ダーク・ファンタジー小説
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- Repeater:魔術と愚か者
- 日時: 2017/09/29 20:45
- 名前: ゼラチン ◆SvRsgTHFT2 (ID: P2y76W7r)
・・・会話が、聞こえる。
おい、知ってるか?
何をだ。
「魔術」を一切使わない男だよ。
なんだそりゃ、今時そんなやつ居るのかね。
本当だよ、国家権力以外で拳銃を持っているやつを初めて見た。
拳銃型の魔道具じゃなくて?
聞いたんだよ、そしたら本当にガキの頃教科書でみた銃弾があったんだ。
へぇ。
そんな会話を聞いてる間にコーヒーを飲みつくしてしまった。
ふと、辺りを見回す、
いたって普通の風景に見えるが違う。
この世界には、「魔術」が浸透している。
ようは漫画のような能力が身近にあるということだ。
コーヒーのおかわりを頼む。
待っている間に俺は先程の会話の続きに耳を傾けようとした。
ゼラチンです。ちょっと始めようと思います。
目次
- Re: Repeater:魔術と愚か者 ( No.1 )
- 日時: 2017/09/30 09:51
- 名前: ゼラチン ◆SvRsgTHFT2 (ID: P2y76W7r)
最初に魔術が確認されたのはいつだったか。
人類がそれに慣れるのにはそう時間がかからなかった。
変わったことは生活に魔術が入ってきたこと、金が稼ぎやすくなったこと、一番最初に魔術を手に入れた人が英雄扱いされていることくらいか。
まあ、全部俺が生まれる前の話だがな。
「コーヒーのおかわりを」
俺のような魔術を一切使わない人間はやはり珍しい。
この前はうっかり拳銃を見られてしまった。見られて困るわけではないが、あまり目立ちたくはない。
俺は無職だ。まだ成人して2年、焦るのは早いと個人的には思う。
普通なら仕送りとかあるだろうが・・・いや、よそう。
味に対して割の合わない値段のコーヒーの代金を払う。これなら缶コーヒーでも飲んだ方が良かったな。
「はあ・・・」
ため息を吐きながら俺がバイトしている場所へ向かう。
「遅かったですね」
目の前にはイケメンがいた。最悪な出会いだ。
「俺を待たずに行けばよかったじゃねえか」
「仲間を置いていけないですよ」
気持ち悪い。さっさと本題に移ろう
「今日の仕事は?」
「最近できたコーヒー店が怪しいみたいです。どうやら地下にもスペースがあるみたいです」
「そこならさっき行ったぞ。まずかったけどな」
常備している拳銃の他に俺は武器を何個か持つ。
イケメン野郎は魔術がかけられたナイフを持った。
「行きますよ。〝二宮 北斗”さん」
「ああ、〝池 宗一郎”」
俺のバイトはよくわからねえ組織での活動だ。
宗一郎が言うには暗部とか言ってたな。どうでもいいが。
これが終わったら、うまいコーヒーでも飲もう
1話 俺のバイト
- Re: Repeater:魔術と愚か者 ( No.2 )
- 日時: 2017/10/08 10:51
- 名前: ゼラチン ◆SvRsgTHFT2 (ID: P2y76W7r)
もし魔術を使わないと言ったのならば、全員が不思議な顔を浮かべるだろう。
強力な魔術も、日常的な魔術も、使わない。それは異常なのだ。
「で、どうする?」
「地下のスペースで何してるかですよね、やましいことがなければ正直にいうはずですが」
そんな俺が見つけたこのバイトは正直不安定だ。一月仕事に呼ばれなかったこともある。
しかし一回一回の金は破格だ。何十万という金が口座に入ってくる。
「着いたな、店員に直接聞くか?」
「いえ、この店員もバイトです。どうせ深い所までは知らないでしょう。店長に聞くのが一番でしょうね」
それを続けて4年、未だ正社員にはなっていない。なる必要もない。
「店長は見当たらねえし、いきなり店長を呼ぶのも不自然だな、どうする」
「ここは街中ですし一般人もいます。大きな騒ぎは起こしたくないですね」
それはそうだ。騒ぎになっていいのなら最初からもっと派手にやっている。
「あの、注文はどうなされますか?」
「コーヒー二つ、ブラックで」
怪しまれないように最低限の注文はしておく。
「北斗さん。今の店員、見ましたか?」
「あ?別に変な所はなかっただろ」
「いえ・・・副店長と、書かれてました」
「副店長?じゃあ」
「はい、深く知っている可能性が出てきました。詳しく話を聞いてみましょう」
詳しく話・・・か、そう簡単に行くか?
「お客様、そろそろ閉店の時間となりますが」
向こうから来てくれた。
まてよ、閉店?
「おかしい、まだ昼だし俺たちはコーヒー一杯も飲んでいないんだ。他の客だって——」
周りを見渡し、固まった。
客が、俺たち二人以外誰もいない。
「今お帰りになれば、この店を探ろうとしたことは不問にします。こちらとしても穏便に済ませたいのです」
男は手の平から炎を出して威嚇している。
「バカだな、“それ”は威嚇に使うもんじゃねえよ」
「なっ!」
拳銃を男に向ける。
初めて見るのか驚きを隠せていないようだ。
「古いと思うか?」
足に向かって引き金を引く、この距離で外すわけなどない。
男は悲鳴をあげその場に倒れる。
「くそっ・・・・・・何が目的なんだ」
「仕事を達成するためにちょっと調べさせてもらうぜ」
「抵抗しなかったら怪我もしなくてすみますよ」
「何者なんだよ、お前らは。何なんだよ!」
「「ただのバイトだよ(ですよ)」」
- Re: Repeater:魔術と愚か者 ( No.3 )
- 日時: 2017/10/08 17:54
- 名前: ゼラチン ◆SvRsgTHFT2 (ID: P2y76W7r)
「ここが・・・地下室兼休憩室だ」
案内されるがままに梯子を降りて地下室に来たところ、そこは何もない。いたって普通の部屋だった。
「おい、本当にここが地下室なんだな?」
「そうだと言ってるじゃないか、結局お前らは何がしたかったんだ?」
「・・・店長はどこだ」
「店長は今遠くに出かけてる。昔からの親友に会うらしい」
どうでもいい。仕方ない、さっさと帰るか。
「宗一郎、帰るぞ」
「無駄足でしたね。残念です」
「無駄足って・・・ただここを調べるだけじゃなかったのかよ」
「はい・・・ここの店長に詳しく聞きたかったのですが」
まあいいだろう。
「いくらぐらい金入ってくる?」
「山分けで60万ですね。いつも通り口座に振り込んでおきます」
そんないつも通りの会話をした時、違和感を感じた。
違和感の正体は、すぐにわかった。
部屋の温度が、異常に上がっていた。心当たりは一つしかなかった。
「おい、副店長。何勝手に魔術を使っているんだ?」
副店長の周りを炎が包む。
「うるせえ、お前らただで帰れると思うなよ」
「北斗さん。この炎」
「ああ、戦闘用魔術だ。一筋縄じゃいかないな」
強力な魔術にも種類がある。普通の魔術の質を高める方法と、最初から戦闘を目的とした魔術を使う方法だ。
こいつの場合、炎が意思を持ってるみたいに体を覆っている。
前者の場合だと俺たちと攻撃しようと強くしても火炎放射みたいな単調な動きしかできない。
だが後者だと、俺たち炎を避けてもその方向に炎が追尾してくる可能性がある。
「戦闘用魔術は許可をとらなきゃ使用できねえはずだが」
「そんな法律、守っている奴なんて今時いねえよ」
そう言っている間にも温度は上がっている。
「宗一郎!目つぶれ!」
ここから逃げなければ。
一瞬でも隙をつくるため閃光弾を取り出し副店長に向かって投げた。
「そんな小細工が通用するか!燃え尽きろ!」
うわ、頭悪そうな台詞だな。
しかしこれはまずい、死ぬ。
「北斗さん。伏せてください!」
後ろから聞こえた声。俺はこいつの魔術を知っているのですぐに頭を下げた。
「ありがとうございます。これであの人に遠慮なく撃てる」
お前の魔術は遠慮なしに撃っていいもんじゃねえ。
「番号001。創造の章、『分解』」
宗一郎はそんな文を唱えるとナイフを取り出し、副店長に向かって投げた。
「そんなナイフ、この炎で止めて見せる!」
やめたほうがいいのになぁ。
ナイフは炎なんかものともせずに副店長に向かっていく。
「このナイフ、魔術耐性か!?」
残念ながらそんな簡単なもんじゃない。
副店長はあたる寸前で避けたが肩に当たってしまった。
「当たっちまったな、ご愁傷様」
「この程度で何言ってやが・・・・・・」
何か言おうとしても遅い。すでに『分解』は始まっている。
「あなたの為に私の魔術を教えましょう」
宗一郎はまるでタネが見破られなかったマジシャンのように上機嫌で説明する。
「私・・・というか私の故郷にある魔術は『番号』と呼ばれる数十種類にも及ぶ魔術です。今撃ったのはその一番最初、『分解』です。これは当たったものをバラバラにしてしまう危険な魔術です、あまりにも細かくしてしまうんで消えたようになるんですけどね」
淡々と笑いながら言う宗一郎を見てなのか、それともバラバラに肩から消えていく自分の体を見てなのか。副店長はこれまでにないくらい取り乱していた。
それも数秒で終わり、その場には服とナイフのみが残った。
「・・・・・・行きましょう」
「ああ」
何も思わないわけじゃない。罪悪感がないわけじゃない。
これも仕事なんだ、許してくれ。
- Re: Repeater:魔術と愚か者 ( No.4 )
- 日時: 2017/10/31 04:05
- 名前: アンクルデス (ID: grnWwvpR)
お疲れ様です〜^^ いつもお世話になっております!!
最新話まで読みましたよ! 喫茶店の副店長と北斗さんと宗一郎くんの戦いを読みましたが、まさに能力バトルって雰囲気が出てて凄くいいと思いました!
- Re: Repeater:魔術と愚か者 ( No.5 )
- 日時: 2017/11/05 17:36
- 名前: ゼラチン ◆SvRsgTHFT2 (ID: P2y76W7r)
俺は今ピザ屋の前で立ち往生している。
前々から気になっていたのだが・・・。
「なんか用っすか?」
「うおっ!?」
いきなり話しかけられた。その方向を見ると店員服を着た女、美人がいた。
「あー、店に入ろうか迷ってて」
「ていうことはお客さんっすよね!どうぞどうぞ♪」
「は、はぁ」
手を引かれ強制的に店の中へと連れてかれる。
今自覚した。俺こういうテンションの子苦手だ。
「どうぞこれメニューっす!」
彼女は俺にメニューを渡すと向こうへ行く・・・と思いきやこっちを見てニヤニヤしている。
「ねえねえ、名前は?」
最近の若者ってこんななのか?俺も若者だけどよ。
「あ、えーと・・・二宮」
「二宮さんすね!あたしは早乙女 弓子って言うんだ。よろしくっす」
聞いてないんだが。
「何にするか決まりましたか?」
早えよ。
「えと、このチーズたっぷりスペシャルピザってのを」
「わかりました!少々お待ちくださいっす!」
ものすごい勢いで走っていく。
「疲れた・・・」
「お待たせしました!」
「うおおおおっ!?」
速えよ・・・。
「また来てくださいっすね!二宮さん」
「うん、気が向いたらね」
次からは宅配にしよう。そう思った。
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