ダーク・ファンタジー小説
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- 夢想少女ゆーむ -Dream Magica-
- 日時: 2017/06/15 21:57
- 名前: 葉桜 來夢 ◆OuxabEOt3o (ID: q9MLk5x4)
夢。
それは、人間が眠る時に見るもの。
その世界は、その時にしか開かない。
何故、人は夢を見るのだろうか。
そして、何故悪夢は存在するのだろうか?
近年、流行の兆候をみせている『悪夢病』。
これに侵されると毎晩、同じ悪夢に魘されるという。
医学、科学……人間の理知では解き明かせないものであった。
ならばそれは、病ではない。
病というのは単なる呼称である。
これはまさしく、超常現象的な何かなのだ。
『ナイトメア』
それが全ての原因。全ての元凶。
十年前のあの日、突如として現れた正体不明の敵。
奴等に対抗できるのは、選ばれし者のみ。
夢の世界を自由に闊歩できる者のみ。
だから人々は、彼女達を訪ねる。
唯一の戦力である、彼女達を頼る。
『快眠追求団』の外れ掛けた看板は、
今日も悪夢に魘される依頼人を待っている。
そう。
これは、彼女達の戦いの記録を。
夢の記憶を、記した物語—。
◆ ◆ ◆
- prologue ( No.1 )
- 日時: 2017/06/24 15:50
- 名前: 葉桜 來夢 ◆hNFvVpTAsY (ID: q9MLk5x4)
—はじめまして。
私はこの『快眠追求団』の代表、水無月結夢です。
今、現代には「ナイトメア」という謎の異変が起きています。
夢の中に出てくる彼らは、私達人間に悪夢を見せるのです。
しかし、それはただの悪夢ではありません。
その悪夢は、その人にとって一番精神に影響のあるものなのです。
それを放っておくと……大変なことになります。
すみません、私の口からはとても言えないような内容なので。
少し暈したような言い方になってしまいました。
それでも、ナイトメアに対抗する手段が無いわけではありません。
それが私達、『快眠追求団』の仕事です。
私達は、貴方の夢の中に入り、彼らを倒すことが出来ます。
言わば、最後の切り札、みたいなものですね。
さて、では貴方がどんな悪夢を見ているのか。
夢の中に、失礼させてもらいますね—。
◆ ◆ ◆
これは夢だ。
十年前のあの日の夢だ。
冷たい、冷たい記憶だ。
降りしきる雨の音、遠くで車の走る音だけが鼓膜を震わせていた。
自分が何処から来たのか分からない。名前すら、分からない。
ただ、雨が私の傷だらけの身体を濡らしていくだけだった。
一体、ここは何処なのだろう。
私はなんで、こんなところにいるのだろう。
頭が酷く痛む。もう動ける体力も気力も無さそうだ。
「ちょっと君!大丈夫!?」
微睡みかけていたところに、唐突に声をかけられた。
見ると、そこには金髪の少女が立っていた。
「ひ、酷い傷……まさかこの子も」
この子も……?
一体この少女は何を言っているのだろうか。
全く以て理解出来なかった。
「ちょっと待ってて!すぐ助かるからね!……マスター、こっちこっち!」
「何、まだいたというのか?」
「多分そうだと思う。早く助けてあげて!」
「しかしな、千尋—……」
これ以上の会話は私の記憶に残っていない。
私はゆっくりと目を閉じた。
これは後から聞いた話だが、十年前のあの日。
この世界と夢の世界の境界が揺らいだのだそうだ。
二つの世界の負の感情が混ざって出来たもの、それがナイトメアだという。
彼らは二つの世界で暴れ回った。そして、人間達を襲い始めた。
なんとか鎮圧されたものの、夢の世界にまだ彼らは蔓延っている。
……私はその事件で記憶を失ったようだった。
私と同じ状態の人もいたそうだから、そう結論づけられた。
そうして私はその日から『水無月結夢』となった。
快眠追求団に入り、ナイトメアと戦うことになった。
私は今日も、自分の記憶を探している。
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