Re: 蒼飛 記憶喪失 ( No.4 )
- 日時: 2017/05/19 18:39
- 名前: きるこ (ID: ???)
「…………蒼、くん…」
蒼を乗せた台車が勢いよく廊下を走る。
「、吉野蒼さん!!わかりますか?」
医師が何度も何度も蒼に声をかけているが、返事は何もなかった。
飛鳥はその様子をただただ遠くから、見つめることしかできなかった。
そして一室に入ると、「手術中」と、赤くランプがついた。
「…俺の、せいだ」
飛鳥は力無く近くのイスに座り、まだ、放心状態だった。
事故の直前を思い出す。
一足先に飛鳥が横断歩道に出た。
その時赤信号にも関わらず思いきり走ってくる車がこっちに向かってた。
それに気付いた蒼が、飛鳥を庇いそこで事故が起こった。
「…俺も、車に気づいてれば………っ」
飛鳥はうつむいた。
そして、静かに涙をこぼした。
「…っ、蒼…く、ん…」
服の袖で涙を拭うが、拭いても拭いても涙はボロボロ零れていった。
いつもは飛鳥が泣いてしまうと蒼が拭ってくれていた。
ただ、今はその蒼がいない。
いつも傍にいてくれた、蒼がいない。
気付いたら飛鳥は小さく声をだして泣いていた。
服の袖はビショビショになり、目も鼻もあかくなってしまっていた。
- Re: 蒼飛 記憶喪失 ( No.5 )
- 日時: 2017/05/21 20:35
- 名前: きるこ (ID: ???)
「蒼くーん、おはよ!」
飛鳥は朝から蒼のいる、病室にお見舞いにきた。
ほぼ毎日来ている。
あれからどれくらいたっただろう。……蒼は目覚めてなかった。
事故で蒼が運ばれたあの日からもう1年は経っている。
「今日もいい天気だね!」
蒼は何も答えない。
それでも飛鳥は話しかける。
もうこんな日が1年も続いていたのだった。
「……………蒼くん」
蒼が寝ているベットの隣に座り、手を握る。
「…俺、寂しいよ。もう、やだよ…」
泣きそうな震え声で呟く。
本当はずっと笑顔でいようって決めていた。
もう弱気なところは見せないって決めていた。
が、やはり無理だった。
「…蒼くん…っ、ねぇ…!!」
その時だった。
「…っ」
微かに顔が動いたの飛鳥は見逃さなかった。
「あ、蒼くん…!!!?」
飛鳥は手を握ったまま立ち上がる
「……っ、あ」
うっすらと目を開けて飛鳥と目が合う。
「蒼くん、!!!!!!!」
飛鳥はすぐにナースコールボタンを押し、医師を呼んだ。
そしてすぐにドアが開き、
「どう、しましたか!?」
「蒼くんが、!!!!」
動揺を隠せず、少し食い気味に話す。
「……、?…」
「蒼くんっ、よかった…。ホントに良かった…!!!!!」
蒼は思考が追い付いていなかった。
飛鳥はただただ涙を流し手を握る力を強めた。
でも、どこか違和感があった。
「……、飛鳥さん。ちょっと」
医師が何かを察し、飛鳥を廊下へと呼んだ。
「…は、はい、」
飛鳥も少しの違和感を感じていたが、とりあえず廊下に出た。
「…、え、あ」
蒼は相変わらず状況を分かっておらず、ただ出ていく飛鳥を見つめていた。
…数分経って飛鳥だけ部屋に戻ってきた。
だがその顔は落ち込んでいるようだった。
「………どうか、した、のか…?」
蒼が途切れ途切れに聞く。
「……………蒼くん、」
飛鳥は今にも泣き出しそうだった。
声は震えて、目には涙を溜めて。
「…?」
蒼は飛鳥をジッととらえた。
「……蒼くん、君…」
飛鳥はうつむいていた顔をパッとあげた。
そして、ゆっくりと涙を流し重い口を開いた。
「蒼くん…………記憶喪失、なんだって…」
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