ダーク・ファンタジー小説

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最後の林檎が落ちるとき
日時: 2017/08/08 22:25
名前: ゆぅ (ID: MHTXF2/b)

はじめまして、ゆぅと申します。

ダークは初めてなんですけど、駄作になってしまうと思いますがどうか見て頂けたら嬉しいです!
コメントお待ちしています!



【登場人物】

@白石 芽以 しらいし めい
ヒロイン。
高校生のときに壮絶ないじめに遭い、復讐を決める。

@黒川 夏樹 くろかわ なつき
主人公。
芽以と同じクラスの男子生徒。無口でクール。


【目次】
#01 すべてがはじまる 01〜

Re: 最後の林檎が落ちるとき ( No.1 )
日時: 2017/08/08 22:23
名前: ゆぅ (ID: MHTXF2/b)

その時、世界が真っ赤に染まった。

見えるものすべて、消えればいいと思った。

今視界の中にいる人間は、私を見下ろして笑っていた。

その顔はこの世で一番愚かで、醜かった。

この手でそのすべてを終わらせてしまいたい。

だが私の手にはもはやそんな力は残っていなかった。

私の小さな手は、私の物ではないみたいに言う事をきかなかった。

そんな絶望した私に、その場にいる人間はたくさんの物を投げつけ、汚い言葉を吐き捨てた。

その言葉は尖ったナイフのように私の心に突き刺さった。

そのナイフはとても冷たくて、残酷で、容赦のないものだった。















ああ、私は死ぬんだ。














#01【 すべてがはじまる 】



【おはよう】から始まって、【また明日】で終わる。

ただ、そんな日々が欲しかった。

ただ、それだけだった。



明日は今日よりいい日になりますように。

毎日眠る前に、そう思っていた。

叶った日はあったかもしれない。

前日の方が嫌な日があったら、翌日は昨日より良い日。

だから、その願いは叶っている。

そう言い聞かせるのが日課。

私の中で、そんなことが幸せだった。

昨日より今日が良い日、ということが幸せだった。

きっと、人よりも高望みはしたことがない。

私はそう思っている。

こんな私を誰も褒めてはくれない。

それはそうだ、誰も私なんか見てないのだから。





ああ、行きたくない。

行きたくない…行きたくない…行きたくない…

毎日そんなことを思いながら、重い足取りで学校へ向かう。

毎朝校門の前で立ち止まる。

そして、深呼吸をしてから足を動かす。

学校へ入ってからは、ずっと俯いている。

誰かと目が合ってしまったらその日は地獄の始まりだ。

目が合わなくとも、端から天国など存在しないことはわかっていた。

だが、少しでも平和な日を送りたかった。

ただ俯くだけで少しマシになるならいい。

そう思っていた。






ある日は何も言われず1日が終わる。

これが私にとって最高の1日。

だけどある日は…





「おはよう!シラミさん」

クラスの女子が話しかけてきた。

こんな日は、最悪の日。

「ちょっと〜シラミ舞うからこっち来ないでよね〜」

彼女たちは楽しそうに微笑んだ。

「…ごめんなさい」

私はそれだけ言って、教室に入った。


教室に入ってからは誰からも話しかけられることなく自分の席へ行く。

【しね】 【ブス】 【バカ】 【学校くんな】

そんな言葉が書かれた椅子に座り、同じ言葉が書かれた机の上にカバンを置く。

「あれれー?今日も来たんだね、シラミ」

1人の男子生徒が話しかけてきた。

彼はいつもこうして話しかけてくる。

「また来たんだ。きったねー」

他の男子もそう言う。

「ちょっとやめなよー、シラミさん可哀想じゃん?」

また違う女子がそういい、クラス全体から笑い声が聞こえてくる。









「ちょっと、そのへんにしときなよ。これ以上変なことしたら殺されるよー?」






1人の女子が言った。


「うーわ、こわーい。さすが殺人犯の娘だね」


そしてまた、クラス中が笑う。


Re: 最後の林檎が落ちるとき ( No.2 )
日時: 2017/08/09 11:32
名前: ゆぅ (ID: cdCu00PP)

「あーそっか!あぶねーあぶねー!」

男子生徒はそう言うと、私から離れた。

彼だけじゃない。
クラス中の誰もが、私から離れた。

今更、驚くことではなかった。

毎日同じことが起きている。
私にとってこれは日常だ。

中には何も言っていない人もいた。
何もしてこない人もいた。

だけど私には、全員が敵に見えた。
全員が、私を嫌っている。
誰も助けてなんてくれない。

目の前に広がるのは夢や希望じゃない。
私の視界には、抜け出せない暗闇しか広がっていない。

窓から吹き抜けた冷たい風は、私の頬を冷たく切り裂いた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

「白石、進路はどうするんだ?そろそろ決めないと、まずいぞ?」

担任の畠山(はたけやま)が言った。

「…就職します」

芽以は、静かに答えた。

「就職ってお前、どこに就職したいんだ?」

「まだ決めていません」

「クラスのみんなはもう大学とか就職とか、結構決まってるんだぞ?わかってるのか?」

「…わかっています」

私がいじめられていることを知っているくせに偉そうに、いつもそう思う。

畠山はいつも他人事だ。

担任なのにも関わらず、何も関与してこない。
いじめのことは、誰かが何度か畠山に伝えたことがあった。
だが何も変わらなかった。

クラスの連中が変わらなかったのではない。

そもそも、この男が何もしていないから変わるわけがなかったのだ。

卒業が間近だということは、芽以にとって地獄から抜け出せる最高のチャンスなのだ。

「なあ?わかってるのか?白石」

「…わかっています。バイトがあるので失礼します」

芽以はそう言うと「おいまて!白石!」と言う畠山の言葉を背に、職員室を後にした。





帰りは雨が降っていた。
ここ最近は雨が続いている。

傘を持っていなかった芽以は、何のためらいもなく屋根の外へ出た。

少ししか歩いていないというのにもうずぶ濡れだ。

芽以は左手で前髪をかけわけ、綺麗な黒髪を耳にかけた。

濡れた髪が頬にはりつく。

濡れながら帰るこの日は、昨日よりは良い日だったと、そう思う。

なぜかと言えば、今日は畠山がしつこく追いかけてこなかった。

もう一つは、昼休みにトイレに呼び出されなかったこと。

同じクラスの工藤絵里、高宮綾、鈴木ありさはいつも芽以をトイレに呼びつけては、便器に頭を突っ込まさせる。

今日は絵里が休みだったことで、それがなかった。

そしてもう一つ。

竹田創太、島崎直也の2人が今日は大人しかった。
彼らは毎回、芽以の上靴にイタズラをする。

ある日は画鋲を入れ、ある日はトイレに隠し、ある日は切り裂く。

そんな日は憂鬱だった。
上靴を買い替えるのが面倒だったからだ。
金の無駄以外何物でもない。

そんな小学生や中学生のようなイジメは、芽以にとって面倒でしかなかった。

最初は確かにショックだった。
友達だと思っていた者は皆裏切り、離れていった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

高校1年の秋、それは起きた。

朝学校へ行くと、皆の反応がいつもと違った。

「おはよう」

芽以がそう言うと、いつも仲良くしていた彼女たちは気まずそうに目をそらした。

まさか、と嫌な予感がよぎった。

もちろんそれは当たっていた。

黒板を見ると、そこには【白石芽以の父親は殺人犯】と書かれていた。

芽以は目を見開いた。

なぜバレたのか。

ふと見ると、誰もがスマホの画面を見ていた。

そして見つけたのは、新聞記事を持ったクラスメイトの姿。


芽以はただ立ち尽くしていた。

なにより、何も言えなかったのは事実だったからだ。






「白石の親父やばくね?」

「白石もそのうち殺人犯すかもよ」

「芽以ちゃんと関わったら怖いよね」

「白石怒らせたら殺されるぞ」

「優しいふりして本当は殺人犯の娘だったんだね」

「関わりたくねー」







クラス中から、そんな言葉が飛び交った。







当時仲が良かった2人の友達はいつの間にか芽以から離れていった。

付き合っていた男には案の定ふられた。

昨日まで仲良く話していたクラスメイトは、まるで別人のように人が変わった。




そしてその日から私の日常は、地獄に変わった。

Re: 最後の林檎が落ちるとき ( No.3 )
日時: 2017/08/10 18:56
名前: ゆぅ (ID: wGslLelu)

その日家に帰ると、見知らぬ靴が玄関に置いてあった。

小さな家は酒臭く、タバコの臭いが充満していた。

「ただいま」

芽以がそう言ってリビングに入ると、母の姿はなかった。

奥の部屋の隙間から電気の光が漏れていることに気がついた。

芽以はカバンを下ろし、「ママ?」と言ってその部屋へ向かう。

だがすぐに足を止めた。

声が聞こえる。





声にならない、今にも息で消えてしまいそうな、そんな声。


母の声だった。

「…ねえ…だめ…」

母は吐息混じりにそう言っていた。

芽以は静かにその部屋に向かい、隙間を覗いた。

芽以の視界には、想像していた通りの光景が飛び込んできた。

母は見知らぬ男とベッドで寝ていた。
2人とも服は着ていない。

芽以は、またか、と思いため息をつくとリビングへと向かう。

その時、芽以の足に空き缶のゴミが当たってしまった。

その音を聞き、母と男の声がなりやんだ。

まずい、そう思った芽以はそこから静かに歩き出す。

「…芽以?」

母の声が聞こえた。

芽以は黙り込む。

すると、小さく「ごめん待ってて」と言う声が聞こえ、しばらくするとタンクトップに短いショートパンツを履いた母が奥の部屋から出てきた。

「芽以」

母、仁美はそう言って芽以を見た。

芽以は「なに?」と言って仁美を見る。

「文句あんなら言ってみなさい」

仁美はそう言うと面倒臭そうにダイニングにある椅子に座った。

「別に。何も無い」

芽以がそう言うと、仁美はため息をついた。

「家と、食べるものがあるだけ有難いと思いなさいよ。あたしが誰と何しようと、別に関係ないでしょ?育ててやってるんだから」

仁美にそう言われ、芽以は微笑みながら言った。

「別に。私何も言ってないよ。勝手にすればいいじゃん」

芽以はそう言うとリビングに行き、カバンの隣に座った。

「なによ、その態度。あたしだってまだそんな歳いってないんだから、好きなことしたっていいでしょ?」

「だから好きなことすればいいよ。私は何も言わないから。本当、ママはまだ若いんだから」

芽以がそういい、仁美が何も言えずにいると仁美の後ろから男の声が聞こえた。

「なに喧嘩してんの?」

男はTシャツにジーンズ姿で壁に寄りかかりながら言った。

「ああ、別に。気にしなくていいから」

仁美はそう言って前髪をかきあげた。

割と若い男を見て芽以は驚いた。
仁美は現在34歳だが、この男は20代前半のように見える。

「ふーん。…なに、娘さん?」

男はそう言うと芽以の前まで来てしゃがみこんだ。

「そう。気にしなくていいって」

仁美は面倒臭そうに言う。

「へー、これが仁美の娘さんか。可愛い顔してんじゃん?」

男はそう言って芽以の頬を触った。
芽以はその手を叩き、男を睨む。

「あれ、俺嫌われてるみたい」

男はそう言って微笑み、仁美の隣に座った。

「仲良くしてよ、親子さ」

男にそう言われ、仁美は「…うん」と頷いた。

仁美が素直に頷いたことに驚いた芽以は目を見開いた。

どうやらこの若い男に惚れているらしい。
どこで出会ったらのやら、信用できなさそうな男だ。

母は遊ばれているに違いない。

芽以はそう思った。

「じゃ俺そろそろ帰るわ」

男はそう言って立ち上がった。
仁美は「え!?」と言って立ち上がり、玄関に行く男についていく。

「もう帰るの?」

仁美にそう言われ、男は靴を履きながら「うん、今日はもう帰るよ」と言って出ていった。

男が出ていくと仁美は再びダイニングの椅子に腰を下ろした。

「新しい彼氏?」

芽以が言うと、仁美は「…なのかな。わかんないや」と答え前髪をかきあげた。

大人にも色々あるのであろう。

「あんた今日バイトは?」

仁美が言った。

「休みになった。帰ってこない方が良かったね」

芽以がそう言うと、仁美はだるそうな表情を浮かべた。

「…本当ね。何で今日休みになったのよ」

その言葉には皮肉が込められていた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

テレビをつけたとき、ニュースが流れていた。

どうやら鹿児島で殺人事件が起きたらしい。
犯人は25歳の男で、23歳の女性を殺害した。
理由は痴情の縺れというやつだ。

男は彼女に別れを告げられ、その後ストーカーになり彼女を帰宅を待ち伏せしたのち、殺害した。

何かきっかけがあっただけで、人は人を簡単に殺せるのか。

芽以はそんなふうに思った。
きっかけなんて小さなことに過ぎない。

だがそれは、他人から見たら小さなことでも本人にしてみれば大きなことだ。

犯人に同情するわけではないが、わけもなく人を殺す人間はそういないだろう。






父が事件を起こしたのは、今から8年前のことだった。

私がまだ10歳の時だ。

父は会社の上司を殺害したのち、毒を飲んで自殺した。

警察から聞いた内容はそれだけだった。
小学生だった私には、よくわからなかった。


事件は、街を恐怖に染めた。

それを機に学校では変な目で見られるようになり、友達がいなくなった。

母は近所で陰口を叩かれ、孤立した。

そして私たち親子はその街を離れ、私たちのことを誰も知らない遠い街に来た。

中学生の時はその事がばれることはなかった。

だが高校に来て、そのことがばれてしまった。

母が変わってしまったのはそれからだ。

この街にきてすぐは、母も前向きに頑張っていた。

だがあのとき、会社を辞めた。

理由は父の事件がばれたことで、陰湿ないじめがはじまったことだった。

それから仁美は得体の知らないバーで働き、毎日酒を飲むようになり、毎日男を連れ込むようになった。

芽以と仁美の会話が減ったのはそれからだった。

Re: 最後の林檎が落ちるとき ( No.4 )
日時: 2017/08/17 00:05
名前: ゆぅ (ID: cdCu00PP)

その日は最悪な日だった。

朝学校へ行くといつものようにからかわれ、そして昼休みにはトイレに呼びつけられ、上履きがなくなった。

昼休み明け、芽以は職員室で借りたスリッパを履き、午後の授業に出た。

何事もなかったかのように午後も時間が流れる。
梅雨に入り、外はずっと雨だった。
傘をさしている人は風に煽られながら必死に歩いている。

ああ、また傘を忘れた。
またずぶ濡れになって帰らなければいけないのか。

そんなことをぼんやり考えていると、後ろからシャープペンの芯を背中に刺された。

後ろは広瀬陽介。

数学がわからなくて、暇になって芽以にちょっかいをかけてきたというわけだ。
これはいつものことだ。

芽以は振り返ることもなく、変わらずぼんやりと外を眺めている。

授業をする畠山の声をよそに、湖のようになった校庭を見つめた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「シラミさん、教科書汚れてたから洗ってあげたよ?」

放課後、工藤絵里が笑顔でそう言ってきた。

芽以は自分の机の中をみた。
教科書が1冊もなくなっていた。

芽以はため息をつき、何も言わずに立ち上がるとトイレに向かった。

彼女はいつもトイレに教科書を捨てる。
だが今日は違った。

トイレには何もなかった。
どこへやったのか。

芽以がため息をつき、トイレを出ようとしたときだった。

「…し、白石さん」

ドアの方から女子の声が聞こえた。
芽以がそっちを向くと、クラスメイトの七海結花がいた。

七海結花は少し言いづらそうに「つ、ついてきて」と言ってトイレから出ていった。

芽以は首を傾げ、彼女のあとを追う。

なんだ、工藤絵里たちに使われているのか。
七海結花はいじめをするタイプではない。
だがいつも見て見ぬふりをしていることを知っていた。
きっと、工藤絵里たちに芽以を呼び出すよう言われたのだろう。

芽以がそんなことを考えていると、彼女が連れてきた先は昇降口だった。

芽以が不思議そうに七海結花を見ると、七海結花はリュックから折りたたみ傘を1本出し、芽以に差し出した。

「これ、使って」

言われ、芽以が恐る恐る受けると、七海結花はビニール傘を広げた。

「わたし、2本持って来てるんだ。…その、外に来て」

彼女の言いたいことがわからなかった。
これから何をするというのだ。

傘をさして外にくると、ついたのは校庭の隅にある池だった。

そこには、芽以の教科書がたくさん浮いていた。

「…わたし、見てたの。絵里ちゃんたちが、ここに白石さんの教科書を捨ててるところ」

七海結花はそう言って芽以を見た。

彼女は、教えてくれたのか。

「…ありがとう」

どちらでもいい。
とりあえず、今は拾うしかない。

芽以はそう思い、傘を置くと池に入った。

「白石さんっ?わ、わたし網か何か持ってくるよ?」

七海結花は驚いたように言った。

「大丈夫。ありがとう」

芽以はそう言って教科書を拾う。

すると、七海結花は自分の傘を置いて一緒に池に入ってきた。

芽以は驚いた表情で彼女を見る。

七海結花は微笑みながら言った。

「…2人で拾った方が早く終わるよ」

言われ、芽以は彼女が工藤絵里たちに指示された訳では無い、そう思った。

しばらくすると、教科書を拾い終えた2人は校庭にあるベンチに座っていた。

「…わたし、勇気がなかった。白石さんを助ける勇気が。こんなことで許されるとは思ってないけど、少しでも役に立ちたかった」

七海結花がそう言った。
芽以は少し微笑み言う。

「これだけで十分嬉しかった。ありがとう、七海さん」

芽以がそう言うと、七海結花は「…白石さん」と言って微笑んでから続けた。

「ていうか白石さん、笑った顔すっごく可愛い。知らなかった、わたし白石さんのクラスメイトなのに」

七海結花はそういって俯いた。

「…私と仲良くすると、七海さんまでいじめられるよ。だからもう帰った方がいいよ」

芽以がそう言うと、七海結花は言いづらそうに口を開く。

「わたし、白石さんのお父さんのこと…なんとも思ってないよ!だって、それは白石さんじゃなくて、白石さんのお父さんだもん。白石さんは、白石さんだもん」

なんだか、胸が暖かくなった。
彼女はとても暖かくて、優しい子なんだ。
勇気を出して自分を助けてくれた。
誰だって集団は怖いはずなのに、彼女はそれに勝った。
とても強い子だった。

「絵里ちゃんたちはきっと、弱い人間なんだよ。誰かをいじめることで、自分の位置を確認したいだけ。強いって、思いたいだけ。わたしはそう思う。本当に強いのは白石さんだよ」

「私?」

「そうだよ!毎日あんなことされてるのに、逃げたりせずに、何も言い返さずに学校に来てる。わたしだったらもう、学校に来てない」

七海結花はそう言って微笑んだ。

「…強くなんかない。むしろ弱いから、負けないように学校に来てる」

芽以はそう言うと小さく微笑んで見せた。

「それを強いって、わたしはそう思う。だからわたし、もうやめるね。こういうの」

七海結花にそういわれ、芽以は不思議そうに彼女を見た。
七海結花は笑顔で言った。

「影で白石さんを助けて、表では見て見ぬふりして。わたしってほんと最低。こういうずるいの、もうやめる。ずっと、白石さんの味方だよ」

彼女を信じることが私にできるだろうか。
芽以はそう思った。


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