ダーク・ファンタジー小説
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- 地獄の底から蘇った俺は再び世界に宣言する。
- 日時: 2017/08/11 08:14
- 名前: エーマ (ID: LLmHEHg2)
普通の小説を意識してやっていきます
地の文を第三者にしました
本編_1
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晴之はどこか期待をしていた。
『以上をもって勇者、否、反逆者ハルユキを斬首刑とする』
クソみたいな王の指示で世界を救ったハズの晴之が、処刑される。そんなゴミみたいな現実があるハズが無いと。
だが、現実は無情にも変わらない。
変わる訳が無かった。
晴之は、あっさりと処刑された。
それはもう、本当に呆気なかった。
晴之が抵抗しなかったからかもしれないが、死ぬほどさっくりと逝った。
次に晴之の目に映ったのは、赤だった。
それが、晴之の血だったのか何だったのかは知らないが、とにかく熱くて痛かった。
晴之の頭に木霊するのは、クソの処刑宣言と周りのクズ共の同調の声。
より一層心が煮え繰り返り、精神が研ぎ澄まされていく。
怒り。失望。悲しみ。
負の感情で、心が満たされていく。
「GOAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!」
だが、その静寂たる時間を、尋常ではない威圧と共に咆哮が切り裂いてきた。
「……………ぁ?」
そこでようやく、この事態が異常であることを晴之は認識した。
(死んだんじゃねえのかな……)
体が普通よりも数倍は怠く感じるものの、動かす事が出来るという事実。
晴之は確実に一回死んだ。死んだ、この場では何故か生きているという矛盾を抱えていた。
「GUGYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!」
だがまたしてもその思考を遮る鬱陶しい声が聞こえてきた。
ここまでされ、なお放っておけるような輩ではない事は晴之も分かっていた。
声の主は、よく見知ってしまっているドラゴン。
それも普通の雑魚な火竜種ではなく、ドラゴン達の王である竜王種の一匹。
出来れば二度と会いたくなかったドラゴン。
「俺が殺した、ハズだったんだけどな……」
竜王種で、紅蓮の鱗を持つ、元世界二位の実力を持っていたドラゴン。
「よぉ、紅月」
「GURURURURU………」
かつて晴之と死闘をし、敗れ死んだハズのドラゴンが、再び晴之の眼前に現れた。
「何となく分かったよ。ここがどういう所なのか」
晴之は最早、確信していた。
自分が何故ここで生きていられているのかを。
故に彼は宣言した。
「じゃあ、戦おう」
かつて、荒廃した一つの国の為に捧げた誓いのように。
「お前が、今度こそ死にたくなるよう戦おう」
それは、誰の為だったのか。
「俺が、お前を倒し続けてやる」
今となってはもう、分からない。
長い、時間が経った。
いや、もしかすると短かったかもしれない。
そんな、矛盾をはらんだ時間が過ぎ去った。
或いは、それすらもどうでもよかったのか。
横たわり、微動だにもしなくなったかつての好敵手の上で人間は呟いた。
「時間を」
静観していたナニカがそれに応えた。
「時間が」
熱く重い空気が一人しかいない人間の横を通り過ぎていった。
それを苛立たしく、それでいてどうでもいいような顔で人間は、また呟いた。
「必要」
「見極めるための」
「時間」
薄れゆき、混ざり合っていく意識の中でふと、晴之は漠然と考えていた。
味方を失った俺、いや、俺達に敵が存在しているのだろうか、と。
冷静ならばともかく、意識が朦朧としていた晴之はその自らの問いに答えた。
ああ、と。
俺達には敵も、そして味方もいなくなってしまった、と。
それからまた、長い長い悠久の刻が過ぎた。
風化し、忘れ去られたかつて人間だったソレはまた動き出した。
いや、それも正確ではない。
ソレは、動かされていた。
頭の中に響く鈴のような声に動かされていた。
辺りに不似合いな、白い光がソレを包み込んでゆく。
疑問に思うよりも先にソレは、外の世界へと再び姿を現していた。
待っている世界が、どれだけ脆いのかを知らずに。
待っている世界が、どれだけ幸せなのかを知らずに。
暖かく優しい光が、晴之の再びの門出を祝うように晴之の周りを飛び跳ねた。
⇔
コーリア王国の中でも、特に力を持っている貴族ドルガナの一人娘、フーリはソワソワしていた。
と、言うのも今日は、学園で待ちに待った眷属召喚の儀が行われる日なのだ。
どんな強い聖獣をお喚びになるのかしら、どんな偉大な精霊をお喚びになるのだろうか、と学園中の生徒が噂する。
フーリは、その人並み外れた容姿と実力で、学園の噂の中心の的となっていた。
だが、実のところフーリはそれが気に入っていなかった。
何故なら自分が、弱い種族なのだと知っていたからだ。
少し、昔話をしよう。
ここに、一人の少女がいる。
九歳になったばかりの、穢れ無き少女。
周囲からもよく親しまれ、幸せな生活を送れていた優しい少女だ。
そんな彼女に、好意を抱いていた少年もまた居た。
その少年の名は、ギルライン。
金色の髪を持ち、強大な力を有しながらその性格はあまりにも謙虚、という少年だった。
フーリもまた彼に、好意を抱いていた。
もしかすると、結婚でもしそうだったかもしれはない。
だが、現実はそこまで人間に優しくなかった。
⇒
「ひぎぃゃぁあ!!」
「熱い、熱い、熱い、熱い、熱い、熱い熱い熱い熱い熱い熱い」
「づぁれか、づぁるぇかだすげでぇ゛ぇあ!!!!!」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
(どうしてどうしてどうして)
そこは、正に地獄だった。
いや、むしろ地獄の方が優しかったかもしれない。
人が焼かれる匂いと、人の血が焦げる匂いと、髪が焼き切られる匂い。
そんな匂いをバックに一人、蠢く異形のバケモノ。
「……………ぅぁ」
それを見つめる一人の少女は、カタカタと震えていた。
(あの横で真っ黒になっている人は誰?メリーおばさん?ジタンおじさん?向かいのクレットおじいちゃんかしら)
少女は気付いていなかった。
それは幸いだったのかもしれないが。
(皆、逃げれたよね)
その思考を嗤うかのように火が一段と燃え上がる。
バキバキと木が燃え落ち、誰かだった黒いモノに上からのしかかった。
「………………ぁぁ」
小さい呻き声が耳に届いた。
少女は呆然と考えていた。
その呻きは自分のか、生き残ってしまっていた黒いモノのだったか。
それを見つめる事しかできない自分が、殺したかった。
悔しくて。
憎くて。
醜くて。
許せない。
その時、不意に。
ボトッと。
何かが上から降ってきた。
「……、…………、…………………っ」
金色の何か。
半分以上が失われて、血も出し尽くしてしまった何か。
フーリは、それが何なのか知った。
知ってしまった。
「ぅ、ぁ……ぎぃる………………」
優しかった少年、ギルラインだった。
その日、爆発的に魔力を有するようになった少女を除く、全ての住民が一人の悪魔によって殺された。
⇔
(…………………………)
晴之は眩しい光の中にいた。
「………………!………!………………!!」
辺りで騒ぐ人間たちに最初は興味を向けていたが、すぐにこの場所の方に興味が向いた。
(……………………?)
初めてだった。立ち止まっていても攻撃されないのは。
「…………!!………!………………!」
晴之は、スロットル魔法学園の召喚の儀が行われている場所に立っていた。
つまり、晴之は最早人間と認識されていないという事だ。
召喚したのは、学園一の優等生フーリ。
ようやく、全てを失い純粋な強さを追い求めていた二人が対峙した。
その、異質な空気に周囲は静まりかえった。
晴之が、初めて口を開いた。
「………………ダ、レ」
それは、誰に向けられたものだったのか。
「私、は、フーリ」
「…………フー、リ」
「あなた、は?」
「……………………………」
異常なほど静まりかえっているその場所で、その名前はよく響いた。
「………………ハ、ル」
- Re: 地獄の底から蘇った俺は再び世界に宣言する。 ( No.1 )
- 日時: 2017/08/05 18:21
- 名前: 四季 ◆7ago4vfbe2 (ID: jFPmKbnp)
初めまして、こんばんは。四季といいます。
続きが気になるお話ですね!これから頑張って下さい!
- 地獄の底から蘇った俺は再び世界に宣言する。 ( No.2 )
- 日時: 2017/08/11 08:18
- 名前: エーマ (ID: LLmHEHg2)
投稿ペース→遅い
本編_2
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身を潜めていた喧騒が、再び戻ってきた。
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