ダーク・ファンタジー小説

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カラミティ・ハーツ 心の魔物 外伝 常闇の忌み子
日時: 2017/08/13 19:17
名前: 流沢藍蓮 (ID: GfAStKpr)

 ——人は、心を闇に食われたら、魔物になる——。

  ◆

 どーも、藍蓮です。

 「カラミティ・ハーツ」を書いていて、想像が大きく膨らんだので、あるキャラの外伝を書きたいと思います。
 誰の話かは……。本編をEp20まで読めばわかるはず! 章のタイトルのまんまだし!
 一応、「カラミティ・ハーツ」を知らない人にもわかる仕様にしますが、知っていれば、より楽しめること確実です!

 それでは。物語の世界へご案内♪


◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 昔々、王国があった。その王国の名はウィンチェバル。
 小さいけれど、資源が豊かな国で。しょっちゅう侵略されてきた。
 でも、今は、ないんだ。国を救おうとした召喚師が。誤って国を滅ぼしたから。
 諸行無常だね。あんなに栄えた国が、あっけなく。

  ◆

 僕の名は、エルヴァイン・ウィンチェバル。ウィンチェバル王国の第三王子。

 ——その生まれに、訳あったから。「忌み子」として、さげすまれた。

 聞いてほしい物語が、ある。

 つまらないものかもしれないけれど。それは——僕の物語だ。

 常闇の忌み子と呼ばれた、或る王子の物語——。

  ◆

 INDEX

1 師匠と僕 >>1
2 僕の日常 >>2 ※いじめ要素あり
3 僕と母上 >>3
4 僕を縛る「闇」>>4
5 僕のともだち >>5
6 僕の休日 >>6

カラミティ・ハーツ 常闇の忌み子 1 師匠と僕 ( No.1 )
日時: 2017/08/11 08:31
名前: 流沢藍蓮 (ID: GfAStKpr)

「きゃぁぁぁあああああああ!」
 母上が、悲鳴を上げた。
 それが、僕が誕生した際の、周囲の人間の上げた第一声だった。

  ◆

 僕は、人間が嫌いだ。


「はッ!」
 握った木刀が、師匠の木刀と交わった。が、僕の木刀はすぐにはじき返されて、僕は地面に転がった。
「まだまだだな。そんなんじゃ、強くなれんぞ」
「……わかってるッ!」
 跳ね起き。身を翻し。再び木刀を構えた。
 吹っ飛ばされても構わない。僕は何度でも、あなたに挑もう。
 僕にはそうするだけの、理由があるんだから。
「せいッ!」
 打ち込む。また、軽くいなされる。地面に転がった僕の喉元に、師匠の木刀が突きつけられる。
「死んだな、エルヴァイン・ウィンチェバル」
 僕は荒い息をしながらも、師匠を睨んだ。
「だがな、腕を上げた。お前はいい剣士になるさ。……「それ」さえなければ」
「…………」
 僕の身体には闇がある。生まれつき、持っていた闇が。
 青い闇が。
 それは時々、激痛で僕を縛る。そして意識を失えない。
 それは何の前触れもなく現れて、ひたすら僕を苦しめた。
 そんな不安定さでは、剣を取ったときに命取りになると、師匠は言うのだ。
「だがなぁ、お前は本当に、将来有望だよ。ったく、何がどう間違って、そんな身体に生まれたんだか」
 僕は国王の不義の子。国王が侍女に手を出して生まれた子。
 それだけでも、いじめられるのには十分なのに、それにその上「闇」がつく。
 望んで生まれたわけじゃないのに。一体どうして、どうしてこんな。
 うなだれる僕の頭を、師匠の大きな手が、くしゃくしゃとかきまわした。
「考えすぎるなよ、エル坊。お前はお前だ。やりたいように、生きればいいさ」
「……ありがとう」
「嫌なことあったら俺に言えよ。相手によっちゃあ、叩きのめしたるわ」
「師範がそんなことしたら、犯罪じゃないか……」
 苦笑いして返す。
 師匠——ヴェルン・キィンは、僕の答えに大笑いした。
「エル坊は真面目すぎなんだって。つらいことがあったら俺に言えよ? 可能な限りで解決してやる。心配掛けたくないとか、ませたこと言うんじゃねぇ。お前はまだ子供だろう? 子供らしく甘えりゃいいんだ」
 そう言って、朗らかに僕の肩を叩いた。
 ——こんな、こんな、僕だけど。師匠は笑って受け入れてくれる。
 それが嬉しくて、温かくて。訓練場に行くのが、僕の小さな幸せになっていた。
 穏やかに微笑む僕を見て、師匠は優しく笑った。

「お前、笑えるじゃねぇか」

「!」
 ……笑って、いた?
 この、僕が、笑って……?
「もう一回言うけどよ」
 師匠は、僕の頬を両手で挟んだ。
「し、師匠……?」
「子供なら子供らしくしろってんだ。嬉しいときは笑え、つらい時は泣けよ。『常闇の忌み子』だぁ? そんなの知るかよ。自分らしく生きりゃあいいじゃねぇか。なぁ?」
 ……嬉しかった。
 こんなに、無条件で。
 僕を心配してくれる人が、いることが。
 と、どこかで鐘がなった。
「あー、仕事の時間だぁな」
 それに気が付き、師匠は大きく伸びをした。
「悪ィな、エル坊。どこぞの貴族の坊ちゃんの、へたくそな剣技を見てくれってさ」
 面倒くさそうに言って、歩き去る。
 僕はその背中を、じっと見ていた。
 最後に師匠が振り返った。
「なんかあったら、俺に言えよ?」
 僕は、こくりとうなずいた。
 その反応を見ると、師匠はぶらりと訓練場を出て、そのまま見えなくなった。

 ——知っているくせに。

 僕はあなたが好きだから。あなたにだけは、面倒事を背負わせたくないって。
 何かあっても、あなたにだけは、言うことはできないんだって。
「……だって、笑っていてほしいんだ」
 僕に何かあったと知ったら、師匠は笑顔じゃなくなるから。
 好きな人には、笑顔でいてほしいんだよ。
 つらいこと、悲しいこと。もう——僕は慣れっこだから。

 ぼんやりそこに佇んでいたら。品のない笑い声が聞こえた。
「あーらら、エルちゃーん。そんなところでぼんやりして、一体どうちたんでちゅかー」
 振り返れば、そこには。
 大嫌いな兄、二コールがいた。


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